補助金の申請書づくりを手伝ってくれる相手を探すと、行政書士、認定経営革新等支援機関、コンサルティング会社など、似た肩書きの専門家が並んでいて、誰に何を頼めばよいか迷います。2026年1月1日には改正行政書士法が施行され、報酬を受け取って申請書を作れるのは誰かが、はっきり書かれました。この記事では、法改正のポイント、依頼先ごとの役割、費用の目安、契約の前に確かめることを、法令と公的な資料をもとに整理します。
この記事の結論
- 2026年1月施行の改正で、行政書士でない人の業務の制限に「いかなる名目によるかを問わず」と書き加えられました。日本行政書士会連合会は、会費やコンサルタント料などどんな名目でも、対価を受け取って仕事として書類を作れば違反になると説明しています。都道府県の行政書士会は、補助金の申請書の作成も行政書士の業務に当たる可能性があると案内しています。
- 事業計画の中身について助言を受けることや、自社で申請書を書くことは、行政書士でなくてもできます。気をつけるのは、資格のない相手に報酬を払って書類そのものを作ってもらう契約です。
- 日本行政書士会連合会の2026年1月の調査では、補助金・助成金の受給申請の報酬は、回答32件で平均247,375円、最も多かった額は10万円でした。幅は2万円から143万円まで広く、見積で確かめるのが確実です。
- 契約の前に、誰が書類を作るのか、どこまでが助言か、不採択のときの費用の扱いを書面で確かめます。
2026年1月施行の改正行政書士法で何が変わったか
行政書士法の一部を改正する法律(令和7年法律第65号)は、2025年の通常国会で、国会議員が出した法案として成立し、2026年1月1日に施行されました[1]。行政書士法は、行政書士の業務を、他人の依頼を受け報酬を得て、官公署に提出する書類(データで作るものを含む)その他の権利や義務、事実の証明に関する書類を作ることと定めています(第1条の3)[1][2]。補助金の電子申請のように、紙ではなくデータで出す書類もここに入ります。
今回の改正で、行政書士でない人の業務を制限する第19条第1項に「いかなる名目によるかを問わず」という言葉が加わりました[2]。日本行政書士会連合会の会長談話によると、コロナ禍で行政書士でない人が給付金などの代理申請を行い、多額の報酬を受け取っていた例があったことが背景です。「会費」「手数料」「コンサルタント料」「商品代金」などどんな名目でも、対価を受け取り、仕事として書類を作れば第19条第1項に違反することを、はっきりさせたものです。会長談話は、改正前の法律でも同じだとしています[3]。
違反した人には1年以下の拘禁刑(刑務所に入れられる刑)または100万円以下の罰金が定められています(第21条の2)[2]。改正では、違反した人が所属する法人などにも100万円以下の罰金を科す両罰規定(第23条の3)の対象に、この違反が加わりました[2][3]。
なお、厚生労働省の雇用関係の助成金のように、雇用保険法など労働・社会保険の法令に基づく申請書類は、社会保険労務士の業務とされています(社会保険労務士法第2条・第27条)[4]。この記事では、主に中小企業庁などの補助金を想定しています。
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Gray Zone
「サポート」「コンサル」の名目でも違法になりうる例
静岡県行政書士会は、事業者向けの案内で、これまで「サービス」「サポート」「代行」「コンサルティング」などの名目で行ってきた書類作成が、行政書士の業務に当たる可能性があるとし、その例に「補助金申請書の作成」を挙げています[5]。同じ案内のよくある質問では、次のように答えています[5]。
| よくある質問 | 静岡県行政書士会の答え(要旨) |
|---|---|
| 無料で書類を作るなら違法にならないか | 実質的に営業目的なら違法と判断される可能性がある。「サービス」「セット料金」なども報酬とみなされるおそれがある |
| コンサルティング契約の一部として書類を作ってよいか | 名目がコンサルティングでも、実質が書類作成なら違法と判断される可能性がある |
| 行政書士が監修していれば、資格のない人が作ってよいか | 行政書士本人が作らない限り違法と判断される可能性がある。名義貸しも禁止されている |
依頼する側から見ると、「書類作成込み」をうたうコンサル契約や、補助金の採択を条件にした「セット料金」には注意が要ります。最終的に違法かどうかは個別の事情で判断されるので、ここで一律には言えません。迷うときは、相手が行政書士かどうかと、誰が書類を作るのかを確かめるのが近道です。
Roles
行政書士・認定支援機関・コンサルの役割の違い
「申請書を作ること」と「事業計画の中身を考えること」は分けて考えます。認定経営革新等支援機関(認定支援機関)は、税務・金融・企業財務の専門知識や支援の実務経験が一定以上あると国が認めた個人・法人・団体のことです[6]。中小企業庁は、認定支援機関の支援として、経営状況の把握、事業計画作成に向けた支援・助言、計画を実行するための支援・助言を挙げています[6]。補助金によっては、認定支援機関の関与が求められるものもあります[6]。
| 依頼先 | 主に頼めること | 確かめておくこと |
|---|---|---|
| 行政書士 | 報酬を受け取って申請書類を作ること | 行政書士として登録されているか。事業計画の中身づくりまで頼めるか |
| 認定支援機関 | 経営状況の把握、事業計画づくりへの助言 | 申請書類の作成まで含む契約になっていないか(行政書士でない場合) |
| コンサルティング会社 | 事業の戦略や計画の数字についての助言 | 「書類作成込み」になっていないか、誰が書類を作るのか |
| 自社 | 申請書を自分で書くこと | 計画の数字を、社内で説明できる形にまとめられるか |
認定支援機関や中小企業診断士、税理士なども、行政書士の登録をしていれば申請書類の作成まで受けられます。資格の組み合わせは相手によって違うので、肩書きではなく、契約で誰が何をするかで判断します。ただし、申請のときに出す事業計画書そのものを相手が書き上げる場合は、役所に出す書類の作成として、行政書士の業務に当たる可能性があります[2][5]。補助金の申請そのものの流れは「新規事業助成金の申請方法を5ステップで解説」で紹介しています。
Fees
費用の目安:日本行政書士会連合会の報酬額統計
行政書士の報酬額は事務所ごとに決められます。日本行政書士会連合会は、行政書士法第10条の2第2項に基づいて、5年に1度、全国的な報酬額の統計調査を行っています[7]。最新の令和7年度の調査(2026年1月実施)では、「公的補助金・助成金の受給申請」の報酬は次のとおりでした[8]。
| 項目 | 公的補助金・助成金の受給申請 |
|---|---|
| 回答した行政書士の数 | 32 |
| 平均 | 247,375円 |
| 最も多かった額(7件) | 100,000円 |
| 最小〜最大 | 20,000円〜1,430,000円 |
| 10万円以上と答えた割合 | 81.3% |
金額には消費税が含まれ、補助金と助成金をまとめて聞いた項目です[8]。回答は32件と少なく、補助金の種類や申請の規模によって作業量が大きく違うので、平均はあくまで目安です。連合会も、業務の扱いによって報酬額には大きな差があるとしています[7]。この調査は「受給申請」の報酬を聞いたもので、着手金と成功報酬の分け方までは分かりません。成功報酬を含む料金の組み立ては、事務所ごとに見積で確かめます。コンサルティングの費用の考え方は「新規事業コンサルの費用相場と料金体系」も参考になります。
Misconceptions
補助金申請の依頼でよくある3つの誤解
コンサルに頼めば書類作成まで任せられる。行政書士(または他の法律で認められた資格者)でない相手が、報酬を受け取って仕事として申請書類を作ることは、原則としてできません[2]。契約の前に、どこまでが助言で、誰が書類を作るのかを見ておきます。
行政書士に頼めば採択されやすくなる。行政書士は書類を作る専門家です。事業の新しさや数字の根拠は、事業をよく知る自社が考える部分が大きく残ります。
成功報酬だから損はない。成功報酬の契約でも、着手金や実費が別にかかることがあります。不採択のときに何を払うのかを、契約書で見ておくと安心です。
Risk
頼む側にも及ぶリスク:補助金適正化法
行政書士法の罰則は、資格なしに書類を作った側に向けたものです。ただ、申請する会社のほうにも、別の法律でリスクがあります。国の補助金には「補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律」(補助金適正化法)が適用され、うその申請や目的外の使い方を防ぐことを目的にしています[9]。
| 条文 | 内容 |
|---|---|
| 第17条(決定の取消) | 補助金を他の用途に使ったり、交付の条件や法令に違反したりしたときは、交付決定の全部または一部を取り消せる。金額が確定したあとでも同じ |
| 第18条(返還) | 交付決定を取り消した部分について、すでに受け取った補助金は期限を決めて返すよう命じられる |
| 第19条(加算金) | 取り消しで返すときは、受け取った日から返した日までの日数に応じて、年10.95%の加算金を国に納める |
| 第29条(罰則) | うそや不正な手段で補助金を受け取った人は、5年以下の拘禁刑か100万円以下の罰金、またはその両方 |
申請書を誰が作ったかにかかわらず、申請するのは自社です。外の人に作ってもらった申請書でも、書かれた数字や取り組みが事実と違えば、責任は申請した会社に向きます。依頼するときも、出来上がった申請書を自社で読み、事実と合っているかを確かめてから出します。
Checklist
依頼する前に確かめる4つのこと
- 書類を作る人の資格:申請書類の作成まで頼むなら、行政書士の登録があるかを、日本行政書士会連合会や都道府県の行政書士会の案内で確かめます。
- 契約の範囲:「事業計画への助言まで」なのか「申請書類の作成まで」なのかを、口頭ではなく契約書に書いてもらいます。
- 費用と返金:着手金・成功報酬・実費の内訳と、不採択のときの扱いを書面で確かめます。
- 役割の分け方:計画の助言をする人と書類を作る行政書士が別の場合、誰が何に責任を持つかを決めておきます。
外部の支援にかかる費用そのものが補助の対象になるかは、補助金ごとに違います。IT導入補助金(2026年度はデジタル化・AI導入補助金)の場合は「DX支援は補助金の対象になる?」で整理しています。自社で事業計画の数字をまとめておくと、どの相手に頼む場合も話が早くなります。事業計画書のテンプレート(Excel)は、5年分の売上・利益の計画を書き出す下敷きに使えます。
FAQ
よくある質問
補助金の申請書は、行政書士でないと作れないのですか?
自社で作ることはできます。制限されているのは、行政書士でない人が他人の依頼を受け、名目を問わず報酬を得て、仕事として作ることです[2]。
コンサルに事業計画の相談をするのは違法ですか?
事業計画の中身について助言を受けること自体は、行政書士法で制限されていません。名目がコンサルティングでも、実質が書類作成だと違法と判断される可能性があります[5]。契約書で、誰が書類を作るかを見ておくと安心です。
補助金申請を行政書士に頼むと、いくらかかりますか?
日本行政書士会連合会の令和7年度の調査では、補助金・助成金の受給申請の報酬は、回答32件の平均が247,375円、最も多かった額が10万円でした[8]。補助金の種類や規模で変わるので、見積で確かめます。
改正前に結んだ契約はどうなりますか?
日本行政書士会連合会は、名目を問わず対価を受け取って書類を作ることは改正前の法律でも違反だと説明しています[3]。今の契約書で、書類を作る人が行政書士になっているかを見直しましょう。
Sources
参考にした資料
- 行政書士制度(総務省・2026年11月2日確認)
- 行政書士法(昭和26年法律第4号)(e-Gov法令検索・2026年11月2日確認)
- 【会長談話】行政書士法第19条第1項及び第23条の3の改正の趣旨等について(日本行政書士会連合会・2025年11月1日)
- 社会保険労務士法(昭和43年法律第89号)(e-Gov法令検索・2026年11月2日確認)
- 令和8年1月1日施行 改正行政書士法に関するご案内(静岡県行政書士会・2026年6月4日)
- 認定経営革新等支援機関(中小企業庁・2026年11月2日確認)
- 報酬額の統計(日本行政書士会連合会・2026年11月2日確認)
- 令和7年度報酬額統計調査の結果(日本行政書士会連合会・2026年1月実施)
- 補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律(昭和30年法律第179号)(e-Gov法令検索・2026年11月2日確認)
補助金の申請で外の力を借りるときは、事業計画への助言と、申請書類の作成を分けて考えます。行政書士会は、報酬を受けて補助金の申請書を作ることも行政書士の業務に当たる可能性があると案内しています(雇用関係の助成金は社会保険労務士)。計画づくりの相談をどこにするかは、契約で役割を決めておきます。そうしておくと、あとで誰が何をしたのかで迷わずに済みます。違法かどうか迷うときは、行政書士会などに問い合わせて確かめます。当社は申請書類の作成は行わず、計画の数字や、AI・システムの導入を何から進めるかの整理をお手伝いします。導入そのものを考えている場合は、その整理からご相談ください。

