「経理も請求書も、結局いつも自分がやっている」という社長は少なくありません。営業担当が見積もりと請求を兼ねていたり、在庫の数を社長自身がノートに書き写していたりする会社も珍しくないでしょう。この記事で扱う「バックオフィスDX」とは、こうした日々の事務作業を、特定の誰かの頑張りに頼らず回る仕組みに少しずつ変えていくことを指します。大きなシステムを入れることではなく、まず何から手をつけるかという順番の話です。
事務の専任がいない会社ほど、バックオフィスDXに悩んでいる
日本商工会議所・東京商工会議所が公表した実態調査によると、売上高1千万円以下の事業者の約9割が1人で経理事務を行っており、約8割では代表者や営業担当者が経理事務を兼務しています。また株式会社kubell(旧Chatwork)が従業員10〜299人の経営者・管理職・バックオフィス担当者1,093名を対象に行った調査では、従業員10〜29人の企業の48.2%でシステム担当者が社内外を問わず不在だと分かっています。経理や事務の専任がいないまま日々の業務が回っているのは、特殊な状況ではなく、むしろ中小企業では一般的な姿だといえます。まずはこの前提に立ったうえで、無理のない進め方を考えていきます。
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Overview
バックオフィスDXとは|大きなシステムを入れることではない
「DX」という言葉の響きから、基幹システムやERPを刷新するような大がかりな取り組みを想像する方が多いのですが、実際のバックオフィスDXはもっと地味な積み重ねです。請求書の作成ルールを決める、経費精算の様式を揃える、在庫の数え方を統一する――こうした日々の事務作業を1つずつルール化し、できるところから自動化していくことが実態に近い姿です。バックオフィス業務効率化という言葉もほぼ同じ意味で使われますが、どちらも「いきなり全体を変える」ではなく「小さく始めて積み上げる」という考え方が土台にあります。専任者がいない会社ほど、この小さな単位での見直しが向いています。
「何から手をつければいいか分からない」という段階でも相談可能です。今の事務の回し方を伺いながらご提案します。
無料で相談するMisconceptions
バックオフィスDXでよくある3つの誤解
誤解1:まず基幹システムやERPを導入しないといけない。実際には、大きなシステムを先に入れても、入力ルールや運用が整っていなければ結局手作業が残ります。先に1つの業務をルール化してから、必要な範囲でツールを選ぶ順番のほうが無理がありません。
誤解2:事務作業全体を一気に見直さないと意味がない。実際には、全体を一度に変えようとすると検討だけで時間が過ぎてしまいがちです。頻度の高い業務を1つ選んで仕組みにし、その型を他の業務にも広げていくほうが現実的です。
誤解3:ツールを入れれば自動的に仕組みが回り出す。実際には、ツールを導入した直後は使い方が定着せず、結局これまでのやり方に戻ってしまうことがよくあります。導入後に「実際に使われているか」を確認する工程まで含めて、はじめて仕組み化と言えます。
Process
毎日・毎月の業務を1つ選んで仕組み化する5つの手順
- 棚卸し:日次・月次で繰り返している事務作業を書き出します。請求書発行、経費精算、勤怠集計、在庫確認などが典型例です。
- 選定:その中から最も頻度が高い、または時間がかかっている業務を1つ選びます。複数を同時に手がけると途中で止まりやすいため、まず1つに絞ります。
- ルール化・テンプレ化:誰がやっても同じ結果になるよう、入力の順番や使う様式を決めて文書やシートにしておきます。
- ツールでの自動化:ルールが固まった部分から、手作業を減らせる仕組みを当てはめます。たとえば当社では、届いたFAXの注文書をAIで読み取り、今使っているエクセルの受注表に入れる仕組みを作って、動画で公開しています(動画の注文書は架空の見本です)。AIが自信のない欄は黄色にして理由を残し、人は黄色の所だけを確かめる形です。こうした自動化の考え方について詳しくは、AI業務自動化とは?中小企業が今すぐ始められる進め方で解説しています。
- 定着確認:導入して終わりにせず、数週間後に実際に使われているか、以前のやり方に戻っていないかを確認します。ここまでをセットで行って、初めて1つの業務の仕組み化が完了します。
Comparison
仕組み化の進め方を比較する
| 仕組み化の進め方 | 特徴 |
|---|---|
| 独学でツールを探して導入する | 費用は抑えられるが、業務に合うか見極める手間がかかり、選定と設定に時間を取られやすい |
| 基幹システムを一括導入する | 将来的な拡張性はあるが、導入前に業務全体を整理する必要があり、専任者がいないと負担が大きい |
| 外部コンサルに丸ごと任せる | 検討の手間は減るが、提案が大掛かりになりやすく、実際に現場で使われるかは別の課題として残る |
| 事務作業の自動化を1業務ずつ一緒に設計する(当社) | 頻度の高い1業務から着手するため始めやすい一方、会社全体の仕組みを一度に入れ替えたい場合には向かない |
FAQ
バックオフィスDXに関するよくある質問
何から始めればいいか分かりません。どう考えればいいですか?
まずは日々・毎月繰り返している事務作業を書き出し、その中で一番時間がかかっているものを1つ選ぶところから始めてください。全体を見直そうとせず、1つに絞ることが最初の一歩になります。
事務の専任がいなくても進められますか?
進められます。むしろ専任者がいない会社の方が多く、だからこそ1業務ずつ小さく仕組み化していく進め方が向いています。社長や営業担当が兼務したまま、空いた時間で少しずつ整えていくことは十分可能です。
どんなツールを使えばいいか分かりません。
先にツールを決めるのではなく、対象の業務をルール化・テンプレ化してから、そのルールに合う手段を選ぶ順番をおすすめします。業務によっては既存のエクセルの延長で十分な場合もあります。
バックオフィスDXにはどのくらいの費用がかかりますか?
対象業務の範囲や既存のツールの有無によって費用は大きく変わるため、一概にお答えすることは難しいのが実情です。まずはルール化だけを低コストで進め、効果を確認したうえで自動化の範囲を広げていくと、初期費用を抑えながら進めやすくなります。
仕組み化の効果はいつ頃から感じられますか?
業務や会社の状況によって差があるため具体的な数字でお答えすることはできませんが、一般的にはルール化とツール導入の後、しばらく運用を続けて定着を確認する期間を経て、徐々に手作業が減っていく流れになります。
バックオフィスDXは、大きなシステムを一度に入れることではなく、頻度の高い事務作業を1つ選んで、ルール化・自動化・定着確認までを丁寧に進める積み重ねです。専任者がいない会社でも、まずは棚卸しから始めれば無理なく着手できます。どの業務から手をつければよいか迷う場合は、お気軽にご相談ください。

