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リーンキャンバスの書き方|9つの欄の記入順と記入例、ビジネスモデルキャンバスとの違い

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新しい事業のアイデアを説明しようと事業計画書を書き始めたものの、途中で手が止まってしまった。そんな経験はないでしょうか。アイデアの段階では分からないことのほうが多く、細かく書くほど「想像で埋めた部分」が増えていきます。そこで役に立つのが、事業の骨組みを1枚にまとめるリーンキャンバスです。この記事では、リーンキャンバスの考案者とライセンス、9つの欄の書き方と記入する順番、架空の事業での記入例、ビジネスモデルキャンバスとの違いを整理します。最後に、書き終えたあとで仮説をどう確かめるかも紹介します。

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この記事の結論

  • リーンキャンバスは、事業のアイデアをまだ確かめていない思い込みに分解する1枚の紙です。完璧な計画を作ることは目的にしません。
  • 迷ったら、顧客セグメント→課題→独自の価値提案→ソリューション→チャネル→収益の流れ→コスト構造→主要指標→圧倒的な優位性の順で書きます。
  • 最初の1枚は20分ほどで書き上げ、分からない欄は無理に埋めず空けておきます。
  • ビジネスモデルキャンバスとの違いは4つの欄の入れ替えです。アイデアの段階はリーンキャンバス、動いている事業の整理はビジネスモデルキャンバスが向いています。
  • 書いたあとは、いちばん外れると困る欄を当たり外れが判断できる1文に直し、お客様に話を聞いて結果を書き戻します。
目次

事業計画書を書く前に、1枚で「分かっていないこと」を見つける

アイデアの段階で長い計画書を書くと、売上や費用の表は埋まっても、「お客様は本当に困っているのか」という一番大事な問いが後回しになりがちです。

リーンキャンバスは、事業のアイデアを1枚の紙に分解し、どこが思い込みなのかを見つけるための道具です。考案者のAsh Maurya(アッシュ・マウリャ)氏は、自身の解説記事で、リーンキャンバスをアイデアを主要な仮説(まだ確かめていない思い込み)に分解するための1ページの道具だと説明しています[2]。完璧な計画を作ることが目的ではありません。今の時点の考えを写真のように一度写し取ることが目的だ、とも書いています[2]。

リーンキャンバスは、確かめるべきことの一覧を作る紙だと考えると使いやすくなります。確かめた結果をもとに、銀行や社内に出す事業計画書へまとめる段階になったら、事業計画書の構成と売上の根拠の作り方の記事をご覧ください。

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Overview

リーンキャンバスとは:考案者・成り立ち・ライセンス

リーンキャンバスは、Ash Maurya氏が2010年に作った1ページの事業の設計図(ビジネスモデルのテンプレート)です[1]。もとになったのは、Alexander Osterwalder(アレックス・オスターワルダー)氏らのビジネスモデルキャンバスで、それを先の読めない状態で動くスタートアップ向けに作り替えたものだと、公式ページで説明されています[1]。

Maurya氏は、作り替えた理由について、ビジネスモデルキャンバスは会社の側から見た作りになっていて、お客様の側から見る形にしたかった、という趣旨のことを書いています[2]。日本では、同氏の著書の翻訳『Running Lean ―実践リーンスタートアップ』(オライリー・ジャパン、2012年12月)が出ており、リーンキャンバスの作り方と顧客インタビュー(お客様に話を聞く調査)の進め方が解説されています[3]。

ライセンス(使ってよい条件)

考案者の解説記事に載っているキャンバスの図には、ビジネスモデルキャンバスを元にしていることと、クリエイティブ・コモンズの「表示-継承 3.0 非移植(CC BY-SA 3.0)」で公開していることが書かれています[2]。おおまかには、元の作者などの表示をすること、作り替えたものを配るときは同じ条件で配ること、を守れば、複製や改変、営利目的での利用もできる、という内容です[4]。

自社の資料に組み込んで外に配る場合は、考案者の名前と出典を書き添え、使うテンプレートに書かれた条件も確かめておきましょう。

Boxes

9つの欄の書き方

リーンキャンバスは9つの欄に分かれ、そのうち3つの欄に補助の項目が1つずつ付きます。現在の公式ページでは、補助の項目も数えて12の項目として紹介されています[1]。

考案者の解説記事の図では、紙は横長で、上の段に左から「課題」「ソリューション」「独自の価値提案」「圧倒的な優位性」「顧客セグメント」の5つの列が並びます[2]。「ソリューション」の下に「主要指標」、「圧倒的な優位性」の下に「チャネル」があり、いちばん下の段は左が「コスト構造」、右が「収益の流れ」です。補助の項目は、それぞれの欄の下半分に書きます。

1. 顧客セグメント(お客様は誰か)

その課題を抱え、お金を払ってくれる人や会社を書きます。Maurya氏は、お金を払う「顧客」と、使うだけの「利用者」を分けて考えるよう勧めています[2]。あわせて、補助の項目として「最初に使ってくれそうな人(アーリーアダプター)」を書きます。市場全体ではなく、最初に飛びついてくれそうな、具体的な一部の人たちです[2]。

2. 課題(お客様は何に困っているか)

お客様が困っていることを、多くても3つまで書きます。思いつく課題を並べたくなりますが、いちばん切実だと思うものに絞ります[2]。補助の項目として「今はどうやって解決しているか(今の代わりの手段)」も書きます。たとえば、表計算ソフトでの手作業や外注も代わりの手段です。何もせずに我慢している状態も、代わりの手段として書いておきます。

3. 独自の価値提案(なぜ選ばれるのか)

キャンバスの真ん中に置く、いちばん大事な欄です。いちばん大きな課題とつなげて、「誰に、何を約束するのか」を短い1文で書きます[2]。補助の項目として、「〇〇の△△版」のように、知っているものに例えたひと言(ハイレベルコンセプト)を書く欄もあります[1]。この1文がお客様の困りごととずれていないかを、顧客の側と提供する側に分けて細かく見たいときは、バリュープロポジションキャンバスの書き方の記事が使えます。

4. ソリューション(解決策)

課題ごとに、それを解決するいちばん簡単な機能を書きます。考案者は、作り手はこの欄に熱が入りやすいので、わざと欄を小さくしたと書いています[2]。ここでは機能を作り込まず、課題1つに対して機能を1つ程度にとどめます。

5. チャネル(お客様に届く道)

お客様にどうやって知ってもらい、買ってもらうかを書きます。最初は直接会いに行くような広がらない方法でもかまいませんが、事業が大きくなったときの道も早めに考えておきます[2]。

6. 収益の流れ(どうやってお金をもらうか)

価格と、お金をもらう仕組み(月額、1回ごと、手数料など)を書きます。値段は後で決めればよいと思いがちですが、値段は商品の一部であり、どんなお客様が集まるかも値段で変わる、と考案者は説明しています[2]。

7. コスト構造(何にお金がかかるか)

3年先や5年先の予測ではなく、最初の試作品を作って出すまでに何にいくらかかるか、という近い時期の費用を書きます[2]。大きな項目だけで十分です。

8. 主要指標(何の数字を見るか)

事業がうまくいっているかを判断する数字を3〜5個に絞って書きます。作った機能の数のような「作業量」ではなく、使っている人の数や使われ方のような「結果」の数字を選ぶよう勧められています[2]。

9. 圧倒的な優位性(簡単にまねされない強み)

お金で買えず、簡単にはまねされない強みを書きます。考案者自身がいちばん埋めにくい欄だと書いており、最後に回すことを勧めています[2]。熱意や一番乗りであることは強みにならない、とも指摘しています。多くの起業家は最初この強みを持っていないとも書かれているので[2]、空欄でもかまいません。

Order

記入する順番と、書くときの決まりごと

考案者は「決まった正しい順番はない」としたうえで、迷ったときのおすすめの順番を示しています[2]。この記事でもその順番に合わせて欄の番号を振りました。

  1. 顧客セグメント(最初に使ってくれそうな人も)
  2. 課題(今の代わりの手段も)
  3. 独自の価値提案
  4. ソリューション
  5. チャネル
  6. 収益の流れ
  7. コスト構造
  8. 主要指標
  9. 圧倒的な優位性

解説によっては「課題」から書き始める順番もあります。考案者の今の解説では、決まった順番はないとしたうえで、顧客セグメントが自然な書き出しになることが多いとしています[2]。どちらから書いても、お客様と課題の2つの欄を行き来しながら埋めれば十分です。

お客様と課題から書くのは、解決策から考えると、誰も困っていない機能を思い描きやすいからです。書くときの決まりごとも、考案者の解説から拾っておきます[2]。

  • 時間を区切る:最初の1枚は20分ほどで書き上げます。
  • チームでも最初は1人ずつ書く:全員で1枚を囲むと意見が似通いやすいので、各自が書いてから持ち寄ってまとめます。
  • 分からない欄は空けておく:無理に埋めると、思い込みが事実のように見えてしまいます。
  • 今の時点で書く:遠い将来の予測ではなく、今分かっていることと、次に確かめたいことを書きます。

Example

架空の事業での記入例

ここでは、説明のために作った架空の事業で記入例を示します。実在の会社やサービスとは関係ありません。題材は「小さな工務店向けに、現場の写真から日報の下書きを作るアプリ」です。

欄記入例(架空)
顧客セグメント従業員10人前後の工務店の経営者。最初に使ってくれそうな人は、現場監督を兼ねていて、夜に事務所で日報を書いている社長
課題①日報づくりに毎日時間を取られる ②写真がスマホに散らばり、後で探せない ③施主への報告が遅れる。今の代わりの手段は、紙の日報とスマホのアルバム、表計算ソフト
独自の価値提案現場で写真を撮るだけで、その日の日報の下書きができあがる。ひと言で例えると「現場写真の自動日記」
ソリューション①写真から日報の下書きを作る ②現場ごとに写真を自動で分ける ③施主向けの報告文を作る
チャネル最初は知り合いの工務店に直接紹介する。その後、建材店や地域の業界団体の勉強会で紹介する
収益の流れ1社ごとの月額料金(金額は仮置き。話を聞きながら決める)
コスト構造試作品の開発費、文章を作る仕組みの利用料、説明に回る人の人件費
主要指標1週間のうち日報を作った日数、使い始めて1か月後も使っている会社の数、有料に切り替えた会社の数
圧倒的な優位性今は空欄。使われ続ければ、工務店の現場写真と日報の組み合わせがたまっていくことが強みになるかもしれない

書いてみると、怪しい所が見えてきます。たとえば「社長は本当に日報に困っているのか、それとも日報を書かずに済ませているのか」は、まだ想像です。この例では、課題の欄が一番の確かめどころだと分かります。

Difference

ビジネスモデルキャンバスとの違い

ビジネスモデルキャンバスは、書籍『Business Model Generation』から生まれた、事業の仕組みを9つの枠で1枚に描く道具です[5]。提供しているStrategyzer社は、クリエイティブ・コモンズの条件で公開しているとしています[6]。リーンキャンバスは、この9つの枠のうち4つを入れ替えたものです。入れ替えたのは「主なパートナー」「主な活動」「主なリソース(経営資源)」「顧客との関係」の4つで、代わりに「課題」「ソリューション」「主要指標」「圧倒的な優位性」が入りました[2][7]。

比べる点リーンキャンバスビジネスモデルキャンバス
考案者Ash Maurya氏(2010年)Alexander Osterwalder氏ら(書籍『Business Model Generation』)
主な目的先の読めないアイデアの思い込みを見つけ、確かめる事業の仕組みの全体を描き、関係者と共有する
見る向きお客様と課題から考える会社が持つ資源や活動も含めて全体を見る
共通の欄顧客セグメント・価値提案・チャネル・収益の流れ・コスト構造
独自の欄課題・ソリューション・主要指標・圧倒的な優位性主なパートナー・主な活動・主なリソース・顧客との関係
向いている場面アイデア段階の新規事業、立ち上げ前のスタートアップすでに動いている事業の整理、既存事業の見直し

どちらか一方だけが正しいわけではありません。お客様や課題がまだはっきりしないうちはリーンキャンバスで思い込みを洗い出し、お客様の反応が見えて事業の形が固まってきたら、ビジネスモデルキャンバスで提携先や社内の体制まで描く、という使い分けがしやすいでしょう。

Validation

書いたあとに、仮説をどう確かめるか

リーンキャンバスは、書いて終わりにすると机の上の作文で終わってしまいます。考案者も、今の段階で次に確かめるべき仮説は何かを考えて書くように、と勧めています[2]。書いたあとは、次の順番で進めると手が止まりにくくなります。

  1. いちばん外れると困る欄を1つ選ぶ:外れたら事業が成り立たない欄から確かめます。アイデアの段階では、顧客セグメントと課題の組み合わせから確かめることが多くなります。お客様が本当に困っていなければ、ほかの欄はすべて前提が崩れるからです。
  2. 確かめられる1文に書き直す:「工務店の社長は日報に困っている」を、「話を聞いた社長10人のうち、半分以上が日報に毎日30分以上かけている」のように、当たり外れが判断できる形にします。基準の数字は、確かめる前に決めておきます。
  3. 確かめ方を選ぶ:課題の有無なら、お客様に今のやり方を聞く面談が向いています。お金を払うかどうかなら、申し込みの受付ページを作る、先行予約や利用の意向を書面でもらう、といった方法があります。
  4. 結果をキャンバスに書き戻す:分かったことで欄を書き直し、日付と版の番号を付けて残します。ビジネスモデルキャンバスを提供するStrategyzer社も、日付と版を付け、根拠が出てくるたびに描き直すよう勧めています[5]。

ターゲットやニーズの仮説を人と話しながら確かめる進め方は、新規事業の壁打ちで何を確かめるかの記事が参考になります。課題が確かめられ、試作品を作る段階に進むときはMVP開発の進め方の記事を、アイデアが複数あってどれから手を付けるか迷うときはアイデアスクリーニングの記事をご覧ください。

リーンキャンバスとビジネスモデルキャンバス、仮説の対応表をまとめた無料テンプレート「事業アイデア整理」もご用意しています。

FAQ

リーンキャンバスについてよくある質問

リーンキャンバスとビジネスモデルキャンバスは、どちらを使えばよいですか?

お客様や課題がまだはっきりしないアイデアの段階ならリーンキャンバス、すでに動いている事業の全体を整理したいならビジネスモデルキャンバスが向いています。新規事業では、最初にリーンキャンバスで思い込みを洗い出し、形が見えてきたらビジネスモデルキャンバスで提携先や体制を描く、という順番がおすすめです。

リーンキャンバスのテンプレートは、自由に使ってもよいですか?

考案者は「CC BY-SA 3.0」というライセンスで公開しており、作者などの表示と、作り替えたものを同じ条件で配ることを守れば使える、という条件です。外に配る資料に組み込むときは、考案者の名前と出典を書き添え、使うテンプレートの条件も確かめてください。

全部の欄が埋まらないのですが、それでもよいですか?

問題ありません。考案者も、分からない欄は空けておいてよいとしています。空いている欄は「まだ分かっていないこと」の目印になるので、次に確かめる候補になります。特に圧倒的な優位性は、最初は空欄のことが多い欄です。

一度書いたら、どのくらいの頻度で書き直しますか?

決まった頻度はありません。お客様に話を聞くなどして新しく分かったことが出てきたら書き直します。日付と版の番号を付けて古いものも残すと、考えの変化を後から振り返れます。

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リーンキャンバスは、Ash Maurya氏がビジネスモデルキャンバスを元に作った、アイデアの思い込みを見つけるための1枚の紙です。お客様と課題から書き始め、最初の1枚は20分ほどで仕上げます。分からない欄は空けておいてかまいません。書いたあとは、いちばん外れると困る欄を確かめられる1文に直します。そのうえでお客様に話を聞き、分かったことをキャンバスに書き戻していきます。当社では、アイデアの整理や仮説の確かめ方の設計から、プロダクト開発まで、新規事業の立ち上げを一緒に進めています。

監修・運営:オプティソース株式会社

経営と起業の実務家チームが、AIを使って事業づくり、集客・営業の強化、業務改善を進める会社です。自社でも製造業向けの事業とサービスを運営し、そこで試したやり方をお客様の事業に使っています。

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