SNSの投稿文をAIに書かせると、1本ずつ読むと問題がないのに、並べると「AIが書いたな」と分かってしまうことがあります。オプティソースが運営する「NEWJI総研」のXでも、AIに書かせた予約投稿を見直したところ、同じ形の書き出しが続いていました。社内で「AIっぽい」と指摘を受け、39本を書き直しています。何が「AIっぽさ」を生んでいたのかを、言語モデルの文章についての研究とあわせて振り返ります。
この記事の結論
- 「AIっぽさ」は1本ごとの出来ではなく、並べたときの偏りから生まれます。当社では「〜していますか?」と問いかける書き出しが続いていました。
- 文章を書くAI(言語モデル)と一緒に書くと、文章やアイデアが似通いやすいという研究があります。AI研究の国際学会ICLR 2024で発表された研究では、指示に従うよう調整したモデルと書くと、書き手どうしの文章が似てくる結果が出ました。
- 偏りは1本ずつ読んでいると見落としやすいので、1週間分などを並べて、書き出しの形を数える工程を足します。
- AIの下書きを人が読む場合も、AIの出力をうのみにしない工夫が要ります。
起きたこと:「〜していますか?」で始まる投稿が並んだ
NEWJI総研のXでは、製造業の調達・品質・設計の知識を短い投稿にして、予約で出しています(書き直した当時の2026年10月は1日8本)。投稿文はAI(Claude)が下書きし、人が読んで了承する流れです。
ところが、予約投稿を見直したところ、「〜していますか?」「〜で困っていませんか?」と読み手に問いかける書き出しが続いていて、社内で「AIっぽい」と指摘を受けました。1本だけなら自然な書き出しでも、何本も同じ形が続くと、型にはめて作った文章だと伝わってしまいます。
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Why
なぜAIの文章は同じ形になりやすいのか
当社は、AIが指示された目的に対して、よく使われる無難な形を選びやすいのだと考えています。SNSの投稿で読み手の注意を引く、という目的を与えると、問いかけの書き出しは定番なので、何度も選ばれます。当社の場合も、1本ずつ見ると気にならない形が、何本も続いていました。
近い傾向は研究でも報告されています。AI研究の国際学会ICLR 2024で発表されたPadmakumarとHeの研究では、人が言語モデルと一緒に文章を書く実験で、指示に従うよう調整されたモデル(InstructGPT)を使うと、文章の多様性が統計的に意味のある差で下がり、書き手どうしの文章が似てくる結果が出ました[1]。調整前のモデル(GPT-3)では、同じような低下は見られませんでした[1]。
アイデアについても似た報告があります。Andersonらの研究(創造性の研究の国際学会C&C 2024に採択)では、36人の参加者がアイデアを出す課題で、ChatGPTを使ったほうが、別の支援ツールを使うより、参加者どうしのアイデアの意味が似通いやすくなりました[2]。
| 研究 | 何を比べたか | 分かったこと |
|---|---|---|
| Padmakumar・He(ICLR 2024) | InstructGPT・GPT-3と一緒に文章を書いた場合 | InstructGPTでは多様性が下がり、書き手どうしの文章が似てくる[1] |
| Anderson ほか(C&C 2024) | ChatGPTと別の支援ツールでアイデアを出した場合(36人) | ChatGPTでは、参加者どうしのアイデアが似通いやすい[2] |
どちらも、たくさん並べたときにどれだけ似るかを調べた研究です。別々の人が書いた文章どうしの話なので、1つのアカウントの投稿どうしが同じ形になる当社の話とは同じではありませんが、並べて初めて見える偏りという点では通じるところがあります。偏りに気づくには、まとめて並べて読む工程が要ります。
Fix
どう直したか:問いかけの書き出しを減らした
書き直しでは、問いかけで始める投稿が続かないようにし、問いかけは週に1〜2本までにしました。代わりに、もめた場面から入る書き出しを増やしています。読み手に「困っていませんか」と聞くより、困る場面そのものを見せたほうが、自分のことだと感じてもらえると考えています。
動画のほうでも、ショートはあいさつを置かず、1秒目から「もめた場面」で始める形で作っています(ショート動画の冒頭にあいさつを置かない理由)。
Patterns
並べると目立つ書き出しの例
| 形 | 例 | 続くと伝わる印象 |
|---|---|---|
| 問いかけ | 「〜していますか?」「〜で困っていませんか?」 | 型にはめて作った文章 |
| 決まり文句 | 「実は」「意外と」 | 同じ調子の文章が続いている |
| 同じ締め方 | 最後が毎回「〜が大切です」 | 中身より形が先にある |
当社で実際に書き直したのは、1つ目の問いかけ型です。ほかの2つも、並べたときに目立ちやすい形です。1週間分を並べて、同じ形がいくつあるかを数えるだけでも、偏りはすぐに見えます。
Checklist
AIの投稿文を出す前に見る4つのポイント
- まとめて並べて読む:1本ずつではなく、1週間分などを並べて、書き出しや語尾の偏りを見ます。
- 書き出しの形を数える:問いかけ、「実は」「意外と」などの決まり文句が続いていないかを数えます。
- 作り話が混ざっていないか見る:体験談、出典のない数字、もっともらしい例がないかを見ます。NEWJI総研では体験談を書かない決まりにしています(AIで作る動画・記事の事実確認)。
- 元の情報から外れていないか見る:投稿の元になった記事に書かれていないことが足されていないかを、記事と並べて読みます。
SNS運用をAIで回すときの企画から分析までの流れは、「SNS投稿の企画・作成・分析を生成AIで自動化する方法」でも解説しています。
Process
当社のXの作り方と、人が見ている場所
NEWJI総研のXでは、題材を当社がすでに公開している文章(記事やnote)から選び、AIが投稿文を下書きします。人はその文面を読んで、了承するか、直す所を決めます。了承した投稿を、予約した時刻に出します。人が受け持つのは、出す前に文面を読んで了承することと、どこを直すかを決めることです。
人が目を通す流れでも、「AIっぽさ」の指摘を受けるまで、偏りは直っていませんでした。総務省と経済産業省の「AI事業者ガイドライン(第1.2版)」は、人がAIを信じすぎて頼ってしまう「自動化バイアス」に注意するよう書いています。その対策として、AIの判断を人が承認するときは、承認する理由や根拠を自分で考えてから承認すべきだという提案を紹介しています[3]。1本ずつの中身を確かめる読み方と、並びの偏りを見る読み方は別のものとして、両方を持っておきます。
Xは、総務省情報通信政策研究所の2025年度の調査(13〜79歳の1,800人が回答)で、全年代の44.7%、20代(218人)の73.4%が利用していると答えた媒体です[4]。読む人が多い場所なので、出す前の見直しを省かないようにしています。
Disclosure
AIで書いたことは、どう伝えるか
Googleは、サイトに載せるコンテンツについて、作成の大部分に自動化を使っている場合に自分に問いかける質問として、AIなどの自動化を使っていることをユーザーに明らかにしているか、どのように使ったかを説明しているかを挙げています[5]。「どうやって作られたのだろう」と読む人が思うようなコンテンツでは、AIや自動化を使ったことを開示するのは有益だ、とも書いています[5]。
これは検索に載るページについての考え方ですが、SNSの発信でも参考になります。当社は、記事やnoteでAIをどう使っているかを書いて公開しています。下書きをAIに任せていることを隠さないほうが、偏りを直したときの説明もしやすくなります。
FAQ
よくある質問
指示文(プロンプト)を工夫すれば、AIっぽさは消えますか?
研究では、指示に従うよう調整したモデル(InstructGPT)と一緒に書くと、書き手どうしの文章が似てくる結果が出ています[1]。当社は「問いかけで始めない」「形と長さを毎回変える」などの決まりを指示に足して書き直しました。ただ、決まりを足しても、並べて読まないと別の偏りには気づけないと考えています。そのため、指示の工夫に加えて、人が並べて読む工程を残しています。
AIの下書きは、人がどこまで直すものですか?
当社では、人が文面を読んで、了承するか、直す所を決めています。偏りに気づいて「何を直すか」を決めるところは、人が受け持っています。
問いかけで始める投稿は、すべてやめたほうがいいですか?
1本だけなら自然な書き出しです。問題になるのは、同じ形が何本も続くことです。当社は問いかけを週に1〜2本までにして、困る場面そのものを見せる書き出しを増やしました。
偏りに気づくには、どれくらいの本数を並べればいいですか?
1週間分など、まとめて並べて読むのがおすすめです。書き出しの形ごとに数を数えるだけでも、同じ形が続いているかはすぐに分かります。
Sources
参考にした資料
- Does Writing with Language Models Reduce Content Diversity?(Vishakh Padmakumar・He He、ICLR 2024)
- Homogenization Effects of Large Language Models on Human Creative Ideation(Barrett R. Anderson ほか、C&C 2024)
- AI事業者ガイドライン(第1.2版)(総務省・経済産業省・2026年3月31日)
- 令和7年度 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書(概要)(総務省情報通信政策研究所・2026年6月)
- 有用で信頼性の高い、ユーザー第一のコンテンツの作成(Google 検索セントラル・2026年11月2日確認)
AIの書く投稿文は、1本ずつ見れば十分に読めます。「AIっぽい」と感じられるのは、同じ形が並んだときです。まとめて並べて読み、書き出しの偏りや作り話、元の情報からのずれがないかを人が確かめる工程を残しておけば、AIに下書きを任せても発信の質を保ちやすくなります。SNSや記事の発信をAIで続ける仕組みを整えたい場合は、お気軽にご相談ください。

