新しい事業や製品を始めると、「PMF(プロダクト・マーケット・フィット)に届いているのか」「外部の支援を頼むなら、何を頼めばよいのか」で迷います。PMFは感覚的に語られがちですが、頼むべきことは、PMFの前か後かで大きく変わります。この記事では、PMFという言葉の元になった考え方と、中小企業白書が示す新事業展開の成否の違いをもとに、支援の型ごとの向き不向きと、発注する前に社内で整理しておくことをまとめます。
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この記事の結論
- PMFは、良い市場にいて、その市場を満足させられる製品を持っている状態です。投資家のマーク・アンドリーセンは、PMFに届いていないときは、顧客が価値を感じきれず、口コミも広がらないと書いています。
- この記事では、頼むことはPMFの前と後で変わると整理します。前は顧客の課題を確かめて小さく試す作業、後は売り方や組織づくりが中心になるので、頼む相手と範囲もそれに合わせます。
- 中小企業白書2017年版では、新事業展開に成功している企業の方が、「市場ニーズの把握が不十分」などを課題と感じる割合が低いと分析されています。
- 発注前に、今どの段階か、顧客の声や数字がどれだけあるか、助言だけか実行まで頼むかを整理しておくと、支援の型を選びやすくなります。
PMFは何を指すか
投資家のマーク・アンドリーセンは2007年に書いた文章で、PMFを「良い市場にいて、その市場を満足させられる製品を持っていること」と説明しています[1]。
同じ文章は、PMFに届いていないときと届いたときの様子を対比しています。届いていないときは、顧客が製品から価値を得きれず、口コミが広がらず、利用が伸びない。届いたときは、作るそばから製品が売れていく、と書いています[1]。誰もが使う決まった基準の数字があるというより、顧客の反応にはっきり表れる状態だと考えると分かりやすくなります。
顧客の反応を確かめながら進める型として、エリック・リースの「リーン・スタートアップ」があります。アイデアを製品にして顧客の反応を測り、そこから学ぶ流れ(Build-Measure-Learn)を速く回すことを勧めるもので、できるだけ早く学び始めるための最小限の製品(MVP)を作ることも挙げられています[2]。
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Data
新事業展開に成功した企業と、そうでない企業で違ったこと
中小企業白書2017年版は、中小企業庁が委託した「中小企業の成長に向けた事業戦略等に関する調査」(2016年11月、株式会社野村総合研究所)をもとに、新事業展開に成功した企業と成功していない企業を比べています[3]。成功したかどうかは、企業が自社の新事業展開をどう評価したかの回答で分けられています。「目標が達成できず失敗だった」「成功か失敗かどちらともいえない」「まだ判断できない」と答えた企業が「成功していない」に入ります[3]。新事業展開を考えた背景を聞いた質問(複数回答)には、成功した企業296社、成功していない企業754社、合わせて1,050社が答えています[3]。そのうち白書の本文に出ている割合は次のとおりです。
| 新事業展開を考えた背景 | 白書の本文に出ている割合 | どちらが高いか |
|---|---|---|
| 新しい柱となる事業の創出 | 成功した企業 67.9% | 成功した企業のほうが高い |
| 顧客・取引先の要請やニーズへの対応 | 成功した企業 64.9% | 成功した企業のほうが高い |
| 他社との競争激化 | 成功していない企業 48.1% | 成功していない企業のほうが高い |
| 既存市場の縮小・既存事業の業績不振 | 成功していない企業 46.2% | 成功していない企業のほうが高い |
白書は、成功していない企業は市場の縮小や競争の激化といった外の要因から検討を始める傾向があり、成功している企業は顧客などからの要請に加えて、新たな収益源の確保という自発的な理由で検討する傾向があると推察しています[3]。
同じ白書の続く節では、新事業展開の課題として「自社の強みを活かせる事業の見極めが難しい」「市場ニーズの把握が不十分」「自社の情報発信が不十分」の3つを挙げ、新事業展開に成功している企業の方が、これらを課題と感じる割合が低いとしています[3][4]。PMFの前の段階でやることは、この「市場ニーズの把握」に近い作業です。
Phase
PMFの前と後で、頼むことは変わる
| 段階 | 中心になる作業 | 外に頼みやすいこと |
|---|---|---|
| PMFの前(課題を確かめる時期) | 顧客の話を聞いて課題を確かめる、小さく作って反応を測る | 聞き取りの設計と進め方、反応を測る仕組み、MVPを作る作業 |
| PMFの手前 | 使い続けてくれる顧客が出てきたかを見る、価格を試す | 数字の見方の整理、使われ方の分析 |
| PMFの後(広げる時期) | 売り方を仕組みにする、組織と採用、製品の作り込み | 営業や集客の仕組みづくり、製品を本格的に作り直す開発 |
PMFの前に、広告や営業で売り込みを強めても、製品そのものが市場に合っていなければ、顧客が離れていくだけになりかねません。顧客が価値を得きれない状態(アンドリーセンが「届いていない」様子として挙げたもの[1])のまま、売り方だけを強める形です。まずは顧客の課題と製品の合い方を確かめる作業に、時間とお金を使います。
新規事業のアイデアを絞り込む評価軸と進め方はアイデアスクリーニングの記事で、MVPの進め方はMVP開発の記事で紹介しています。
Types
支援の型ごとの向き不向き
PMFに向けた外部の支援は、大きく次の3つの型で考えられます。公的な機関がまとめた料金の相場の統計は、確認した範囲では見当たらないので、ここでは金額ではなく向き不向きを整理します。
| 型 | 中身 | 向いている会社 | 気をつけること |
|---|---|---|---|
| 助言(顧問) | 定期的な打ち合わせで方向を一緒に考える | 社内に、聞き取りや試作を進める人がいる会社 | 実行は自社で進める |
| 伴走(一緒に進める) | 聞き取りの設計や実施、数字の確認まで一緒に進める | 進め方を社内に残したい会社 | 製品を作る作業は別に頼むことがある |
| 開発と一体 | 確かめる作業と、MVPや製品を作る作業をまとめて頼む | 確かめた結果をすぐ製品に反映したい会社 | 確かめる前に作り込みすぎないよう、段階を区切る |
確かめる担当と作る担当が別の会社だと、結果を製品に反映するまでの受け渡しに時間がかかることがあります。一方で、まとめて頼むと、確かめる前に作り込みすぎる心配もあります。どちらの型でも、段階ごとに「何が分かったら次に進むか」を決めておくと、費用がかさむのを防ぎやすくなります。
Checklist
発注前に社内で整理する5つのこと
- 今の段階:顧客の課題を確かめている段階か、使い続けてくれる顧客がいる段階か。
- 手元にある材料:顧客から聞いた話、試作品の反応、問い合わせや利用の数字がどれだけあるか。
- 新しさと市場:自社にとって新しい製品なのか、これまでと違う顧客を相手にするのか。補助金でも、新規性と新しい市場は分けて定義されています[5]。
- 頼む範囲:助言だけか、聞き取りの実施や製品づくりまで頼むか。
- 進む・止める基準:何が分かったら次の段階に進むか、どこで見直すか。
止める基準をフェーズ別に決める方法は、新規事業の撤退基準の記事でも紹介しています。
FAQ
よくある質問
PMFに届いたかどうかは、どうやって判断しますか?
誰もが使う決まった基準の数字はありません。アンドリーセンは、届いていないときは顧客が価値を得きれず口コミも広がらない、届いたときは作るそばから売れていく、と様子の違いで説明しています[1]。使い続けてくれる顧客がいるか、紹介で顧客が増えているかなどを見ます。
PMFの前に営業や広告を強めてもよいですか?
製品が市場に合っていない段階で売り込みを強めると、顧客が離れていくだけになりかねません。先に、顧客の課題と製品の合い方を確かめます。
MVPとは何のために作るものですか?
リーン・スタートアップでは、できるだけ早く学び始めるために、最小限の製品(MVP)を作ることを勧めています[2]。完成品を作る前に、顧客の反応を測るためのものです。
コンサルと開発は同じ会社に頼むべきですか?
段階ごとに進む基準を決めておけば、どちらの形でも進められます。それぞれの良い点と注意点は、本文の「支援の型ごとの向き不向き」で整理しています。
Sources
参考にした資料
- The only thing that matters(Marc Andreessen・2007年6月25日)
- The Lean Startup Methodology(Eric Ries・2026年11月2日確認)
- 2017年版 中小企業白書 第2部第3章第2節 2 新事業展開の成否の実態(中小企業庁・2017年4月)
- 2017年版 中小企業白書 第2部第3章第3節 1 マーケティング活動の実態と課題(中小企業庁・2017年4月)
- 新事業進出・ものづくり商業サービス補助金(中小企業基盤整備機構・2026年11月2日確認)

PMFに向けて外の力を借りるときは、今が「課題を確かめる時期」か「広げる時期」かを先に見極めます。そのうえで、助言・伴走・開発と一体のどの型が合うかを選び、段階ごとに進む基準を決めておくと、費用をかけすぎずに進めやすくなります。新しい事業の確かめ方や、MVPづくりから相談したい場合は、お気軽にご連絡ください。

