業務効率化は「やめること」から考える―ECRSの排除(Eliminate)で作る“やらないことリスト”の作り方

「業務改善ツールを導入したのに、なぜか現場が楽になった実感がない」というご相談をよくいただきます。以前の記事「「業務効率化」何から始める?中小企業が今すぐ着手すべき優先順位の付け方」でも触れましたが、効率化というと新しいツールやシステムを「足す」発想になりがちです。しかし、そもそも「やらなくていい業務」が手つかずのままでは、ツールを導入しても負担の総量はほとんど変わりません。この記事では、業務を減らす・やめるという「引き算」の視点から、ECRSの排除(Eliminate)を起点にした“やらないことリスト”の作り方を解説します。

目次

ツールを増やしても業務が楽にならない理由

ゴウリカ株式会社が実施した「業務時間の使い方と生産性に関する調査」によると、「専門的定型業務」と「定型業務」をあわせたノンコア業務は全体の51.2%を占めており、就業時間の約半分が本来注力すべき付加価値の高い業務以外に費やされている実態が明らかになっています。さらに役職が下がるほどノンコア業務の割合は高まり、一般社員では57.3%に達するといいます。この状態のままツールを導入しても、効率化されるのは「本来やらなくていい業務」の処理速度だけで、業務量そのものは減りません。効率化を考えるなら、まず「何をやめるか」を決めることが先決です。

Framework

ECRSの「排除(Eliminate)」から始める業務棚卸しの手順と判断軸

ECRSとは、業務改善の順序を示すフレームワークで、Eliminate(排除)・Combine(結合)・Rearrange(交換)・Simplify(簡素化)の頭文字をとったものです。多くの現場では「どう簡素化するか」「どうツールで効率化するか」からスタートしがちですが、ECRSの本来の考え方では、改善よりも先に「そもそもやめられないか」を検討することが最も効果が大きいとされています。無くせる業務を効率化しても、無くす場合に比べれば効果は限定的だからです。

具体的な棚卸しの手順は次の通りです。まず部署やチーム単位で日常業務を細かくリストアップし、それぞれの頻度と所要時間を可視化します。次に、その一覧の中からEliminate候補を抽出します。候補を見極める際は、次の3つの問いを判断軸にすると整理しやすくなります。①頻度:その業務は本当に今の頻度で必要か。②付加価値:その業務は顧客や事業の成果に直接つながっているか。③代替可能性:人に任せる、または自動化で代替できないか。この3軸に沿って「やめる」「減らす」「人に任せる」を分けていくことが、棚卸しの核になります。

自社の業務のどこに「やめられる業務」が隠れているか、客観的に診断してほしいという方は、まだ検討段階でもご相談いただけます。

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Misconceptions

ノンコア業務・形骸化会議・重複作業でよくある3つの誤解

誤解1:会議は無くせない。実際には、形骸化した定例会議は想像以上に多く存在します。パーソル総合研究所の調査では、社内会議・打ち合わせに費やす年間時間は役職が上がるほど増加し、部長級では年間434時間を超えると推計されています。また、企業の無駄な社内会議による損失は年間15億円に上るという試算もあります。「目的が曖昧なまま続いている定例会議」「参加者の大半が発言しない報告会」は、まず削減対象として見直す価値があります。

誤解2:ノンコア業務は仕方ない。ノンコア業務が全体の半分を占めるという前述の調査結果を踏まえると、「仕方ない」で片付けるのはもったいない状況です。承認フローが何段階にもわたっている、同じ内容を複数の帳票に転記している、といった重複作業は、仕組みを変えるだけで大きく圧縮できる余地があります。

誤解3:業務を減らす=サボりだと思われる。これは心理的な抵抗として非常によくある誤解ですが、実際には逆です。付加価値の低い業務を減らすことは、顧客対応や企画、提案活動といった本来注力すべきコア業務に集中するための前向きな選択であり、組織全体の生産性を高める取り組みです。

Process

「ストップドゥーイングリスト」の作り方と社内合意、空いた時間の再配分

  1. 全業務の棚卸し:部署・担当者単位で日常業務を洗い出し、頻度・所要時間・目的を一覧化する。
  2. Eliminate/Delegate/Automateへの分類:洗い出した業務を「やめる」「人に任せる」「自動化する」の3つに分類し、やめる候補を「ストップドゥーイングリスト」としてまとめる。
  3. 小さく試す:いきなり全社展開せず、1つの部署・1つの業務から試験的にやめてみて、支障が出ないか確認する。
  4. データを示して合意を得る:「この業務に月〇時間かかっていた」「やめても成果に影響がなかった」という事実ベースの情報を示しながら関係者に説明し、合意形成を進める。

やめた後に生まれた時間は、何もしないと別の雑務で埋まってしまいます。そのため、空いた時間をコア業務へ再配分するルールをあわせて決めておくことが重要です。この再配分の場面でAIや自動化が力を発揮します。たとえば当社では、記事の企画・執筆・入稿までを自動で行う仕組みをClaude Codeで構築・運用するメディア自動化支援によって、専任エンジニアを置かずにサイト運営を続けています。これは「人がやらなくていい定型作業を仕組みに任せ、空いた時間を本来の業務に回す」というストップドゥーイングリストの考え方そのものの実践例です。

Comparison

「やめる業務」の見極め方を比較する

判断の進め方特徴
自己流で担当者が判断手軽に始められるが、個人の感覚に偏りやすく客観性に欠ける。社内合意も得にくい。
社内ワークショップで棚卸し部門横断で議論でき合意形成はしやすいが、企画・進行に工数がかかり、実行までの時間が長くなりがち。
外部コンサルの業務棚卸し伴走支援(自社サービス)客観的な判断軸を外部視点で提供でき実行スピードも上げやすいが、一定の費用が発生する。社内に合意形成の文化がすでにある場合は過剰投資になることもある。

FAQ

やらないことリストに関するよくある質問

やめるべき業務が自分では分からないときはどうすればいいですか?

頻度・付加価値・代替可能性の3軸で業務を一覧化すると、感覚だけでは見えなかった候補が浮かび上がります。自部署だけで判断が難しい場合は、第三者視点で棚卸しを支援する外部コンサルの活用も選択肢になります。

会議を減らすと情報共有が滞りませんか?

定例会議をすべて廃止するのではなく、目的が曖昧な会議・発言のない参加者が多い会議から見直すのが現実的です。必要な情報共有は非同期のチャットやドキュメントに置き換えることで、会議時間を削減しつつ共有の質を保てます。

AI導入の前に「やめること」を決めるべき理由は何ですか?

やめなくていい業務が残ったままAIやツールを導入すると、不要な業務の処理を自動化するだけに終わってしまうことがあります。先に業務を整理してから自動化すれば、投資対効果の高い部分にリソースを集中できます。

一度やめた業務を復活させたくなったらどうすればいいですか?

ストップドゥーイングリストは「小さく試す」ことが前提のため、支障が出れば元に戻すことも想定しておきます。試行期間と影響範囲をあらかじめ決めておくと、関係者の不安も軽減できます。

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業務効率化は、ツールを足すことだけが答えではありません。ECRSの排除(Eliminate)を起点に業務を棚卸しし、頻度・付加価値・代替可能性の3軸で「やめる・減らす・人に任せる」を仕分け、ストップドゥーイングリストとして関係者と合意を形成する。そのうえで空いた時間をコア業務へ再配分する――この引き算の発想が、足し算の効率化よりも確実に現場の負担を減らします。自社だけでは判断軸を持てない、社内の合意形成が進まないという場合は、業務棚卸しやワークフロー見直しの支援も可能です。

監修・運営:オプティソース株式会社

Claude Codeを活用したAI・DXコンサルティングを行う専門会社。製造業向け調達プラットフォーム「NEWJI」の運営や、自社メディアのAI自動化実績をもとに、中小企業のAI活用を支援しています。

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