「請求書の作業を自動にしたい」と考えたとき、思い浮かべる作業は人によって違います。自社が出す請求書を早く作りたいのか、取引先から届いた請求書を発注書や納品書と照らし合わせる手間を減らしたいのか、入金の確認や仕訳まで含めたいのかで、使う道具も、守る決まりも変わります。この記事では、請求書まわりの作業を「発行」「照合」「入金消込」「仕訳」の4つの工程に分け、エクセルでできる範囲、AIで紙やPDFを読み取るときの決まり、自社で進める手順を、工程ごとに見ていきます。決まりの部分は、法令と国税庁などの公式資料で確かめた内容です。
この記事の結論
- 請求書の自動化は、発行・照合・入金消込・仕訳の4つの工程に分けて、1つずつ進めます。
- 発行は、エクセルでも作れます。インボイス(適格請求書)に書く6つの事項と、税率ごとに合計してから消費税を計算する決まりを、ひな形に組み込んでおきます。
- 照合は、発注書・納品書・請求書がデータでそろっていれば、エクセルの関数で金額や数量の違いを見つけられます。紙やPDFが混じる部分には、AIによる読み取り(AI-OCR)を使い、自信のない所だけを人が確かめる形にします。
- 紙の請求書をスキャンして紙を捨てたい場合は、解像度やタイムスタンプなど、電子帳簿保存法のスキャナ保存の決まりを満たす必要があります。
- 令和7年度の改正で、デジタルインボイスや口座の決済データを帳簿に自動でつなぐ仕組みに合わせた制度ができました。スキャンした請求書は対象に入りません。使えるのは国税庁長官が定める基準に合うシステムで、届出も必要です。
請求書の照合・発行の自動化は、4つの工程に分けて考える
「請求書自動化」と呼ばれる作業は、大きく4つに分かれます。工程ごとに、エクセルで足りる所と、AIや専用のサービスが役に立つ所が違います。
| 工程 | 中身 | エクセルでできること | AIや専用サービスが役に立つ所 |
|---|---|---|---|
| 発行 | 自社が出す請求書を作って送る | 取引先の一覧から宛名を引く、税率ごとの合計と消費税を計算する、番号をふる | 件数が多いときの送付や、データ形式の請求書(デジタルインボイス)でのやり取り |
| 照合 | 届いた請求書を、発注書・納品書と突き合わせる | 発注番号をキーにして、金額や数量の違いに印を付ける | 紙・PDF・FAXで届いた請求書の読み取り |
| 入金消込 | 入金の明細と、出した請求書を突き合わせる | 金額と振込名義で候補を探す | 名義の表記ゆれや、まとめ払いの判断の手助け |
| 仕訳 | 請求や入金を帳簿に記録する | 会計ソフトに取り込む表を作る | 読み取った結果や請求データを、会計ソフトにつなぐ |
4つを一度に変えようとすると、どこで止まったのかが分からなくなります。工程を1つずつ変えていきます。どの工程から手を付けるかの考え方は、経理自動化の進め方の記事で紹介しています。
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Issue
請求書の発行の自動化:エクセルのひな形に入れておく決まり
自社が出す請求書は、エクセルでも十分に自動にできます。取引先の一覧(宛名・敬称・締め日)と商品の一覧(品名・単価・税率)を別のシートに作り、明細には番号やコードを入れるだけで、宛名と単価が引かれて計算される形にします。
インボイス制度の登録をしている会社(適格請求書発行事業者)は、取引先から求められたときに、次の事項を書いた請求書を渡す必要があります(消費税法第57条の4第1項)[1]。
- 自社の名称と登録番号
- 取引をした年月日(一定の期間をまとめて請求する場合は、その期間)
- 取引の内容(軽減税率の対象なら、その旨)
- 税率ごとに分けて合計した金額(税抜か税込)と、適用した税率
- 税率ごとの消費税額等
- 請求書を受け取る会社の名称
エクセルで気をつけたいのは、5つ目の消費税額の計算です。消費税法施行令第70条の10は、税率ごとに合計した税抜の金額に10%(軽減税率の対象は8%)をかける方法か、税率ごとに合計した税込の金額に110分の10(軽減税率の対象は108分の8)をかける方法のどちらかで計算し、1円未満の端数を処理すると定めています[2]。明細の1行ごとに消費税を計算して端数を処理し、それを足し上げる作り方は、この2つの方法とは別の計算です。ひな形を作るときは、税率ごとの合計を先に出し、そこに税率をかける式にしておきます。
Matching
届いた請求書の照合:発注書・納品書との突き合わせをエクセルで
取引先から届いた請求書を確かめる作業は、「頼んだもの(発注書)」「届いたもの(納品書や検収の記録)」「請求されたもの(請求書)」の3つを突き合わせる作業です。3つがエクセルやデータでそろっていれば、発注番号をキーにして、数量・単価・金額が合っているかを関数で確かめられます。
やり方の一例は次のとおりです。請求書の明細を1つのシートに貼り付け、発注番号を手がかりに、発注のシートから数量と単価を引いてきます。そのうえで「請求の金額 − 発注の金額」の列を作り、0でない行だけに色を付けます。人は色の付いた行だけを見れば済みます。番号で値を引く関数はXLOOKUPが分かりやすいのですが、Microsoftの公式ヘルプのとおり、Excel 2016とExcel 2019では使えません[3]。古い版が社内に残っている場合は、VLOOKUPやINDEXとMATCHの組み合わせで作ります。
照合では、金額のほかに登録番号も確かめておくと安心です。仕入れにかかった消費税を差し引く(仕入税額控除)には、原則として、帳簿と請求書などを保存しておく必要があります(消費税法第30条第7項)[1]。国税庁の「適格請求書発行事業者公表サイト」では、登録番号で登録の有無を検索できます。件数が多い場合は、自社のシステムから問い合わせて情報を受け取る仕組み(Web-API)も用意されています。使うには利用規約への同意と、国税庁の審査を経て発行されるアプリケーションID(発行は無料)が必要です[4]。
エクセルでの照合が行き詰まるのは、請求書が紙やPDF、FAXで届き、照らし合わせる前の打ち込みに時間がかかっている場合です。この部分に、AIで書類を読み取る仕組み(AI-OCR)を使います。
Scan
紙の請求書をスキャンしてAIで読み取るときの決まり
AI-OCRは、紙やPDFの書類から品名・数量・金額などを読み取ってデータにする仕組みです。読み違いをなくすことはできないので、自信のない所に印を付け、人がそこだけ確かめる運用にします。請求書や注文書の読み取りで取り込む項目や、手書き・空欄の扱いは、請求書・注文書をOCRで読み取る手順の記事で詳しく紹介しています。
当社では、FAXや手書きの注文書をスマホで撮るかスキャナーで読み込むだけで、AIが読み取って受注表(エクセル)に明細を1行ずつ入れる仕組みを作り、動画で公開しています。読み取りに自信のない欄は黄色にして横の欄に理由を書き、最後は人がその黄色の所だけを確かめます(動画の注文書は社名・品名とも架空の見本です)。
同じ考え方で、届いた請求書を読み取ったあとに発注のデータと突き合わせ、合わない所だけを人に回す、という形も考えられます。
注意したいのは、読み取ったあとの紙の扱いです。紙で受け取った請求書を、紙の代わりにスキャンしたデータで保存する「スキャナ保存」には、国税庁が示す決まりがあります。請求書は「重要書類」に当たり、主に次の決まりを満たす必要があります[5]。
| 決まり | 中身(要約) |
|---|---|
| 入力の期限 | 受け取ってから速やか(おおむね7営業日以内)に保存する。社内で処理の手順を決めている場合は、最長2か月の業務の区切りを過ぎてから速やか(おおむね7営業日以内)でもよい |
| 読み取りの質 | 解像度200dpi相当以上、カラー(赤・緑・青それぞれ256階調以上)で読み取る |
| タイムスタンプ | 総務大臣が認定した業務によるタイムスタンプを付ける(期限内に保存したことを確かめられる場合は、これに代えられる) |
| 訂正・削除の記録 | 訂正や削除の事実と内容が分かるシステム、または訂正や削除ができないシステムを使う |
| 検索 | 取引の年月日・金額・取引先で検索できるようにする |
表は一部の要約です[5]。国税庁は、これらの決まりを満たして保存するには対応ソフトを使うのが一般的だとしています[5]。AI-OCRで読み取ることと、スキャナ保存の決まりを満たすことは、別々に確かめます。紙の請求書は紙のまま保存し、読み取ったデータは照合だけに使う、という分け方もできます。
一方、メールに添付されたPDFなど、データで受け取った請求書は「電子取引」に当たり、決められた方法でデータを保存する必要があります(電子帳簿保存法第7条)[6]。紙で届くものとデータで届くもので、保存の決まりが違う点に気をつけます。
Reconciliation
入金消込をエクセルで自動にする
入金消込は、銀行の入金の明細と、自社が出した請求書を突き合わせて、どの請求が支払われたかを記録する作業です。エクセルでは、銀行からダウンロードした明細を貼り付け、「金額が同じ」「振込名義が取引先の一覧の名義と同じ」の2つで請求書の候補を探す式を作るのが基本の形です。両方が合ったものは消込済みにし、合わないものだけを人が確かめます。
合わなくなる理由は、振込手数料が差し引かれている、複数の請求をまとめて払われた、振込名義が会社名と違う、などです。取引先の一覧に「振込名義」の列を作り、一度確かめた名義を書き足していくと、次の月から自動で合う件数が増えていきます。エクセルでの手順と、金額が合わないときの調べ方は、入金消込の手順の記事で詳しく紹介しています。
公的な例として、総務省がまとめた自治体のAI活用の調査では、AI-OCRを税の収納の消込作業に使い、年間1,200時間(60%)を減らした人口3.9万人の自治体の例が挙げられています[7]。この「年間」は令和7年4月から令和8年3月までで、令和7年10月までは実績、それ以降は見込みの値で答えてもらったものです[7]。自治体の税の業務の例なので、会社の消込にそのまま当てはまるわけではありませんが、紙の書類が多い消込でもAIの読み取りが使われていることが分かります。
Journal
仕訳につなぐ2つの道:スキャンした請求書のCSV取り込みと、令和7年度改正のデジタルインボイス
この節では、2つの別の話を扱います。1つは、紙の請求書をスキャンして読み取った結果を、会計ソフトにCSVで取り込む方法です。もう1つは、令和7年度の税制改正でできた、デジタルインボイスなどのデータを帳簿に自動でつなぐ制度です。スキャンしたデータは、この新しい制度の対象には入りません。
スキャンした請求書は、CSVで会計ソフトに取り込む
読み取った請求書の内容を会計ソフトに取り込めば、仕訳の入力も減らせます。流れは次のとおりです。
- 紙の請求書をスキャンし、AI-OCRで日付・取引先・金額・税率などを読み取る
- 読み取った結果をエクセルに出し、自信のない所を人が確かめる
- 使っている会計ソフトの取り込み用の形(列の並びや日付の書き方)に合わせて表を整え、CSVで保存して取り込む
使っている会計ソフトがCSVなどの取り込みに対応していれば、取り込み用の表を作るところまでは自社でも進められます。勘定科目の振り分けなど、仕訳そのものをAIでどこまで自動にできるかは、会計AIの導入の記事で紹介しています。
令和7年度の改正:デジタルインボイスと決済データを帳簿につなぐ制度
令和7年度の税制改正では、請求書などのデータを自動で保存し、帳簿に自動でつなぐ仕組みに合わせた制度が、電子帳簿保存法に新しく設けられました[8]。国税庁の資料によると、対象になるのは、デジタル庁が管理する仕様で送受信されたデジタルインボイス(「Invoice JP PINT」または「JP Self-Billing」)か、預貯金口座の決済データです[8]。改ざんを防ぐ、データの金額を直したうえで帳簿に記録できないようにする(または直した事実を確かめられるようにする)、データと帳簿の関係を確かめられるようにする、の3つの決まりを満たして送受信・保存すると、そのデータに関わる隠蔽・仮装について重加算税の10%加重の対象から外れ、青色申告特別控除65万円も使えるようになります[8]。ただし、国税庁長官が定める基準に合うシステムを使い、あらかじめ届出書を出す必要があります。重加算税の10%加重から外れる扱いは令和9年1月1日以後に法定申告期限が来る国税から、青色申告特別控除65万円は令和9年分以後の所得税から適用されます[8]。
JP PINTは、デジタル庁が日本のPeppol(ペポル)の管理者として管理している、デジタルインボイスの標準の仕様です[9]。紙やPDFを読み取る方法と違い、最初からデータでやり取りするので、読み違いが起きません。取引先がこの形で請求書を出せるかどうかで使える範囲が決まるため、自社で使っている会計ソフトや販売管理ソフトが対応しているかと、主な取引先の対応状況を確かめてから考えます。
Steps
自社で進める手順と、外に頼める所
- 工程ごとの手間を数える:発行・照合・入金消込・仕訳のそれぞれに、月に何件、何時間かかっているかを担当者と書き出します。
- 届き方を数える:届く請求書のうち、紙・PDF・FAX・データの割合を数えます。データが多ければエクセルの関数で、紙が多ければ読み取りの仕組みから考えます。
- 1つの工程・一部の取引先で試す:いきなり全部を変えず、件数の多い取引先から試し、合わなかった理由を記録します。
- 保存の決まりを確かめる:紙を捨てるか、データで届いたものをどう保存するかを、スキャナ保存と電子取引の決まりに照らして決めます。分からない所は、国税庁の電子帳簿等保存制度特設サイトや税理士に確かめます。
- 手順を書き残す:担当者が替わっても回るよう、どの表に何を貼り、どの色の行を確かめるかを書いておきます。
エクセルの関数で済む所は、自社で十分に進められます。手が回らなくなるのは、紙やFAXで届く書類の読み取りと、今使っている表の形に合わせた仕組みづくりです。オプティソースの事務作業の自動化では、30分の相談で任せたい事務と今の手順を伺い、今お使いのエクセルや書類の形に合わせて仕組みを作ります。動かし始めたあとも、見守りと手直しを月額で続けます。人が代わりに作業するサービスではなく、AIが自信のない所は黄色にして理由を残し、最後に確かめて決めるのは御社の担当者です。
FAQ
よくある質問
請求書の照合は、エクセルだけで自動にできますか?
発注書・納品書・請求書がデータでそろっていれば、発注番号をキーに関数で数量や金額の違いに印を付けられます。紙やPDFで届く請求書が多い場合は、打ち込みの手間が残るため、AIによる読み取りを組み合わせます。
請求書をスキャンしてAIで読み取ったら、紙は捨ててよいですか?
紙を捨てて、スキャンしたデータで保存するには、解像度200dpi相当以上のカラーでの読み取り、期限内の入力、タイムスタンプなど、スキャナ保存の決まりを満たす必要があります[5]。満たせない場合は、紙も保存しておきます。
エクセルで作る請求書の消費税は、明細ごとに計算してもよいですか?
インボイスに書く消費税額等は、税率ごとに合計した金額に税率をかけ、1円未満の端数を処理する方法で計算すると定められています[2]。明細ごとに端数を処理して足し上げる計算とは別のものなので、ひな形は税率ごとの合計から計算する形にします。
入金消込も自動にできますか?
金額と振込名義で候補を探す式を作れば、エクセルでもかなりの件数を自動で合わせられます。手数料の差し引きやまとめ払いは合わなくなりやすいので、合わない行だけを人が確かめる形にします。
Sources
参考にした資料
- 消費税法(昭和63年法律第108号)第30条・第57条の4(e-Gov法令検索・2026年11月3日確認)
- 消費税法施行令(昭和63年政令第360号)第70条の10(e-Gov法令検索・2026年11月3日確認)
- XLOOKUP 関数(Microsoft サポート・2026年11月3日確認)
- 適格請求書発行事業者公表システムWeb-API機能(国税庁 インボイス制度適格請求書発行事業者公表サイト・2026年11月3日確認)
- はじめませんか、書類のスキャナ保存【令和6年1月以降用】(国税庁・2023年7月)
- 電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律(電子帳簿保存法・平成10年法律第25号)第7条(e-Gov法令検索・2026年11月3日確認)
- 自治体におけるAI・RPA活用促進(令和7年度)(総務省・2026年4月24日版)
- 請求書等を帳簿に自動連携する仕組みに対応した制度が新設されました~令和7年度税制改正による電子帳簿等保存制度の見直しの概要~(国税庁・2025年4月)
- JP PINT(デジタル庁・2026年10月30日更新)
請求書の自動化は、発行・照合・入金消込・仕訳の4つに分けると、エクセルで足りる所と、読み取りの仕組みが要る所がはっきりします。発行はインボイスの記載事項と消費税の計算をひな形に入れ、照合と消込は「合わない行だけを人が見る」形にし、紙を捨てる場合はスキャナ保存の決まりを確かめます。紙やFAXの読み取りを含めて、今の表のまま仕組みにしたい場合は、お気軽にご相談ください。

