届いた請求書や注文書を、担当者がひとつずつ見ながらエクセルや会計ソフトに手入力している会社は少なくありません。取引先が多ければ多いほど、この作業は毎月の負担として積み上がります。「OCRを入れれば自動化できる」という話は耳にするものの、実際に何をどこまで任せられて、どこは人が見るべきなのか、具体的な手順がわからないという声もよく聞きます。この記事では、請求書・注文書の読み取りを実務でどう進めるか、項目別の取り込み方と確認のポイント、例外処理の手順までをまとめます。
請求書・注文書の処理、まだ手入力に頼っていませんか
Sansan株式会社の「請求書に関する業務の実態調査2021」によると、紙の請求書の受領が半数を超えると答えた人は90.2%にのぼり、経理以外の部署でも82%が請求書処理のために出社していると回答しています。請求書1枚の処理に約53分かかっているという結果もあり、取引先の数が増えるほど、この作業が月単位でまとまった時間を奪っていることがわかります。経営者や事務をまとめる立場からすると、「誰かがやらなければならない作業」として黙認されがちですが、積み重なれば決して小さくない負担です。
🛠 この記事のような事務作業の手間は、ご相談ください。任せたい事務を伺い、今の表や手順のまま使える仕組みをつくります(相談は無料)。
Overview
AI-OCRで何が変わるのか、仕組みを一言で
AI-OCRとは、紙やPDFの書類を画像として読み込み、そこに書かれた文字を自動で認識してデータ化する仕組みです。従来のOCRは印刷された文字しか読めませんでしたが、AI-OCRは手書きの文字や表形式のレイアウトもある程度読み取れるようになっています。ただし「ある程度」という言葉が示す通り、読み取った内容がすべて正しいとは限りません。AI-OCRはあくまで入力の手間を減らす道具であり、最終的な確認は人が行うことが前提になります。この前提を押さえておくかどうかで、導入後の満足度は大きく変わります。
請求書・注文書の処理で困っていることがあれば、検討段階でもご相談いただけます。
無料で相談するMisconceptions
OCR導入でよくある3つの誤解
誤解1:OCRを入れれば完全に自動化できる。実際には、読み取り後のデータを会計システムや販売管理システムに反映する前に、人が内容を確認する工程が残ります。自動化できるのは「文字を打ち込む手間」であって、「確認する手間」ではありません。
誤解2:精度100%で人の確認は不要になる。手書きの追記や汚れ、印刷のかすれなど、読み取り条件が悪いと誤認識は起こります。精度を過信して確認を省くと、誤った金額で処理されるリスクが残ります。
誤解3:インボイス対応で確認項目が減る。株式会社インフォマートの「インボイス制度施行から1年が経過した現状に関する実態調査」では、請求書の発行業務で2割以上、受け取り業務で3割以上が「処理時間が増えた」と回答しています。登録番号や税率など確認すべき項目はむしろ増えており、OCRを導入したからといって確認作業が減るわけではありません。
Process
請求書・注文書の読み取り項目と取り込み先の対応表
請求書をAI-OCRで読み取るときは、取引先名・日付・金額・税区分・登録番号・品目・単価といった項目を抜き出し、会計システムや販売管理システムの項目に当てはめていきます。注文書でも考え方は同じで、品目や数量、納期などを読み取り、受注管理の項目に対応させます。あらかじめどの項目をどこに流し込むかを決めておくことで、読み取り後の作業がスムーズになります。
| 読み取る書類・項目 | 取り込み先の項目 |
|---|---|
| 請求書:取引先名・発行日・金額 | 会計システムの取引先マスタ・計上日・金額欄 |
| 請求書:税区分・登録番号 | 会計システムの消費税区分・適格請求書発行事業者番号欄 |
| 請求書:品目・単価 | 会計システムまたは原価管理の明細行 |
| 注文書:品目・数量・納期 | 販売管理システムの受注明細・出荷予定日 |
この対応関係を一度整理しておけば、読み取り結果をどこに流すかを毎回考える必要がなくなります。
Checklist
読み取り後に人が必ず確認すべきポイント
インフォマートの調査が示すように、インボイス対応後は確認すべき項目自体が増えています。読み取り結果をそのまま使わず、次の点は必ず目で確かめることをおすすめします。
- 合計金額と明細の小計が一致しているか
- 税率(10%・8%)の区分が取引内容と合っているか
- 登録番号(インボイス番号)の桁数と形式が正しいか
- 取引先名・日付の読み取りに誤字や桁ずれがないか
- 注文書であれば、数量と単価から計算される金額に矛盾がないか
この確認作業は省略できませんが、チェックすべき項目をあらかじめ絞り込んでおくことで、全項目を一から見直すよりも負担を減らせます。
Exceptions
手書き・単価空欄・裏写りの例外処理手順
きれいに印刷された書類と、手書きの追記やFAX・コピーで劣化した書類とでは、読み取りの確かさに差が出ます。実務では次のような例外の扱いを決めておきます。
- 手書きの追記がある場合:読み取り結果に自信度の低い箇所をマークし、人が原本と照らし合わせて修正する
- 単価欄が空欄の場合:数量と合計金額から単価を逆算するか、取引先に確認する運用をあらかじめ決めておく
- FAXやコピーで裏写りしている場合:裏面の文字が表面に重なって誤読されやすいため、該当箇所は必ず目視で確認する
当社では、FAXや手書きの注文書をスマホで撮るかスキャナーで読み込むだけで、AIが明細を1行ずつ受注表(エクセル)に入れる仕組みを作り、動画で公開しています。手書き・かすれたFAX・印刷・複合機のスキャンPDFの4つの形で試しました。読み取りに自信のない欄は黄色にして横の欄に理由を書き、人はその黄色の所だけを確かめます。たとえば手書きの注文書で単価の欄が空いていたときは、空欄を勝手に埋めず、黄色にして確認を促す形にしています(動画の注文書は社名・品名とも架空の見本です)。すべてを機械に任せるのではなく、人が確かめる所を先に絞っておくと、現場で続けやすくなります。AI-OCRの仕組みと選び方は、AI-OCRとは何かを解説した記事にまとめています。
FAQ
OCR請求書導入でよくある質問
今使っている会計ソフトや販売管理システムと連携できますか?
多くのシステムはCSVやAPIでのデータ連携に対応しています。読み取った項目をどの形式で渡せば取り込めるか、事前にシステム側の仕様を確認しておくとスムーズです。
手書きの注文書でもどの程度読み取れますか?
印刷された文字に比べると精度は下がりますが、完全に読めないわけではありません。読み取りに自信のない箇所を分けて表示する仕組みを使えば、人が確認すべき範囲を絞り込めます。
データ入力の自動化にAIを使うと、どこまで手間が減りますか?
文字を手で打ち込む作業は減らせますが、金額や税率、登録番号などの確認作業は残ります。「入力の自動化」と「確認の自動化」は別物だと考えておくと期待値のずれを防げます。
社内にエンジニアがいなくても導入の相談はできますか?
可能です。現在使っている請求書や注文書のフォーマット、会計・販売管理システムの項目を伺いながら、どこまで読み取りを任せられるかを一緒に整理します。
OCRは文字を打ち込む手間を減らす道具であり、確認作業をゼロにするものではありません。読み取る項目と取り込み先を整理し、確認すべきポイントを絞り込み、手書きや裏写りなどの例外に備えておくことで、現場で使える仕組みになります。まずは自社の請求書・注文書で、どこまで任せられるかを確かめるところから始めてみてください。試すときは、取引先名・金額・口座などを伏せた見本を使うのが基本です。実物を使う場合は、入力した内容が保存や学習に使われないかを利用規約で確かめ、社外のサービスに出してよい書類かを社内で確認してからにしてください。

