見積書を作っていると、細かいところで手が止まることがあります。「有効期限は何日にすればいいのか」「そもそも書かないといけないのか」「インボイスの登録番号は見積書にも載せるのか」「郵送するときの送付状には何を書くのか」といった疑問です。どれもネットで調べると答えが少しずつ違い、どれを信じてよいか迷います。この記事では、有効期限・登録番号・送付状の3つについて、法律の条文と国税庁・総務省の資料を確かめながら答えます。見積書に入れる項目全体やひな形の作り方は、見積書作成の時短ガイドで紹介しているので、あわせてご覧ください。
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この記事の結論
- 見積書の有効期限を何日にするかを決めた法律の条文はなく、出す側が決めます。
- 見積書が契約の申込みにあたる場合、期限を書くと、期限までは原則として取り下げられず、期限を過ぎれば効力がなくなります(民法523条)。期限切れのあとに来た注文を受けるかどうかは、自社で選べます(民法524条)。
- 期限は、相手が社内で決めるまでの日数より長く、仕入れ先の見積もりの期限より短い日付にし、「2026年12月25日」のように日付で書きます。
- 見積書はインボイスではないので登録番号を書く決まりはありませんが、載せておくと取引先が発注前に確かめられます。
- 見積書は信書にあたるので紙なら郵便で送り、メールで送ったPDFはデータのまま保存します。
有効期限の書き忘れは、値上げのときに困る
見積書の有効期限は、ふだんはあまり気にされない項目です。困るのは、出してから時間がたった見積書をもとに、取引先から「この金額でお願いします」と注文が来たときです。その間に材料費や外注費が上がっていても、期限が書かれていないと、「いつまでの金額だったのか」をめぐって話がこじれやすくなります。
反対に、期限を書いたことで自社がしばられる場面もあります。期限の中で見積もりを取り下げたくなっても、あとで説明するように、法律上は簡単に取り下げられない場合があります。有効期限は「何日が正解か」を探すものではなく、自社の原価がどれくらいの期間なら動かないかを考えて決める項目です。
この記事では、次の3つに順番に答えます。
- 有効期限に法律の決まりはあるのか。書いた場合と書かなかった場合で何が違うのか
- 見積書にインボイスの登録番号は要るのか
- 見積書を郵送・メールで送るとき、送付状に何を書くのか
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Legal Basics
見積書の有効期限に、法律で決まった日数はない
最初に結論です。見積書の有効期限を「何日にしなさい」と決めた法律の条文は、民法にも商法にも見当たりません。期限を何日にするか、そもそも書くかどうかは、出す側が決めることになります。
ただし、期限を書くかどうかで、法律上の扱いが変わることがあります。民法では、契約は「申込み」に相手が「承諾」したときに成立すると定められています[1]。見積書が「この内容で契約しませんか」という申込みにあたる場合、期限の有無で次のように扱いが分かれます。
期限を書いた場合(民法523条)
民法523条では、承諾の期間を決めてした申込みは撤回できない(ただし、撤回する権利を残しておいた場合は別)とされています。そして、その期間内に承諾の通知が届かなければ、申込みは効力を失います[1]。つまり、期限を書けば「期限までは取り下げられない」「期限を過ぎれば効力がなくなる」という2つの効果がそろいます。
期限を書かなかった場合(民法525条・商法508条)
期限を決めずにした申込みは、承諾の通知を受けるのに「相当な期間」がたつまでは撤回できない、と民法525条に書かれています[1]。会社どうしのように商人の間で、離れた相手(隔地者)に期限なしで申し込んだ場合は、商法508条により、相手が相当の期間内に承諾の通知を出さなければ、申込みは効力を失います[2]。
ここで困るのは「相当な期間」がどれくらいかが条文に書かれていないことです。取引の内容によって変わるため、後から争いになると判断が分かれやすくなります。期限を日付で書いておけば、この迷いをなくせます。
期限を過ぎてから注文が来たら
民法524条では、遅れて届いた承諾を、申込みをした側が「新しい申込み」とみなすことができる、とされています[1]。期限切れの見積書で注文が来た場合でも、その金額で受けるかどうかは自社で選べるということです。原価が上がっていれば、受ける前に見積もりを出し直すと伝えるのが筋です。
なお、見積書が法律上の「申込み」にあたるかどうかは、書き方や取引の流れによって変わりえます。「概算」と書いた見積もりや、条件が決まっていない段階の見積もりは、扱いが違う場合もあります。金額が大きい取引や、もめそうな取引は、弁護士などの専門家に確かめてください。
How To Decide
有効期限の決め方と書き方
日数に決まりがない以上、自社の事情から決めることになります。考える材料は、主に次の4つです。
| 考える材料 | 期限を短めにしたい場合 | 長めでもよい場合 |
|---|---|---|
| 原価の動きやすさ | 材料・燃料・為替など、仕入れ値がよく変わる | 自社の人の作業が中心で、単価が年単位で変わらない |
| 仕入れ先の見積もりの期限 | 外注先や仕入れ先の見積もりに短い期限が付いている | 仕入れ先と年間の単価契約を結んでいる |
| 相手が決めるまでの時間 | 担当者がその場で決められる小さな取引 | 相手の社内で稟議(決裁の手続き)や予算の確保が必要 |
| 手配に必要な日数 | 人や設備の空きが埋まりやすい時期 | 手配に余裕があり、着手日を後から調整できる |
ポイントは、仕入れ先の見積もりの期限より長くしないことです。外注先の見積もりが今月末までなのに、取引先には3か月の期限で出すと、その間に外注費が上がった分を自社でかぶることになります。反対に、相手の稟議に1か月かかると分かっているのに2週間の期限を付けると、出し直しの手間が増えます。
例えば、11月10日に見積書を出すとします。外注先の見積もりの期限が12月31日、相手の稟議に3週間ほどかかると分かっている場合、稟議が終わる12月1日ごろより後で、外注先の期限より前の日付として「有効期限:2026年12月25日」とします。
書き方は「日付」で書く
「発行日より30日間」という書き方もよく使われますが、できれば「有効期限:2026年12月25日」のように日付で書くほうが確実です。民法では、日数で期間を決めたときは原則として初日を数えず、最後の日が終わった時点で期間が終わるとされています[1]。「発行日から30日」の数え方で相手と認識がずれるのを避けられますし、見る人がすぐ分かります。
あわせて、期限の近くに次の1文を添えておくと、期限切れのときのやりとりが楽になります。
- 「有効期限を過ぎた場合は、改めてお見積もりいたします。」
- 「原材料価格の大きな変動があった場合は、期限内でもご相談させていただくことがあります。」
2つ目の文を入れるときは、取引先にとっては条件が変わりうることになるので、口頭でも一言伝えておくと親切です。期限内に撤回する権利を残すかどうかは法律上の効果にかかわるため(民法523条のただし書き)、強い書き方をしたい場合は専門家に文面を見てもらってください。
有効期限の欄や備考欄を最初から用意したひな形を使うと、書き忘れを防げます。当社でも無料の見積書テンプレート(Excel)を用意しています。
Invoice
見積書にインボイスの登録番号は必要か
結論から言うと、見積書は適格請求書(インボイス)ではないので、登録番号を書く決まりはありません。理由を条文で確かめます。
消費税法57条の4では、適格請求書を交付する義務は、登録した事業者が国内で課税資産の譲渡等(ものを売る、サービスを提供するなど)を「行った場合」に、相手の事業者から求められたときに生じるとされています。記載事項には、登録番号のほか「課税資産の譲渡等を行った年月日」が含まれます[3]。見積書は取引の前に出す書類で、まだ売買が行われていないので、この交付の義務の対象にはなりません。
国税庁の案内でも、インボイスは売り手が買い手に正しい税率や消費税額を伝えるものとされ、所定の事項が書かれていれば、請求書のほか領収書や納品書など名前を問わずインボイスになると説明されています[4]。つまり、大事なのは書類の名前より、取引のあとに必要な事項をそろえて渡すことです。
| 比べる点 | 見積書 | 適格請求書(インボイス) |
|---|---|---|
| 出す時期 | 取引の前(注文を受ける前) | 取引のあと(売った・提供したあと) |
| 登録番号の記載 | 決まりはない | 必ず書く[3] |
| 取引年月日 | まだ無い(発行日と有効期限を書く) | 必ず書く[3] |
| 税率ごとの金額と消費税額 | 決まりはないが、分けて書くと請求書と合わせやすい | 税率ごとに分けて必ず書く[4] |
見積書の段階から税率ごとに金額と消費税額を分けておく場合、エクセルでの小計・消費税の計算式と端数の扱いは見積書テンプレートをエクセルで作る記事で説明しています。
それでも見積書に載せる会社が多い理由
決まりはなくても、見積書に登録番号を載せておくと実務上の利点があります。取引先は、仕入れにかかった消費税を差し引く(仕入税額控除)ために、あとで受け取る請求書がインボイスかどうかを気にします。見積もりの段階で登録番号が分かれば、取引先は発注前に、相手がインボイスを出せる事業者かを確かめられます。
登録番号は、法人なら「T」のあとに13桁の法人番号を続けた形、個人事業者などは「T」のあとに13桁の数字(マイナンバーは使わない)という形です[5]。取引先から受け取った番号は、国税庁の公表サイトで、Tを除いた13桁を入れて検索すると確かめられます[6]。
インボイスの登録をしていない事業者は、見積書に登録番号を書けません。この場合は、受注後の請求書もインボイスにはならないので、取引先が気にするのであれば、見積もりの段階で伝えておくと後のやりとりが減ります。受注から請求までの書類の流れは受発注業務の流れの記事で、請求書づくりの自動化は請求書自動化の記事で紹介しています。
Cover Letter
見積書の送付状の文例と、送り方の注意
送付状(添え状)は、何を、何枚、誰に送ったかを伝える1枚の書面です。法律で付けることが決まっているものではありませんが、郵送の場合、封を開けた相手の担当者が中身をすぐ分かるように付けるのが一般的な作法です。
郵送するときの送付状の文例
次の文例は、そのまま使える形にしています。〔 〕の中を書き換えてください。
〔2026年11月10日〕
〔株式会社〇〇〕
〔購買部 〇〇様〕
〔株式会社△△〕
〔営業部 △△〕
〔住所・電話番号・メールアドレス〕
見積書送付のご案内
拝啓 平素は格別のお引き立てを賜り、誠にありがとうございます。
先日ご依頼いただきました〔〇〇の件〕につきまして、お見積書をお送りいたします。
ご査収のほど、よろしくお願い申し上げます。
なお、お見積もりの有効期限は〔2026年12月25日〕までとさせていただいております。
ご不明な点がございましたら、担当の〔△△〕までお問い合わせください。
敬具
記
・お見積書 1部(〔1〕枚)
以上
「ご査収」は、内容を確かめて受け取ってください、という意味です。有効期限を送付状にも書いておくと、相手の担当者が社内で回すときに期限が伝わりやすくなります。
見積書は「信書」なので、郵便で送る
見積書を紙で送るときは、送る方法に注意が要ります。総務省の「信書に該当する文書に関する指針」では、特定の相手に意思や事実を伝える文書を信書とし、請求書の類の例として見積書が挙げられています[7]。信書は、郵便か、国の許可を受けた信書便の事業者で送る決まりです。宅配便やメール便で見積書を送ることはできません(品物と一緒に入れる場合も同じです)。
メールで送るときの文例と保存
PDFをメールに付けて送る場合は、メールの本文が送付状の役目をします。
件名:〔〇〇の件〕お見積書送付のご案内(株式会社△△)
〔株式会社〇〇〕
〔購買部 〇〇様〕
いつもお世話になっております。〔株式会社△△〕の〔△△〕です。
ご依頼いただきました〔〇〇の件〕のお見積書を、PDFでお送りいたします。
有効期限は〔2026年12月25日〕までです。
ご確認のほど、よろしくお願いいたします。
メールで見積書をやりとりした場合、そのデータの保存にも気をつけてください。国税庁の電子帳簿保存法の一問一答では、電子メールで取引の情報をやりとりすることも「電子取引」にあたり、その取引情報には見積書に書かれる事項も含まれると説明されています。一方で、書き損じのあるものや、正式な見積書の前の粗い試算などは保存しなくてよいと考えられる、とも書かれています[8]。送った見積書のPDFは、紙に印刷して終わりにせず、データのまま決まった場所に残しておきます。
FAQ
見積書の有効期限についてよくある質問
見積書の有効期限は何日にするのが一般的ですか?
法律で決まった日数はないので、「一般的な日数」に合わせるより、自社の事情から逆算するほうが確実です。目安は、相手が社内で決めるまでの日数より長く、仕入れ先の見積もりの期限より短い日付です。例えば、相手の稟議に3週間かかり、外注先の見積もりが年末まで有効なら、12月下旬の日付にします。
有効期限が切れた見積書の金額で注文されたら、受けないといけませんか?
民法524条では、遅れて届いた承諾を、申込みをした側が新しい申込みとみなすことができるとされています。その金額で受けるかどうかは自社で選べるので、原価が変わっていれば見積もりを出し直すと伝えてください。取引の内容によって扱いが変わることもあるため、金額の大きい取引は専門家に確かめてください。
有効期限の途中で、出した見積もりを取り下げることはできますか?
見積書が法律上の「申込み」にあたる場合、期限を書いた見積もりは、期限までは原則として取り下げられません(民法523条)。ただし、見積書に「期限内でも撤回することがあります」のように撤回する権利を残す書き方をしていれば別です。取り下げる可能性があるなら、その一文を入れるかどうかを出す前に決め、金額の大きい取引は専門家に文面を確かめてもらってください。
有効期限や登録番号の書き忘れを、仕組みで防ぐことはできますか?
できます。発行日を入れると有効期限の日付が自動で入るひな形にする、登録番号は会社情報の欄に固定で入れておく、といった形にすると、担当者の注意に頼らずにすみます。見積書の作成を受注や請求の流れとつなげて仕組みにしたい場合は、当社にご相談いただけます。
Sources
参考にした資料
- e-Gov法令検索「民法」第140条・第141条・第522条・第523条・第524条・第525条(2026年11月確認)
- e-Gov法令検索「商法」第508条(2026年11月確認)
- e-Gov法令検索「消費税法」第57条の4(2026年11月確認)
- 国税庁「インボイス制度の概要」(2026年11月確認)
- 国税庁「消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A」問18 登録番号の構成(令和5年10月改訂、2026年11月確認)
- 国税庁「インボイス制度 適格請求書発行事業者公表サイト」(2026年11月確認)
- 総務省「信書に該当する文書に関する指針」(平成15年総務省告示第270号、平成19年改正)
- 国税庁「電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】」(令和8年7月)問2

見積書の有効期限に法律で決まった日数はありません。見積書が契約の申込みにあたる場合、期限を書くと、期限までは原則として取り下げられず、期限を過ぎれば効力がなくなる、という扱いになります。期限は仕入れ先の見積もりや原価の動きから決め、日付で書いておくのが確実です。見積書はインボイスではないので登録番号を書く決まりはありません。それでも載せておくと、取引先が発注前に確かめられます。送るときは、紙なら郵便を使い、メールで送った場合はPDFをデータのまま保存しておきます。見積書から請求までの書類づくりを、担当者の注意に頼らない仕組みにしたい場合は、お気軽にご相談ください。

