事業計画書の数字の部分をエクセルで作ろうとして、無料のテンプレートを開いたものの、どの欄に何を入れればよいのか分からず手が止まる。売上を変えたら利益の欄が動かない。銀行に出す前に見直したら、合計が合っていなかった。こうした声はよく聞きます。この記事では、エクセルの事業計画書で作る6つの表と、それぞれの計算のしかたを、例の数字を使って順に説明します。最後に、無料のテンプレートを選ぶときに見る所もまとめます。文章の部分(事業の説明や強み)の書き方ではなく、数字の表の作り方に絞った記事です。
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この記事の結論
- エクセルの事業計画書は、売上計画・原価・人件費・経費・損益計画・資金計画の6つの表に分け、上から順に式でつなぎます。前提の数字を1つ変えると、利益と手元のお金まで一緒に動く形にします。
- 売上は商品ごとに「単価×数量」で積み上げ、数量は見込み客の数×成約率や、契約数の増え方と解約率から出します。
- 人件費には、会社が負担する社会保険料などの法定福利費を足します。率は割合で置き、実際の率は社会保険労務士や加入先の料率表で確かめます。
- 利益が出ていても、入金のずれや借入の元金の返済で、お金が足りなくなる月があります。損益の後に、月末の現預金まで出る資金計画を作ります。
- テンプレートは、入れる欄と計算する欄が分かれているか、売上が単価×数量で積み上がるか、資金の残高まで出るか、の3点で選びます。提出先の様式があればそちらを優先します。
エクセルの事業計画書は、表どうしがつながっていないと役に立たない
エクセルで事業計画を作るよさは、前提の数字を1つ変えると、利益や手元のお金まで一緒に動くところです。逆に言うと、表どうしが式でつながっていないテンプレートは、紙に書くのと変わりません。売上の見込みを下げたとき、利益と資金がどれだけ減るかがすぐに見えないと、計画を見直す材料になりません。
お金を借りるときに出す様式も、エクセルで配られています。日本政策金融公庫の書式のページでは、創業計画書や月別収支計画書、資金繰り表などがExcel形式で公開されています[1]。こうした様式は「何を書くか」の枠です。その枠に入れる数字をどう計算したかは、自分で用意した表で説明することになります。創業計画書の様式と、別に用意した事業計画の関係は創業計画書の書き方と記入例の記事で紹介しています。
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Overview
エクセルの事業計画書で作る6つの表
数字の計画は、次の6つの表に分けて作ると整理しやすくなります。上から順に作り、下の表は上の表の結果を式で受け取るようにします。
| 表 | 書くこと | 主な計算 |
|---|---|---|
| 売上計画 | 商品・サービスごとの売上と、その根拠 | 単価×数量。数量は見込み客の数×成約率などから出す |
| 原価 | 売上を立てるために直接かかるお金(仕入れ・外注など) | 売上×原価率 |
| 人件費 | 役員報酬・給与と、会社が負担する社会保険料など | 人数×月額×12か月+法定福利費 |
| 経費 | 家賃・広告・通信・システム利用料など | 項目ごとの金額、または売上×割合 |
| 損益計画 | 売上総利益・営業利益・経常利益・税引前利益・税金 | 売上−原価−人件費−経費 |
| 資金計画 | 借入・増資・返済と、月末に手元に残るお金 | 前月末の現預金+利益±お金の出入り |
表を分けるのは、直す場所をはっきりさせるためです。単価を変えたいときは売上計画だけ、家賃が変わったときは経費だけを直せば、損益と資金は自動で変わります。
Sales
売上計画の作り方:単価×数量と、数量の根拠
売上は「単価×数量」で、商品やサービスごとに分けて積み上げます。全部まとめて「売上1億円」と書くと、どこを変えればどうなるかが説明できません。
案件ごとに売る商品の場合
受託や機器の販売のように1件ずつ売る商品は、お客様に出会ってから契約になるまでの段階に分けて数量を出すと、根拠が説明しやすくなります。例の数字で計算すると、次のようになります。
- サイトへの来訪や展示会での接点:月2,000件
- 問い合わせ率1%:問い合わせ20件
- 商談になる率50%:商談10件
- 成約率30%:成約3件
- 平均単価50万円:売上150万円
エクセルでは、件数の行と率の行を交互に並べ、件数の行に「上の件数×率」の式を入れます。こうしておくと、「成約率が20%だったら」と1つの欄を変えるだけで売上が動きます。
毎月の利用料で売る商品の場合
月額の利用料をいただくサービスは、契約数の増え方と減り方で考えます。月末の契約数は「前月末の契約数+新規の契約数−解約数」、解約数は「前月末の契約数×解約率」で計算します。前月末40件、新規6件、解約率2%なら、解約は0.8件、月末は45.2件です。月額3万円なら、その月の売上は約135.6万円になります。解約率の行を入れておくと、新規の獲得だけでは売上が伸びにくい様子が数字で見えます。
Cost
原価と売上総利益の計算
原価は、売上を立てるために直接かかるお金です。物を売るなら仕入れ、サービスなら外注費や、売上に比例してかかる利用料などが入ります。計画の段階では「売上×原価率」で出すのが一般的です。原価率は、売上に対する原価の割合のことで、1,000円で売る品の仕入れが300円なら30%です。
原価率は商品ごとに変えられるようにしておきます。利益の出やすい商品と出にくい商品が混ざっているとき、全体を1つの率で計算すると、売れる商品の組み合わせが変わったときの利益が読めなくなるためです。
売上から原価を引いたものが売上総利益(粗利)です。売上総利益を売上で割った売上総利益率も1行足しておくと、同業の数字や過去の実績と見比べやすくなります。
People
人件費の計算:法定福利費を忘れない
人件費は、役割ごとに「人数×月額」で出し、年の計画なら12か月分にします。例えば、役員報酬が月40万円、給与が月30万円の人が2人なら、月100万円です。
見落としやすいのが、会社が負担する社会保険料などの法定福利費です。日本年金機構によると、厚生年金保険の保険料率は18.3%で、事業主と働く人が半分ずつ負担します[2]。保険料は毎月の給与そのものではなく、給与を区切りのよい額に当てはめた標準報酬月額と、賞与にかけて計算します[2]。厚生年金だけで、会社の負担はおおむね給与(正しくは標準報酬月額)の9.15%になります。これに健康保険・介護保険・雇用保険・労災保険などが加わります。健康保険の料率は都道府県や加入先で違うため、計画では「役員報酬と給与の合計×◯%」と割合を置き、実際の率は社会保険労務士や加入先の料率表で確かめるのが現実的です。上の例で割合を15%と置くと、法定福利費は月15万円、人件費の合計は月115万円です。
採用の時期も書き込みます。「2年目の4月に1人採用」と月ごとに置ける表にしておくと、人を増やした月から利益と手元のお金がどう変わるかが分かります。
Expenses
経費の書き方:決まった額と、売上に比例する額を分ける
経費は、毎月ほぼ同じ額がかかるもの(家賃・税理士などへの報酬・システム利用料)と、売上に合わせて増えるもの(決済の手数料・梱包材など)に分けて書きます。決まった額のものは項目ごとに金額を入れ、細かな費用は「売上×◯%」でまとめて見込むと、表が長くなりすぎません。
機械や高額なパソコンのような設備は、買った月にまとめて経費にせず、使える期間に分けて費用にしていきます(減価償却)。ただし国税庁の説明では、1つ10万円未満のものや、使える期間が1年未満のものは、使い始めた年にまとめて費用にできます[3]。損益の表には毎年の減価償却費を、資金の表には買った月の支払いを入れる、と分けて書くのが正しい形です。大きな設備投資がない事業なら、計画の段階では省いてもかまいません。
Profit & Loss
損益計画:利益は順に出す
損益計画では、ここまでの表の合計を受け取り、利益を次の順に計算します。
- 売上総利益:売上−原価
- 営業利益:売上総利益−人件費−経費。本業でもうかっているかを見る数字です
- 経常利益:営業利益+受取利息など−支払利息など。借入の利息はここで引きます
- 税引前利益:経常利益+特別な利益−特別な損失。設備の売却など、たまにしか起きないものです。計画では、なしとして経常利益と同じにしてかまいません
- 税引後の利益:税引前利益−法人税等
法人税の税率は、国税庁の説明では、資本金1億円以下の法人などの場合、年800万円以下の所得の部分が15%、それを超える部分が23.2%です[4]。例えば税引前利益が1,000万円なら、法人税だけで800万円×15%+200万円×23.2%=約166万円になります。実際には住民税・事業税などもかかり、赤字の繰り越しもあるため、計画では「税引前利益×◯%」という簡単な置き方にして、率は税理士に確かめるのが無難です。
損益計画は、最初の1〜2年は月ごと、その後は年ごとに見るのが一般的です。立ち上げの時期は毎月の数字の変化が大きく、年の合計だけでは、どの月に赤字が深くなるかが見えません。
Cash
資金計画:利益が出ていても、お金が足りなくなることがある
損益と手元のお金は一致しません。売上を立てても入金が翌月や翌々月になる、借入の返済は経費にならないのにお金は出ていく、といったずれがあるためです。資金計画では、月末の現預金を「前月末の現預金+その月の利益+減価償却費(お金が出ていかない費用なので足し戻す)−まだ入金されていない売上の増えた分+借入・増資−借入の元金の返済−設備の支払い」で出します。入金のずれが小さい事業なら、最初は売上の入金を1か月遅らせて置くだけでも十分です。
借入の返済額は、毎月同じ額を返す元利均等の返済なら、エクセルのPMT関数で計算できます。PMT関数は、一定の利率で定期的に支払うローンの1回あたりの支払額を出す関数で、月払いなら年利を12で割り、期間は月数で指定します[5]。例として、1,000万円を年利2%・5年で借りると、=PMT(2%/12,60,-10000000)で月の返済額は約17.5万円です。ただし、この17.5万円には利息も入っています。利息は損益計画の経常利益のところで引いているので、資金計画の「返済」には元金の分だけを入れます。元金の分はPPMT関数、利息の分はIPMT関数で分けて出せます。元金を毎月同じ額ずつ返す方式なら、元金の返済は「借入額÷返済回数」で、利息は残高に合わせて減っていきます。実際の条件は借入先によって違うので、返済予定表があればそちらの数字を入れます。
月末の現預金には「手元に残したい額」の線を引いておくと安心です。例えば「毎月出ていくお金(人件費と経費)の2か月分」と決めておき、それを割り込む月に色が付くようにすると、借入や増資をいつまでに決めるべきかが見えます。月ごとの入金と出金をもっと細かく見たいときは、資金繰り表を別に作ります。資金繰り表の項目と、銀行に出すときに見られる所は資金繰り表テンプレートと書き方の記事で説明しています。公庫の融資制度の選び方は日本政策金融公庫の創業融資制度の記事にまとめています。
Excel Tips
式が崩れにくい表にするための工夫
表の中身が正しくても、作り方が雑だと、行を足したときや数字を貼り付けたときに合計がずれます。次の点を押さえておくと、人に渡しても崩れにくくなります。
- 入れる欄と計算する欄の色を分ける:入れる欄は黄色、式の欄は灰色などと決め、式の欄に数字を上書きしてしまう事故を防ぎます。
- 前提の数字を1枚のシートに集める:税率・法定福利費の割合・計画を始める月・単位などを「前提」のシートに置き、各表はそこを参照します。率を変えるときに1か所で済みます。
- 合計は種類の名前で集める:商品を足すたびに合計の式を直すのは手間です。各行に「売上」「原価」といった種類を書いておき、SUMIF関数で種類ごとに合計すると、行を足しても合計に入ります。SUMIF関数は、条件に合うセルの値だけを合計する関数です[6]。
- 単位をそろえる:5年分を月ごとに作ると桁が大きくなるので、千円単位にするとすっきりします。ただし「円」と「千円」が混ざると計算が1,000倍ずれるので、各シートの上に単位を書きます。
- 合計に入っていないものを知らせる:原価率が空の商品や、文字が入った欄があると、合計から黙って抜けることがあります。表の下に「確かめてください」と出る式を置いておくと、見落としが減ります。
How to Choose
事業計画書テンプレートの選び方
無料のテンプレートはたくさんありますが、見るべき所は多くありません。目的に合わせて、次の表のように選びます。
| 選び方 | 向いている場面 | 気をつける所 |
|---|---|---|
| 借入先・補助金の指定の様式 | 提出先が決まっているとき | 枠に数字を書く様式なので、根拠の計算は別の表で用意する |
| 年ごとの簡単なテンプレート | 初めての計画づくり、社内での検討 | 月ごとの資金の動きは見えない |
| 月ごとで資金計画まで入ったテンプレート | 融資や出資の相談、立ち上げ期の資金の見通し | 入れる欄が多いので、前提の数字から順に埋める |
| 一から自作 | 業種に独特の数え方があるとき | 合計の式と単位の確かめに手間がかかる |
どれを選ぶにしても、①入れる欄と計算する欄が分かれているか、②売上が単価×数量で積み上がるか、③資金の残高まで出るか、の3点を開いてすぐ確かめてください。提出先の決まった様式がある場合は、そちらを優先します。
当社でも、年ごとに5年分を計算する簡易版と、60か月の月次損益に借入・増資・返済を入れて月末の現預金まで出す詳細版(千円単位)の事業計画書テンプレート(Excel)を無料で公開しています。数字の計画に検証の段取りをどう組み込むかは、AIプロダクト開発の事業計画書の記事で紹介しています。
FAQ
よくある質問
事業計画書のテンプレートは、無料のものでも金融機関に出せますか?
中身の数字に根拠があれば、無料のテンプレートで作った表を添えることはできます。ただし、借入先や補助金の窓口が様式を決めている場合は、その様式に書き写して出すのが基本です。出す前に、相手の指定の様式があるかを確かめてください。
収支計画は何年分をエクセルで作ればよいですか?
提出先の求めによって変わります。立ち上げの段階では、最初の1〜2年を月ごと、その後を年ごとにして、3〜5年分を作る形がよく使われます。お金が一番少なくなる月を見つけるには、月ごとの表が必要です。
損益計画と資金計画(資金繰り)は、どちらを先に作りますか?
損益計画が先です。売上・原価・人件費・経費から利益を出し、その結果に借入・返済・入金のずれを加えて資金計画を作ります。順番を逆にすると、利益とお金の数字が食い違ったときに原因を探しにくくなります。
事業計画の数字づくりを相談することはできますか?
新規事業の立ち上げのご支援では、計画書を作り込む前に、欲しい人がいるかを小さく試して確かめるところから一緒に進めています。確かめた結果は、売上の根拠として計画の数字に使えます。税金や社会保険の率の確定は、税理士・社会保険労務士にご確認ください。
Sources
参考にした資料
- 日本政策金融公庫「各種書式ダウンロード 小規模事業者/個人事業主の方【国民生活事業】」(2026年11月1日確認)
- 日本年金機構「厚生年金保険の保険料」(2026年11月1日確認)
- 国税庁「No.5403 少額の減価償却資産になるかどうかの判定の例示」(令和8年4月1日現在法令等)
- 国税庁「No.5759 法人税の税率」(令和8年4月1日現在法令等)
- Microsoft サポート「PMT 関数」(2026年11月1日確認)
- Microsoft サポート「SUMIF 関数」(2026年11月1日確認)

エクセルの事業計画書は、売上計画・原価・人件費・経費・損益計画・資金計画の6つの表を、上から順に式でつなぐと使いやすくなります。売上は単価×数量とその根拠で積み上げ、人件費には法定福利費を足し、損益の後に資金の残高まで出すと、お金が足りなくなる月を前もって見つけられます。数字の置き方に迷ったら、まず前提のシートに分からない数字を書き出し、根拠を確かめられるものから埋めていくのがおすすめです。

