「オウンドメディアを始めたほうがいい」と言われても、何から決めればよいのか分からない。調べると大手企業の成功例ばかりが出てきて、担当が1人か2人しかいない自社に当てはまるのか判断できない。そんな迷いを持つBtoBの中小企業の方は多いと思います。この記事では、自社にオウンドメディアが必要かを判断できるよう、まずペイドメディア・アーンドメディアとの違いを表で整理します。そのうえで、向いている会社と向いていない会社、始める前に決めておくこと、少人数で続けるための体制、成果の測り方を順番にまとめます。
この記事の結論
- 向いているのは、お客様が発注の前に「調べる」商材を扱い、社内に「よく聞かれる質問」がたまっている会社です。取引先が数社に決まっている会社や、半年以上続ける体制が組めない会社は後回しでかまいません。
- オウンドメディアはすぐに問い合わせが増える方法ではありません。書いたものが残り、時間とともに入口が増えていく点が広告との違いです。
- 始める前に、読み手・読んだ人にしてほしい行動・テーマの範囲・量と担当・続けるかを判断する時期の5つを決めておきます。
- 1〜2人で回すなら、「何を書くか」と「中身が正しいか」は社内で持ち、下書きは外に頼むか生成AIに任せてもかまいません。
- 成果は検索・行動・商談の3段階に分けて見て、公開直後の数字ではなく月ごとの推移で判断します。
広告や紹介だけに頼ると、集客の波を自社で動かせない
BtoBの中小企業の集客は、多くの場合、紹介・展示会・広告のどれかに支えられています。どれも大事な入口ですが、紹介は相手の都合で増えたり減ったりしますし、展示会は年に数回しかありません。広告は出している間は効きますが、止めればそこで問い合わせも止まります。
もう一つの悩みは、相手が問い合わせてくる前に何を調べているのかが見えないことです。発注先を探す担当者は、まず自分で調べ、候補を絞ってから声をかけてきます。その調べる段階で自社の名前が出てこなければ、比べる候補にすら入れません。
オウンドメディアは、この「調べる段階」に自社の考えや知識を置いておくための手段です。すぐに問い合わせが増える方法ではありませんが、書いたものが残り、時間とともに入口が増えていく点に特徴があります。
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Overview
オウンドメディアとは:自社で持ち、自社で中身を決められる発信の場
オウンドメディアとは、自社が持ち、載せる中身を自社で決められる発信の場のことです。自社のウェブサイトの中のコラムやブログ、事例紹介、メールマガジン、配布する資料などがこれに当たります。実際には、自社サイトの中のお役立ち記事を思い浮かべる人も多いでしょう。
この言葉は、ペイドメディア(お金を払って載せる場)、アーンドメディア(第三者が取り上げてくれる場)と並べて語られます。3つをまとめて「トリプルメディア」と呼ぶこともあります。米国の調査会社Forrester Researchは2009年12月の報告書で、オウンド・アーンド・ペイドの3つはそれぞれ役割が違い、組み合わせて使うものだと整理しました。同じ報告書では、短期のペイドメディアをきっかけ役として使い、長く使えるオウンドメディアの接点を少しずつ積み上げることが勧められています[1]。
| 種類 | 例 | よい点 | 気をつける点 |
|---|---|---|---|
| オウンドメディア(自社で持つ場) | 自社サイトのコラム、事例紹介、メールマガジン、配布資料 | 中身を自由に決められ、書いたものが残る | 読まれるまでに時間がかかり、続ける手間が要る |
| ペイドメディア(お金を払う場) | 検索広告、SNS広告、業界誌の広告枠、展示会の出展 | 出したその日から人に届く | 止めると効果も止まり、費用がかかり続ける |
| アーンドメディア(取り上げてもらう場) | 報道、取引先や利用者の紹介、口コミ、SNSでの言及 | 第三者の言葉なので信頼されやすい | 内容も時期も自社では決められない |
アーンドメディアは自社で動かせないぶん、信頼されやすい場です。ただし、お金を払って書いてもらった紹介は第三者の声とは言えません。消費者向けの話になりますが、景品表示法では2023年10月1日から、事業者の広告なのに一般の消費者がそうと見分けにくい表示(いわゆるステルスマーケティング)が規制の対象になっています[2]。
3つは取り合いの関係ではありません。オウンドメディアに読む価値のある記事があれば、広告から来た人も読み進めてくれますし、取引先が人に紹介するときにも記事のリンクを渡してもらえます。オウンドメディアは、ほかの2つの受け皿にもなります。
Fit
オウンドメディアが向いている会社、向いていない会社
向いている会社
BtoBでオウンドメディアが役に立ちやすいのは、お客様が発注の前に「調べる」商材を扱っている会社です。たとえば、進め方や費用の考え方を知らないと頼めない仕事、比べる候補が多い仕事、検討に数か月かかる仕事がこれに当たります。こうした商材では、問い合わせの前に読まれた記事が、そのまま会社の説明の代わりになります。
もう一つの条件は、社内に「よく聞かれる質問」がたまっていることです。営業や技術の担当者が商談のたびに説明している内容は、そのまま記事の種になります。書くことが社内の経験から出てくるので、ほかの会社の記事と同じ内容になりにくい利点もあります。
向いていない会社、または後回しでよい会社
反対に、取引先が数社に決まっていて新しいお客様を増やす予定がない会社や、お客様が調べずに価格だけで選ぶ商材では、オウンドメディアの出番は小さくなります。今月や来月の売上を急いで作る必要がある場合も、先に広告や営業の手を打つほうが合っています。
また、半年以上続ける体制が組めないなら、無理に始めないほうがよいこともあります。更新が止まった記事一覧は、訪れた人に「この会社は動いていないのでは」という印象を与えかねません。
Before You Start
始める前に決めておく5つのこと
オウンドメディアがうまくいかない理由の多くは、書き始めてから決めるべきことが決まっていないことにあります。最初に次の5つを1枚の紙に書いておくと、途中で迷ったときの基準になります。
- だれに読んでほしいか:業種、会社の規模、読む人の役職を具体的に書きます。「中小企業の経営者」より「従業員30〜100人の製造業で、新しい取引先を探している購買担当」のほうが、書く内容を決めやすくなります。
- 読んだ人に何をしてほしいか:問い合わせ、資料のダウンロード、メールマガジンの登録など、記事の先にある行動を1つか2つに絞ります。
- 書くテーマの範囲:自社の仕事に関係があり、かつ自社が経験をもとに書けるテーマに絞ります。アクセスが集まりそうという理由だけで範囲を広げると、読まれても問い合わせにはつながりにくくなります。
- どれくらいの量を、だれが書くか:月に何本出すか、だれが書き、だれが内容を確かめるかを決めます。量は「無理なく続けられる数」を基準にします。
- いつ、何を見て続けるかを判断するか:半年後にどの数字を見て、続けるか見直すかを判断するのかを、始める前に書いておきます。
量について一つ補足します。Googleは検索で上位に出すための記事より、読む人の役に立つことを目的に作られた記事を評価する仕組みにしていると説明しています。そのうえで、どれか1本が上位に出ることを期待していろいろなテーマで大量に記事を作っていないか、と自分に問うよう勧めています。Googleが好む文字数というものも無いと明記しています[3]。本数や長さを目標にするより、決めた読み手の質問に答えられているかを基準にするほうが、検索の考え方にも合っています。検索結果の上に出るAIの答えに自社の記事を使ってもらうための考え方も、この延長にあります。Googleの説明で確かめられる範囲はLLMO対策の記事で整理しています。
Team
少人数で続けるための体制
大手企業のオウンドメディアは、編集長、ライター、デザイナー、分析の担当者がそろっていることもあります。中小企業で同じ形を作るのは現実的ではありません。1〜2人で回す場合は、仕事を次のように分けて考えると、どこを社内で持ち、どこを外に出すかを決めやすくなります。
| 仕事 | 中身 | 社内で持つべきか |
|---|---|---|
| テーマを決める | お客様によく聞かれる質問を集め、書く順番を決める | 社内で持つ(お客様を知っているのは自社だけのため) |
| 材料を出す | 自社の経験、実際の進め方、数字、つまずいた所を話す | 社内で持つ(30分ほど話すだけでもよい) |
| 下書きを書く | 材料を記事の形にまとめる | 外に出す、または生成AIを使ってもよい |
| 内容を確かめる | 事実や数字の誤り、自社の考えと違う所がないかを見る | 社内で持つ(最後の責任は自社にあるため) |
| 公開と見直し | 公開し、数か月後に数字を見て直す | 手順を決めれば、外に出すこともできる |
この表で分かるとおり、社内で手放せないのは「何を書くか」と「中身が正しいか」の2つです。書く作業そのものは外に頼むことも、生成AIに下書きを任せることもできます。外に頼む場合の業務の範囲や選び方はオウンドメディア運用代行の記事で整理しています。
生成AIを使うときは、Googleのスパムに関する方針を一度読んでおくと安心です。Googleは、読む人の役に立つことより検索順位を動かすことを主な目的として大量のページを作ることを「大量生成されたコンテンツの不正使用」と呼び、作り方は問わないとしています。その例として、生成AIなどの道具を使って、読む人にとっての価値を足さずに大量のページを作ることが挙げられています[4]。AIを使うこと自体が問題なのではなく、自社の経験や確かめた事実が入っているかどうかが分かれ目になります。AIで記事を回すときの続け方と止め方は、ブログ記事のAI自動運用の記事で紹介しています。
続けるための工夫としては、毎月の作業を決まった日に固定し、テーマの候補を常に10本ほどためておくことが挙げられます。書く人が忙しい月でも、材料を話す30分だけ確保できれば止まりません。
費用は、社内の人の時間(材料を話す時間と確認の時間)、外に頼む場合の原稿代、サイトの維持費の3つに分けて見積もると、始める前に月々の負担をつかめます。成果を判断するのは、始める前に決めた半年後が目安です。Googleが勧めるとおり、個々の記事の変化も数週間は待ってから見ます(下の「成果の測り方」で触れます)。
Measurement
成果の測り方:3つの段階に分けて見る
オウンドメディアの成果は、アクセス数だけを見ると判断を誤りやすくなります。BtoBでは、読む人の数が少なくても、決めた読み手に届いて問い合わせにつながっていれば役目を果たしているからです。次の3つの段階に分けて見ると、どこで止まっているかが分かります。
1. 検索で見つけてもらえているか
Google Search Console(Googleが無料で出している、検索での見え方を調べる道具)の検索パフォーマンスのレポートで見ます。ここでの「表示回数(インプレッション数)」は検索結果にサイトが表示された回数、「クリック数」は検索結果からサイトがクリックされた回数、「クリック率」はクリック数を表示回数で割った値です[5]。表示回数が増えていればテーマ選びは合っていて、表示されているのにクリックが少なければ題や説明文を見直す、という使い方ができます。
2. 読んだ人が次の行動をとっているか
Googleアナリティクス4(GA4、サイトの訪問者の動きを調べる道具)では、事業の成果にとって特に大事な行動を「キーイベント」として設定できます[6]。問い合わせフォームの送信や資料のダウンロードをキーイベントにしておくと、どの記事から行動が生まれたかを追えます。
3. 商談や受注につながっているか
最後は、問い合わせの受付記録や顧客管理の道具で数えます。問い合わせのときに「何を見て連絡したか」を聞いておくと、記事が役に立ったかを確かめられます。サイトの計測は設定や閲覧の環境によって取りこぼしが出ることがあるため、件数は実際の受付記録と突き合わせておくと確実です。毎日の数字の見方はGA4とSearch Consoleのレポート自動化の記事でも紹介しています。
見るタイミングにも注意が要ります。Googleは、変更が検索結果に反映されるまでの時間は数時間のこともあれば数か月のこともあるとし、良い影響があったかは数週間待ってから確かめることを勧めています[7]。公開した翌週の数字で一喜一憂せず、月ごとの推移で判断するほうが落ち着いて続けられます。実際の立ち上げの流れは、支援先のメディアの立ち上げの記録もあわせてご覧ください。
FAQ
オウンドメディアについてよくある質問
オウンドメディアと会社のブログは何が違いますか?
会社のブログもオウンドメディアの一つです。違いが出るのは目的の決め方で、オウンドメディアとして運用する場合は、だれに読んでほしいか、読んだあとに何をしてほしいかを先に決め、それに沿ってテーマを選びます。社内のお知らせが中心のブログは、集客を目的にしたものとは分けて考えるほうが整理しやすくなります。
オウンドメディアのメリットは何ですか?
中身を自社で決められること、書いたものが残って時間とともに入口が増えること、問い合わせの前に自社の考え方を知ってもらえることが主なメリットです。一方で、成果が出るまでに時間がかかり、続ける手間が要る点はデメリットとして見ておく必要があります。
SNSのアカウントはオウンドメディアに入りますか?
自社のアカウントで自社が投稿する分は、オウンドメディアに含めて考えることが多いです。ただし、表示のされ方や決まりは各サービスが決めるため、自社サイトほど自由には扱えません。投稿はSNSで行い、詳しい内容は自社サイトの記事に置いておくと、両方を生かせます。
BtoBの会社がオウンドメディアを始めるには、まず何をすればよいですか?
まず、営業や技術の担当者に「お客様によく聞かれる質問」を10個ほど書き出してもらうことから始めます。その中から、自社が経験をもとに答えられるものを選び、1本目の記事にします。読んでほしい相手と、読んだあとにしてほしい行動もこの時点で決めておきます。
Sources
参考にした資料
- Forrester Research(Sean Corcoran)「No Media Should Stand Alone: Defining The Roles Of Owned, Earned, And Paid Media In Online Marketing」(2009年12月)
- 消費者庁「令和5年10月1日からステルスマーケティングは景品表示法違反となります。」(2026年11月確認)
- Google 検索セントラル「有用で信頼性の高い、ユーザー第一のコンテンツの作成」(2026年11月確認)
- Google 検索セントラル「Google ウェブ検索のスパムに関するポリシー」(2026年11月確認)
- Search Console ヘルプ「検索パフォーマンス レポート(検索結果): 概要と基本設定」(2026年11月確認)
- アナリティクス ヘルプ「Google アナリティクスのコンバージョンとキーイベント」(2026年11月確認)
- Google 検索セントラル「SEO スターター ガイド」(2026年11月確認)
オウンドメディアは、自社で持ち、中身を自社で決められる発信の場です。広告のようにすぐ効くものではありませんが、お客様が発注の前に調べる商材を扱うBtoBの会社では、問い合わせの前の入口として役に立ちます。少人数で続けるには、読み手と記事の先の行動を先に決め、「何を書くか」と「中身が正しいか」を社内で持ち、書く作業は外の力や生成AIも使って分担するのが現実的です。成果は検索・行動・商談の3段階に分けて、月ごとの推移で確かめます。当社では、テーマ選びから記事の作成、公開後の見直しまでを仕組みにして回すお手伝いをしています。

