創業融資を申し込もうとして、日本政策金融公庫の創業計画書をダウンロードしてみたものの、欄が小さくて何をどこまで書けばよいのか分からない。記入例を見ても、自分の事業に置き換えると手が止まる。創業計画書は、多くの人がつまずく書類です。この記事では、公庫の創業計画書の書き方を、公庫が公開している様式と記入例にそって項目ごとに整理します。そのうえで、この記事でいちばん伝えたいことを書きます。公庫の様式の創業計画書だけでは、事業の中身を伝えるには足りないことが多い、ということです。当社がある支援先(サービス業)の創業融資で、様式とは別に何を用意したのかも紹介します。
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創業計画書は、面談の前に事業を知ってもらうための書類
日本政策金融公庫の書式ダウンロードのページでは、創業計画書を「新たに事業を始める方に事業計画等をご記入いただくもの」と説明しています。同じページには、洋風居酒屋、美容業、ソフトウェア開発業、介護サービスなど業種別の記入例と、月別の詳しい収支計画を作る場合に使う「月別収支計画書」とその記入例も並んでいます[1]。
創業計画書の様式そのものには、使い方についての大事な一文があります。様式の冒頭には「この書類は、ご面談にかかる時間を短縮するために利用させていただきます」とあり、「この書類に代えて、お客さまご自身が作成された計画書をご提出いただいても結構です」とも書かれています。さらに様式の最後には、「これまでのご経験や事業内容の詳細が分かる計画書など、参考となる資料がございましたら、併せてご提出ください」とあります[2]。
つまり、公庫の様式は必ずその枠の中だけで書き切らなければならない書類ではありません。様式は面談の入口であり、事業の中身を詳しく伝える資料を別に添えることは、公庫自身が案内しています。
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How to write
様式の項目ごとの書き方
公庫の創業計画書の様式は、大きく10の項目に分かれています[2]。ここでは、様式に書かれている問いかけにそって、何を書けばよいかを整理します。
- 創業の動機:様式では「どのような目的、動機からですか」と聞いています。なぜこの事業なのか、なぜ今なのかを、自分の経験と結び付けて書きます。
- 経営者の略歴等:様式には「勤務先名だけではなく、担当業務や役職、身につけた技能等についても記載してください」とあります[2]。どんな仕事で、何ができるようになったのかを、事業に関係するものから書きます。
- 取扱商品・サービス:商品やサービスの内容、売上に占める割合、セールスポイント、販売ターゲットと集客の方法、競合や市場の状況を書きます。
- 従業員:3か月以上続けて雇う予定の人数を書きます。
- 取引先・取引関係等:販売先、仕入先、外注先と、代金を回収・支払う条件を書きます。
- 関連企業:経営している会社があれば書きます。
- お借入の状況:事業、住宅、車などの借入の残高と年間の返済額を書きます。
- 必要な資金と調達方法:設備資金と運転資金の内訳と、自己資金、借入などの調達方法を、合計が一致するように書きます。
- 事業の見通し(月平均):創業当初と、1年後または軌道に乗った後の売上高、売上原価、経費と、その根拠を書きます。
- 自由記述欄:アピールポイント、事業を行ううえでの悩み、希望するアドバイスなどを書きます。
業種ごとの書きぶりは、公庫が公開している記入例が参考になります[1]。ただし、記入例は欄の埋め方の見本であって、自分の事業の説明を代わりに書いてくれるものではありません。特に「事業の見通し」の欄は、数字を書く欄が少なく、根拠を書く余白も限られています。
Pitfalls
様式の欄でつまずきやすい所
様式を埋めるときに、手が止まりやすい欄と、その考え方を挙げておきます。
「経営者の略歴等」が職歴の羅列になる。勤務先と在籍期間だけを並べても、事業に生きる経験は伝わりません。様式の案内どおり、担当した業務、役職、身につけた技能を書き、今回の事業のどこに生きるのかがつながるようにします。
「取扱商品・サービス」が売りたいものの説明だけになる。同じ欄に、販売ターゲットと集客の方法、競合や市場の状況を書く枠があります。誰に、どうやって知ってもらい、ほかの選択肢と比べてなぜ選ばれるのかまで書いて、はじめて商品の説明が事業の説明になります。
「必要な資金と調達方法」の合計が合わない。使い道の合計と、調達方法の合計は同じ金額になります。設備資金は見積書の金額と合わせ、運転資金は何か月分を見込んだのかを説明できるようにしておきます。
「事業の見通し」に根拠が書かれていない。売上高、原価、経費の数字だけでなく、それを計算した根拠を書く欄があります。客単価と客数、単価と件数など、掛け算で説明できる形にしておくと、面談で聞かれたときにも答えやすくなります。
Why more
様式だけでは足りないと考える理由
公庫は、新規開業・スタートアップ支援資金を使える方について、「新たに営もうとする事業について、適正な事業計画を策定しており、当該計画を遂行する能力が十分あると認められる方」に限るとし、創業計画書の提出などを受けて事業計画の内容を確認する、としています。あわせて、審査の結果、希望に沿えないことがある、とも明記しています[3]。
手続きの流れのページでは、面談で資金の使い道や事業計画などについて話を聞き、面談の際には事業計画に関連する資料や、資産・負債が分かる書類などを準備してもらう、と案内しています。そのうえで、事業計画などをさまざまな角度から検討して融資を判断する、としています[4]。
事業計画の中身が確かめられる以上、計画の根拠を伝える材料は多いほうが、面談で話がかみ合いやすくなります。参考に、公庫の総合研究所が公庫から融資を受けた開業1年以内の企業に聞いた「2025年度新規開業実態調査」(回答2,165社。この設問の回答は2,024社)を見ると、開業前に予想していた月商に対する今の月商の割合(予想月商達成率)は、「100〜125%未満」が24.5%、「125%以上」が34.2%で、予想月商を達成しているのは約6割でした[5]。裏を返せば、残りの約4割は予想に届いていません。計画の数字そのものより、その数字が何に支えられているのか、届かなかったときにどうするのかを説明できることが大切になります。
事業計画や説明資料をどう組み立てるかを、立ち上げの進め方とあわせて相談したい場合は、スタートアップ支援の内容をご覧ください。
スタートアップ支援の内容を見るCase
ある支援先で、様式とは別に用意した2つの資料
ここからは当社の記録です。当社では、ある支援先(サービス業)の創業融資で、公庫が決めた様式の創業計画書だけでは足りないと考え、事業説明と事業計画を別に用意しました。
- 事業説明:ピッチ資料のような形で、10枚ほど。
- 事業計画:サービスや品目ごとに売上が伸びていく計画とKPI(目標の数字)、経費や人件費などを細かく書いたもの。
中身と枚数は、事業によって変わります。支援した範囲や期間、結果を含めたこの事例の記録は、創業融資の支援で何をどこまで手伝ったかの記事で紹介しています。
Comparison
様式と、別に用意する資料の役割の違い
公庫の様式と、別に用意する資料は、役割を分けて考えると作りやすくなります。
| 資料 | 役割 | 書くこと |
|---|---|---|
| 創業計画書(公庫の様式) | 面談の入口。必要な情報を決まった形でそろえる | 動機、略歴、商品・サービス、取引先、必要な資金と調達方法、事業の見通しなど10項目 |
| 月別収支計画書(公庫の様式) | 月ごとの収支を示す | 月別の詳しい収支計画を作る場合に使う[1] |
| 事業説明(別に用意) | 事業の全体像を短く伝える | 当社の記録では、ピッチ資料のような形で10枚ほど |
| 事業計画(別に用意) | 売上と費用の根拠を細かく示す | 当社の記録では、サービスや品目ごとの売上の伸び方とKPI、経費、人件費など |
| スタートアップの支援会社に相談する(当社など) | 事業の説明資料や計画の組み立てを、立ち上げの進め方とあわせて考える | 事業の中身と数字を決め、面談で説明するのは経営者自身 |
Plan
別に用意する事業計画を作るときの考え方
ここからは一般的な考え方です。様式の「事業の見通し」の欄は、創業当初と軌道に乗った後の数字を書く形です[2]。別に用意する事業計画では、その間をつなぐ道筋を見せます。
- 売上を、サービスや品目ごとに分ける:「全体で月◯万円」ではなく、何がいくつ売れて、いくらになるのかに分けると、数字の根拠を説明しやすくなります。
- 売上が伸びていく理由を、KPIで示す:問い合わせの件数、契約の件数、1件あたりの単価など、売上を分解した数字に目標を置きます。
- 費用は、経費と人件費を細かく書く:家賃、広告、外注、人を雇う時期と人数など、いつ何にお金が出ていくのかを書きます。
- 様式の数字と食い違わないようにする:別資料の数字と、様式の「必要な資金と調達方法」「事業の見通し」の数字がずれていると、かえって信頼を損ねます。
また、事業計画には、計画どおりにいかなかった場合の考えも一行添えておくと安心です。売上の立ち上がりが遅れたとき、どの費用を抑えるのか、手元の資金で何か月持ちこたえられるのかを示しておけば、数字が楽観的すぎないかを確かめる材料にもなります。
自己資金の考え方も見ておきます。公庫の「創業の手引」は、資金調達の総額に占める自己資金の割合の平均を22.9%(2025年度新規開業実態調査)と紹介し、自己資金の割合が高いほど借入の割合は低くなり、余裕を持った資金繰りができる、としています[6]。ただし、これは平均であって、条件ではありません。
別に用意した資料は、提出して終わりではありません。面談では、資料の数字や前提について質問されることがあります。自分で作った資料であれば、どの数字をどう置いたのかを自分の言葉で説明できるはずです。支援を受けて作る場合も、最後は経営者自身が中身を説明できる状態にしておくことが大切です。
創業融資の制度全体の流れや、公庫の融資制度の選び方は、日本政策金融公庫の創業融資制度の記事で詳しく紹介しています。
Sources
参考にした資料
FAQ
創業計画書についてよくある質問
公庫の様式を使わず、自分で作った計画書を出してもよいですか?
公庫の創業計画書の様式には、「この書類に代えて、お客さまご自身が作成された計画書をご提出いただいても結構です」と書かれています。様式に加えて、経験や事業内容の詳細が分かる資料を添えることも案内されています。
記入例をそのまま真似すれば大丈夫ですか?
記入例は欄の埋め方の見本です。自分の事業の数字と根拠は、自分で書く必要があります。特に事業の見通しは、数字が何に支えられているのかを説明できるようにしておきます。
別に用意する資料は、何枚くらい必要ですか?
決まりはありません。本文の支援先では事業説明を10枚ほどにしましたが、中身と枚数は事業によって変わります。様式の数字と食い違わないことのほうが大事です。
資料をしっかり作れば、融資は受けられますか?
約束はできません。公庫は、事業計画などをさまざまな角度から検討して融資を判断し、審査の結果、希望に沿えないことがあると明記しています。資料は、事業の中身を正しく伝えるためのものです。

創業計画書は、公庫の様式にそって10の項目を埋めれば形になります。ただ、様式は面談の入口であり、事業の中身と数字の根拠を伝えるには、別に資料を用意したほうが話がかみ合いやすくなります。当社の記録では、ピッチ資料のような事業説明と、サービスや品目ごとの売上の計画・KPI・経費・人件費を細かく書いた事業計画を用意しました。事業計画や説明資料をどう組み立てるかを、立ち上げの進め方とあわせて相談したい場合は、当社のスタートアップ支援で、いまの事業の段階で足りないところから、毎月ふり返りながら続けて一緒に進められます。

