ChatGPTなどの生成AIを会社で使い始めても、「聞き方が分からず、ありきたりな答えしか返ってこない」「何を入れてよくて、何を入れてはいけないのか決まっていない」と困ることがあります。生成AIへの指示文のことを「プロンプト」と呼びます。この記事では、業務で使うプロンプトの書き方の型と、事務・営業・企画でそのまま使える例文を紹介します。あわせて、入力してはいけない情報と、出てきた答えの確かめ方も整理します。
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この記事の結論
- 業務で使うプロンプトは、新しく入った人に仕事を頼むつもりで「目的・背景・材料・条件・出す形」の5項目を書くと、答えが安定します。
- いちばん大事なのは「材料」です。手元の事実を渡し、「書いていないことは補わないでください」と添えると、作り話が混じる余地を減らせます。
- 顧客や社員の氏名・連絡先、取引先から預かった情報、社内の秘密情報は原則入れません。入力内容の扱いはサービスや契約の種類で変わるため、線引きは社内ガイドラインで決めておきます。
- 出てきた答えは、数字・日付・固有名詞、根拠のない言い切り、情報の新しさ、ほかの作品とのそっくりさの4点を人が確かめてから外に出します。
- うまくいったプロンプトは「使う場面」「プロンプト本文」「確かめる所」の表で共有し、毎週くり返す作業2つか3つから始めます。
生成AIを業務で使う会社は増え、文章の下書きから使われ始めている
総務省の令和8年版情報通信白書によると、生成AIの活用方針について「わからない」と答えた企業を除いて尋ねたところ、自社の何らかの業務で生成AIを使っていると答えた日本の企業は86.4%でした。2024年度の調査から大きく上がっています[1]。
同じ白書では、業務の種類ごとに見ると「議事録・メール作成補助」で使っていると答えた割合が約7割と最も高く、「営業・販売」が約6割、「社内ヘルプデスク」が約5割と続きます。効果を実感していると答えた割合も「議事録・メール作成補助」が約7割で、ほかの種類より目立って高い結果でした[1]。
つまり、文章の下書きのような身近な仕事から使われ始めていて、そこでは効果も感じられています。一方で、同じ道具を使っていても、指示の出し方しだいで返ってくる答えの質は大きく変わります。最初に覚えるべきなのは、細かい裏技より、仕事を頼むときと同じように必要なことを伝える書き方です。
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Basics
良いプロンプトの型:新しく入った人に仕事を頼むつもりで書く
生成AIの一つであるClaudeを作っているAnthropicは、公式の書き方の手引きで、AIを「優秀だが、あなたの会社のやり方を知らない新入社員」のように考えるよう勧めています。そして、書いたプロンプトを事情を知らない同僚に見せて、その人が迷うならAIも迷う、という確かめ方を紹介しています[2]。同じ手引きでは、出してほしい形や条件をはっきり書くこと、順番が大事な作業は番号付きの手順で書くこと、見本を数個つけると形や調子がそろいやすいことも挙げられています[2]。
これを業務向けにまとめると、次の5つの項目になります。毎回すべて書く必要はありませんが、答えがずれたときは、どれが抜けていたかを見直すと直しやすくなります。
| 項目 | 書くこと | 抜けると起きやすいこと |
|---|---|---|
| 目的 | 何のための文章か、だれが読むか | だれに向けたのか分からない、ぼんやりした文章になる |
| 背景 | いまの状況、相手との関係、これまでの経緯 | 一般論ばかりで、自社の事情に合わない |
| 材料 | 元になるメモ・数字・文章(入れてよいものだけ) | AIがもっともらしい中身を作ってしまう |
| 条件 | 字数、言葉づかい、入れてほしいこと・入れないでほしいこと | 長すぎる、硬すぎるなど、手直しが増える |
| 出す形 | 箇条書き、表、メール文面など。見本があれば添える | そのまま使えず、形を整える手間が残る |
5つの項目をそのまま並べると、どの仕事にも使える型になります。
目的:【何のための文章か・だれが読むか】
背景:【いまの状況・相手との関係】
材料:【元になるメモ・数字(入れてよいものだけ)】
条件:【字数・言葉づかい・入れないでほしいこと】。材料に書いていないことは補わないでください。
出す形:【箇条書き/表/メール文面】
なかでも大事なのは「材料」です。材料を渡さずに「〇〇社への提案文を書いて」と頼むと、AIは知らない会社の事情を想像で埋めます。手元にある事実を渡し、「書いていないことは補わないでください」と一言添えるだけで、作り話が混じる余地を減らせます。
Examples
業務別のプロンプト例(そのまま使える形)
ここからは、【 】の中を自分の仕事に合わせて書き換えれば使える例文です。どれも上の5つの項目に沿っています。材料の部分には、後で説明する「入力してはいけない情報」を入れないようにしてください。
事務:会議メモから議事録を作る
あなたは社内会議の記録係です。下のメモから議事録を作ってください。
読む人:会議に出ていない【営業部】のメンバー
形:「決まったこと」「宿題(担当者・期限)」「次回までに確かめること」の3つの見出しで箇条書き
条件:メモに書いていないことは補わないでください。人名・日付・数字はメモのとおりに書き、聞き取れずあいまいな所は「(要確認)」と書いてください。
メモ:
【ここに会議メモを貼る】
議事録づくりは効果が出やすい一方で、人名や数字の聞き違いが残りやすい作業です。録音から仕上げるまでの手順はAI議事録の作り方の記事で詳しく紹介しています。
事務:よくある社内の問い合わせに答える文を作る
下の社内規程の抜粋だけを根拠に、社員からの質問に答える文を作ってください。
質問:【例:出張の日当はいくらですか】
条件:規程に書いていないことは「規程に記載がないため、総務に確認してください」と答えてください。答えの最後に、根拠にした条文の番号を書いてください。
規程の抜粋:
【ここに該当部分を貼る】
営業:商談のあとのお礼メールを書く
商談のあとに送るお礼メールの下書きを書いてください。
相手:初めて商談した取引先の担当者(社名・氏名は送る前に私が入れます)
話した内容:【例:在庫管理の手間が多いという相談。来月、見積もりを出す約束をした】
条件:300字以内。売り込みの言葉は控えめにし、次にすること(だれが・いつまでに・何を)を1文で入れてください。件名の案を3つつけてください。
社名や氏名は、AIに渡さず送る前に自分で書き足す形にしています。ここは次の節で説明する入力ルールとつながっています。
営業:断られた理由を整理する
下は、この3か月に失注した案件のメモです(社名は伏せてあります)。
断られた理由を似たものどうしでまとめ、多い順に表にしてください。列は「理由」「件数」「メモの中の言い回しの例」です。
条件:件数はメモから数えたものだけにし、推測で増やさないでください。
メモ:
【ここに貼る】
企画:アイデアを広げてから絞る
【中小企業の経理担当者】向けの【新しいサービス】のアイデアを10個出してください。
前提:当社の強みは【例:製造業の受発注に詳しい社員がいること】です。
形:表にし、列は「アイデア」「だれのどんな困りごとに向けたものか」「確かめるべき点」にしてください。
そのあと、前提の強みを最も生かせるものを3つ選び、選んだ理由を1文ずつ書いてください。
企画の仕事では、AIの案をそのまま採るより、自分では出にくい視点を拾う使い方が向いています。「確かめるべき点」の列を入れておくと、思いつきのまま話が進むのを防げます。
企画:自分の案に反対意見を出してもらう
下は、社内に出す予定の企画の要約です。
この企画に反対する立場の役員になったつもりで、厳しい質問を5つ出してください。それぞれに、答えるために用意しておくべき資料や数字も書いてください。
企画の要約:
【ここに貼る】
Input Rules
入力してはいけない情報と、社内ガイドラインの関係
プロンプトの例で「社名は伏せる」「入れてよいものだけ」と書いたのには理由があります。入力した内容がどう扱われるかは、使うサービスや契約の種類で変わるからです。
たとえばOpenAIは、ChatGPTなど個人向けのサービスでは、入力された内容をモデルの学習に使うことがあり、設定で止められると説明しています[3]。一方で、ChatGPT BusinessやChatGPT Enterprise、APIなどの法人向けサービスのデータは、初期設定では学習やモデルの改善に使わないとしています[4](いずれも2026年11月1日に公式ページで確認)。同じ「ChatGPT」でも、社員が個人のアカウントで使うのか、会社として契約したものを使うのかで前提が違います。
個人情報については、個人情報保護委員会が2023年6月2日に注意を呼びかけています[5]。求めているのは、個人情報を含むプロンプトを入れるなら利用目的に必要な範囲かを確かめることと、入力したデータをサービスの提供者が機械学習に使わないことなどを確かめることです[5]。プロンプトを書く段階では、氏名や連絡先を【 】のまま残し、送る直前に人が書き足す形にしておくと、この確認が必要な場面そのものを減らせます。
これらをふまえた線引きの一例を下の表にまとめました。どこまで認めるかは会社ごとに決めることなので、目安として見てください。
| 情報の種類 | 例 | 扱いの目安 |
|---|---|---|
| 個人を特定できる情報 | 顧客や社員の氏名、連絡先、住所 | 原則入れない。どうしても必要なら、会社として契約したサービスに限り、社内ルールで認めた場合だけ |
| 取引先から預かった情報 | 秘密保持契約の対象になっている図面・価格・計画 | 原則入れない。どうしても必要なときは、秘密保持契約で第三者への開示がどう制限されているかを契約書で確かめ、取引先の了解を得てからにする |
| 社内の秘密情報 | 公表前の決算、人事、新製品の計画 | 原則入れない。会社として契約したサービスで例外を認めるなら、どの情報まで入れてよいかを社内ルールで決めておく |
| 伏せれば使える情報 | 社名を「A社」に置き換えた商談メモ | 置き換えたうえで使う。組み合わせで相手が分かってしまわないかも確かめる |
| 公開されている情報 | 自社サイトの文章、公表済みの資料 | 使ってよい。他社のサイトや記事の文章を材料にした場合は、出てきた答えがその文章とよく似ていないかを確かめてから外に出す(下の「確かめ方」の4を参照) |
こうした線引きは、社員一人ひとりの判断に任せるとばらつきます。使ってよいサービス、入れてはいけない情報、出力の確かめ方を、社内の利用ガイドラインとして文書にしておくと、判断のばらつきを減らせます。ガイドラインを作る順番は社内AIの利用ガイドラインを整える進め方の記事で詳しく説明しています。入れる9つの項目と、それぞれを厳しめにするかゆるめにするかの決め方は生成AIの利用ガイドラインの作り方の記事に、機密情報を入れたときに何が起きるかは社内AIに機密情報を入力するとどうなるかの記事にまとめています。ひな形から作りたい場合は、当社の無料テンプレート「生成AI 利用ガイドライン(Word)」も使えます。
Check
出てきた答えの確かめ方
生成AIの答えは、自然な文章でも中身が正しいとは限りません。個人情報保護委員会も、生成AIの答えは確率的なつながりをもとに作られるため、不正確な内容が含まれることがあると注意しています[5]。業務で使うときは、次の4点を人が確かめてから外に出すようにします。
- 数字・日付・固有名詞:元の材料と1つずつ突き合わせます。AIが計算した合計や割合は、表計算ソフトで計算し直します。
- 根拠のない言い切り:「必ず」「法律上問題ない」のような言い切りが出てきたら、その根拠を自分で探します。見つからなければ消すか、言い方を弱めます。
- 情報の新しさ:生成AIは、学習した時点より後の出来事を知らないことがあります。制度や料金のように変わりやすい話は、公式のページで確かめます。理由は生成AIの情報の新しさの問題を扱った記事にまとめています。
- ほかの作品とのそっくりさ:文化庁の検討会がまとめた資料では、AIで作ったものが著作権を侵害するかどうかは、AIを使わずに作った場合と同じく、既存の作品と似ているか、既存の作品をもとにしたかで判断されると整理されています[6]。特定の作品名を入れて似せるような使い方は避け、外に出す前に似たものがないかを確かめます。
確かめる手間を減らすには、プロンプトの段階で工夫しておくのも有効です。「元の材料に書いていないことは書かない」「自信がない所は(要確認)と書く」と指示しておけば、人が見るべき所が分かりやすくなります。
Practice
社内で使い続けるためのプロンプトの残し方
うまくいったプロンプトは、一人の手元に置いておくと広がりません。次の3つの欄を持つ共有の表に残していくと、部署の中で使い回せるようになります。
- 使う場面:「商談のあとのお礼メール」のように、だれが見ても分かる名前をつけます。
- プロンプト本文:書き換える所を【 】で示し、入れてはいけない情報の注意を一行添えます。
- 確かめる所:その作業でAIが間違えやすかった点を書き足していきます。
最初から数を集めようとせず、毎週くり返す作業を2つか3つ選んで始めると続けやすくなります。使ってみてずれた答えが出たら、5つの項目のどれが足りなかったかを見直し、表のプロンプトを直していきます。
FAQ
生成AIのプロンプトについてよくある質問
ChatGPTのプロンプトは英語で書いたほうがよいですか?
日本語で問題なく使えます。大事なのは言語より、目的・背景・材料・条件・出す形がそろっているかです。答えを日本語で使うなら、日本語で書いたほうが確かめるときにも楽です。
長いプロンプトのほうが良い答えが返ってきますか?
長さそのものより、必要なことが書かれているかで決まります。事情を知らない同僚が読んで迷わない程度に書けていれば十分です。迷う所があれば、その部分を書き足します。
無料版のChatGPTを業務に使ってもよいですか?
会社の決めごとしだいです。OpenAIは個人向けのサービスでは入力内容を学習に使うことがあり、設定で止められると説明しています[3](2026年11月1日に公式ページで確認)。業務で使うなら、使ってよいサービスと設定を社内ガイドラインで決め、社員に伝えておくことをおすすめします。
社内でプロンプトの使い方をそろえるには、何から始めればよいですか?
入力してはいけない情報の線引きを先に決め、そのうえで毎週くり返す作業のプロンプトを2つか3つ共有するところから始めると進めやすくなります。どの作業から試すかを一緒に整理するご相談もお受けしています。
Sources
参考にした資料
- 総務省「令和8年版 情報通信白書」第Ⅰ部第2章第1節1(3)生成AIの業務利用状況(2026年)
- Anthropic「Prompting best practices」Claude公式ドキュメント(2026年11月1日確認)
- OpenAI「How your data is used to improve model performance」(2026年3月13日更新・2026年11月1日確認)
- OpenAI「Business data privacy, security, and compliance」(2026年11月1日確認)
- 個人情報保護委員会「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等」(2023年6月2日)
- 文化審議会著作権分科会法制度小委員会「AIと著作権に関する考え方について」(2024年3月15日)

業務で使うプロンプトは、新しく入った人に仕事を頼むときと同じように、目的・背景・材料・条件・出す形を伝えると答えが安定します。材料には入れてよい情報だけを使い、その線引きは社内のガイドラインで決めておきます。出てきた答えは、数字や言い切り、情報の新しさを人が確かめてから使います。当社では、どの業務から生成AIを試すかの整理や、社内ルールづくりのご相談をお受けしています。

