会社を立ち上げるときの資金を、日本政策金融公庫の創業融資で用意したい。けれど、計画書の書き方も、面談で何を聞かれるのかも分からず、誰かに手伝ってほしい。そう考えて「創業融資 支援」と調べる経営者は多いはずです。ただ、支援といっても、書類の添削だけのこともあれば、準備から公庫とのやりとりまで一緒に進めることもあります。この記事では、公庫の手続きの流れにそって、どの段階で何を手伝ってもらえるのかを整理し、当社がある支援先(サービス業)の創業融資を、計画書づくりから面談の準備、公庫とのやりとりまで支援した記録を紹介します。
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開業した人の半分以上が、資金の調達に苦労している
まず、事業を始めた人が資金でどれくらい苦労しているのかを見ておきます。日本政策金融公庫の総合研究所が、公庫から融資を受けた開業1年以内の企業に聞いた「2025年度新規開業実態調査」(回答2,165社。この設問の回答は2,091社)では、開業時に苦労したこととして「資金繰り、資金調達」を挙げた人が56.9%で、最も多い答えでした[1]。
同じ調査で、開業時に集めた資金は平均1,219万円でした(この図表には回答数の記載がありません)。その内訳は、「金融機関等からの借り入れ」が平均827万円(67.9%)、「自己資金」が平均279万円(22.9%)で、この2つで全体の9割を超えています[1]。開業の資金の多くは、自分のお金と借りたお金でまかなわれているということです。
借りるための準備に慣れている人は多くありません。会社勤めの経験が長くても、自分の事業の計画を、お金を貸す側に説明するのは初めて、という人がほとんどです。創業融資の支援が求められるのは、この「初めて」の部分です。
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Basics
融資と出資は、別の集め方
資金を集める方法には、大きく融資と出資があります。経済産業省の「スタートアップの成長に向けたファイナンスに関するガイダンス」は、融資(デットファイナンス)を借入などで負債として資金を集める方法で原則として返済期限があるもの、出資(エクイティファイナンス)を株式を発行して資金を集める方法で返済が無く、株主が会社の所有者となって原則として議決権を持つもの、と説明しています[2]。創業融資は前者、つまり借りて返すお金です。投資家から出資を受ける資金調達とは、準備する書類も、相手が見るところも違います。
公庫の創業融資の代表的な制度である「新規開業・スタートアップ支援資金」は、新たに事業を始める方や事業を始めておおむね7年以内の方が対象で、融資限度額は7,200万円、返済期間は設備資金が20年以内、運転資金が10年以内(いずれも据置期間5年以内を含む)とされています。あわせて、審査の結果、希望に沿えないことがある、とも明記されています[3]。
Flow
公庫の手続きの流れと、手伝える所
公庫の「お手続きの流れ(創業予定の方)」のページでは、創業融資の手続きを次のように案内しています[4]。
- 相談・申込:申込前の相談は、オンラインや支店の窓口で、予約して受けられます。申込はインターネットで受け付けています。
- 書類の準備:創業計画書、設備資金を申し込む場合の見積書、法人の場合の登記簿謄本(履歴事項全部証明書)、本人確認の書類、許認可が必要な事業の場合の許認可証などを準備します。
- 面談:資金の使い道や事業計画などについて話を聞かれます。面談には、事業計画に関連する資料や、資産・負債が分かる書類などを準備します。オンラインの面談も受け付けています。
- 予定地の訪問・審査:店舗や事業所の予定地を訪ね、事業計画などをさまざまな角度から検討して、融資を判断します。
- 契約・送金:融資が決まったあと、契約の手続きを行い、融資金が口座に送金されます。
このうち、外の支援者が手伝えるのは、主に「書類の準備」と「面談の準備」、そして手続き中の公庫とのやりとりを整理することです。融資を判断するのは公庫で、面談で事業を説明するのは経営者自身です。この線引きを最初に確かめておくと、支援に何を期待すればよいかがはっきりします。
事業計画や説明資料をどう組み立てるかを、立ち上げの進め方とあわせて相談したい場合は、スタートアップ支援の内容をご覧ください。
スタートアップ支援の内容を見るCase
ある支援先で、何をどこまで手伝ったか
ここからは当社の記録です。当社では、ある支援先(サービス業)の創業融資を支援しました。
支援した範囲は、次のすべてです。
- 創業計画書づくり
- 面談の準備
- 日本政策金融公庫とのやりとり
また、公庫の様式の創業計画書とは別に、2つの資料を用意しました。1つは、ピッチ資料のような事業説明(10枚ほど)です。もう1つは、サービスや品目ごとの売上の計画・KPI(目標の数字)・経費・人件費を細かく書いた事業計画です。
最初の面談の申し込みから、約1〜2か月で進みました。あとから、公庫から確認の電話がありました。
結果として、資本金約300万円の会社で、約1,000万円の融資を受けられました。ただし、融資の判断は公庫が事業ごとに行うもので、同じように準備すれば同じ結果になるわけではありません。
Documents
様式とは別に資料を用意する理由
公庫の創業計画書の様式は、冒頭で「この書類は、ご面談にかかる時間を短縮するために利用させていただきます」としたうえで、「この書類に代えて、お客さまご自身が作成された計画書をご提出いただいても結構です」と書いています。様式の最後には、経験や事業内容の詳細が分かる計画書などの参考資料があれば、あわせて出すよう案内しています[5]。
様式は10の項目に分かれていて、限られた欄に必要な情報をそろえる形です[5]。事業の全体像や、売上がどう伸びていくのかの根拠までは、欄の中に書き切れないことが多くあります。一般に、別に用意する資料は次のような役割を持ちます。
- 事業説明:誰の、どんな困りごとを、どう解くのか。事業の全体像を短く伝え、面談の話の土台にします。
- 事業計画:売上を、サービスや品目ごとに分け、KPIで伸び方の根拠を示します。経費や人件費も、いつ何にお金が出ていくのかが分かるように書きます。
資料を作ったあとは、様式の数字と別資料の数字が食い違っていないかを必ず確かめます。数字がずれていると、かえって説明に時間がかかります。
Interview
面談の準備で確かめておくこと
ここからは一般的な準備です。公庫は、面談で資金の使い道や事業計画などについて話を聞くとしています[4]。面談の前には、次の問いに自分の言葉で答えられるかを確かめておきます。
- なぜこの事業を始めるのか。これまでの経験のどこが生きるのか。
- 最初のお客様は誰で、どうやって見つけるのか。
- 借りたお金を、何に、いくら、いつ使うのか。
- 売上の見込みは、どんな数字の掛け算で出しているのか。
- 計画どおりに売上が立たなかったとき、どう手当てするのか。
支援者と一緒に準備する場合は、想定される質問を出してもらい、答えを口に出して練習しておくと、当日に慌てずに済みます。資料に書いてあることを読み上げるのではなく、資料を指しながら自分で説明できる状態が目安です。
あわせて、資産や負債が分かる書類など、面談に持っていく資料の一覧を作っておきます[4]。何を出したかを控えておけば、あとから確認が入ったときにも、同じ資料を見ながら答えられます。
Mistakes
創業融資の準備で起こりやすい行き違い
出資を受けるときの資料をそのまま使う。投資家向けの資料は、大きく成長できるかを伝えるために作られています。融資では、返済できるかどうかが見られるので、資金の使い道と、手堅い売上の見込みを厚く書きます。
自己資金の説明を後回しにする。様式には、必要な資金と調達方法を書く欄があり、自己資金も調達方法のひとつとして書きます[5]。どうやって準備したお金なのかを説明できるようにしておきます。
Comparison
創業融資の準備を、誰と進めるか
創業融資の準備は、ひとりで進めることも、外の力を借りることもできます。それぞれの特徴を並べます。
| 進め方 | 向いている場合 | 気をつけること |
|---|---|---|
| 自分で準備する | 事業計画を作った経験があり、数字にも慣れている | 説明が自分の目線だけになりやすい。第三者に読んでもらう機会を作る |
| 公庫の創業サポートデスクに相談する | 制度や手続き、計画書の立て方を確かめたい | 全国の支店の窓口で、専任の担当者が創業計画書の立て方や申込の流れに答えてくれる[6]。計画の中身を考えるのは自分自身 |
| 税理士など認定経営革新等支援機関の助言を受ける | 会計や税務とあわせて相談したい | 公庫は、一定の要件のもとでこうした支援機関の指導・助言を受けている方を特別利率の対象のひとつに挙げている[3] |
| スタートアップの支援会社に相談する(当社など) | 事業の説明資料や計画の組み立てを、立ち上げの進め方とあわせて考えたい | 融資を判断するのは公庫、面談で説明するのは経営者自身。支援会社が結果を約束することはできない |
Checklist
支援を頼む前に確かめておくこと
ここからは一般的な注意点です。創業融資の支援を頼むときは、次のことを先に確かめておくと、あとで食い違いが起きにくくなります。
- どこまで手伝ってもらえるのか:計画書の添削だけなのか、資料づくりから面談の準備、公庫とのやりとりまでなのか。範囲を言葉にしてもらいます。
- 面談は自分で説明できる状態になるか:資料を作ってもらっても、面談で質問に答えるのは経営者自身です。資料の数字の置き方を、自分の言葉で説明できるところまで一緒に詰めます。
- 結果を約束していないか:融資を判断するのは公庫で、審査の結果、希望に沿えないことがあると公庫自身が明記しています[3]。「必ず借りられる」と言い切る支援には注意が必要です。
- あとからの確認に備えられるか:申込のあとに、公庫から内容の確認が入ることがあります。提出した資料の控えと、数字の根拠をすぐに出せるようにしておきます。
公庫の創業融資の制度の種類や選び方は、日本政策金融公庫の創業融資制度の記事でも紹介しています。
Sources
参考にした資料
FAQ
創業融資の支援についてよくある質問
創業融資の準備には、どのくらいの期間がかかりますか?
事業や準備の状況によって変わります。本文の支援先では、最初の面談の申し込みから約1〜2か月で進みました。
面談のあとに、公庫から連絡が来ることはありますか?
あります。本文の支援先でも、あとから公庫から確認の電話がありました。提出した資料の控えと、数字の根拠をすぐに確かめられるようにしておくと落ち着いて対応できます。
融資と、投資家からの出資は、どちらがよいですか?
どちらが良いかは事業によります。融資は返済が必要で、出資は返済が無い代わりに会社の一部を投資家に持ってもらいます。準備する書類や相手が見るところも違うので、何にいつお金が要るのかを先に整理します。
支援を頼めば、融資は受けられますか?
約束はできません。融資を判断するのは公庫で、審査の結果、希望に沿えないことがあると公庫自身が明記しています。支援は、事業の中身を正しく伝えるための準備を一緒に進めるものです。

創業融資の支援といっても、書類の添削だけのものから、計画書づくり、面談の準備、公庫とのやりとりまで一緒に進めるものまで幅があります。頼む前に範囲を確かめ、面談では自分で説明できる状態にしておくことが大切です。当社の記録では、公庫の様式とは別に事業説明と事業計画を用意し、最初の面談の申し込みから約1〜2か月で進みました。事業計画や説明資料をどう組み立てるかを、立ち上げの進め方とあわせて相談したい場合は、当社のスタートアップ支援で、いまの事業の段階で足りないところから、毎月ふり返りながら続けて一緒に進められます。

