外の会社にスタートアップの立ち上げを手伝ってもらおうと考えたとき、いちばん知りたいのは「実際にどんな仕事を、どこまでやってもらえるのか」ではないでしょうか。サービスの説明を読んでも、具体的な場面が浮かばないと、頼むかどうかは決めにくいものです。この記事は、当社がスタートアップの立ち上げを支援した事例の記録を、段階ごとにまとめた一覧です。それぞれの記録で何を決め、どこでつまずいたのかを短く紹介し、詳しい記録へのリンクを付けています。自社の今の段階に近いところから読んでみてください。
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立ち上げで苦労が集まりやすい所
日本政策金融公庫の総合研究所の「2025年度新規開業実態調査」(回答2,165社。この設問の回答は2,091社)では、開業時に苦労したこととして「資金繰り、資金調達」が56.9%、「顧客・販路の開拓」が49.9%でした[1]。同じ総合研究所の「2025年度起業と起業意識に関する調査」では、起業に関心はあるがまだ起業していない人(回答523人)のうち、「ビジネスのアイデアが思いつかない」と答えた人が29.0%いました[2]。
立ち上げの悩みは、アイデアを固めることや、お客様を見つけること、資金を用意することに集まりやすいようです。以下では、アイデアを確かめる段階から資金を用意する段階までの記録を、5つの節に分けて紹介します。
🛠 この記事のような起業の準備の課題は、ご相談ください。アイデアの整理から、開発、集客、資金の準備まで一緒に進めます(相談は無料)。
Services
記録の並べ方について
記録は、当社のスタートアップ支援の4つの柱(アイデアの検証、プロダクト開発、集客と営業の仕組みづくり、ピッチ資料と投資家探し)の順に並べ、最後に、金融機関から借りる「融資の準備」の記録を別の節として置きました。それぞれの柱で当社がお手伝いできることは、スタートアップ支援のページにまとめています。
なお、出資を受ける話と、借りて返す融資の話は、相手も準備する資料も違います。この記事でも、2つを別の節に分けています。
Validate
アイデアの検証の記録
アイデアの検証では、作る前に「誰に、何を、どのように」を言葉にしていきます。中小機構のJ-Net21も、商品の考え方をこの3つの要素で整理しています[3]。
新規事業の壁打ち:この記録では、支援先とアイデアの壁打ちから一緒に進め、ターゲットの選び方、そのターゲットのニーズの仮説、それに合わせたプロダクトの作り方の3つを一緒に考えました。記事では、壁打ちで投げる問いのリストや、壁打ちの相手の選び方も整理しています。詳しくは新規事業の壁打ちの記録をご覧ください。
Build
プロダクト開発の記録
検証で手応えがあったら、まず必要な機能だけで最初の版を作ります。お客様に価値を確かめてもらえる最小限の製品を、MVPと呼びます。
MVP開発:この記録では、支援先のMVPを準委任契約で作りました。最初に要件定義書をまとめ、機能15本・画面14本、作る順番を段階0から4に分けています。最初は画面から設計して手戻りが続いたため、「データの項目を先に決め、画面はその配置図にする」順番に変えました。支援先からの修正の依頼5件には一つずつ答え、今回入れるものを2件に絞っています。詳しくはMVP開発の意味と進め方の記事をご覧ください。
お客様に試してもらって直す:この記録では、支援先にサービスを試してもらうとき、10の手順に沿って30〜40分で一通り触れる案内を渡しました。渡す前には全部の画面を「動くか」「言葉が分かるか」「間違った入力をはじくか」の3つで確かめています。約2週間後に返ってきた指摘には、翌日「質問で返さずに、こう直すと言い切る」形で答え、その日のうちに全部を直して本番に反映しました。詳しくはお試しの渡し方と、指摘への答え方の記録をご覧ください。
ものづくりの試作と工場探し:この記録では、支援先のものづくり製品の工場探しと試作を支援しました。断られ続けた時期の理由は、専門外の工場に当たっていたことと図面が無かったことで、同じ仕組みの製品を本業で作っている工場に絞って、組める相手が見つかりました。工場への注文では、数の書き方が2通りに読めて合計がずれたことがあり、数を「変更後の総数」で書くようにしています。試作を通して仕様が決まり、次の段階へ進みました。詳しくはスタートアップのものづくりの記録をご覧ください。
工場に頼むときは、設計をどちらが持つかで相手の選び方が変わります。ジェトロは、委託する側が図面まで渡すOEMと、受託する側が設計から行うODMの違いを説明しています[4]。
自社の今の段階に近い記録があれば、その段階のご相談から始められます。
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集客と営業の仕組みづくりの記録
プロダクトができても、見込みのお客様に見つけてもらえなければ使われません。ここでは、会社のメディアを立ち上げた記録と、メディアから連絡先をいただく仕組みを作った記録を紹介します。
会社のメディアの立ち上げ:この記録では、支援先(立ち上げ期のスタートアップ)のメディアを、立ち上げから担当しました。最初に読み手・テーマの分類・狙う言葉・費用・リスクをまとめた設計書を作り、役割を分けた8つのAIが順に作業する仕組みで記事を作っています。この支援先のメディアは、立ち上げから3か月で3万PV(ページの表示回数)に届きました。詳しくはオウンドメディアの立ち上げの記録をご覧ください。
メディアからのリード獲得:この記録では、支援先のメディアで、記事の続きを隠して資料にする方法は選ばず、読み手が実務でそのまま使える書式を無料で配る方法にしました。フォームで聞くのは会社名・氏名・メールアドレスの3つだけです。しばらくはリード(連絡先をいただいた見込みのお客様)が来ませんでした。来る読者が、想定していた会社の担当者と違っていたためです。そこで、会社の担当者が使う書式と、そこへの導線を増やして対象を合わせ直し、その後、月20件超のリードが届くようになりました。詳しくはBtoBのリード獲得の記録をご覧ください。
Raise
ピッチ資料と投資家探しの記録
この節は出資の話です。出資は株式を発行して集める返済の無いお金で、借りて返す融資とは性質が違います[5]。
ピッチ資料:この記録では、支援先の投資家向けの説明資料(ピッチ資料)を、構成から全部一緒に作りました。強調するポイント、投資家(VC)が見るポイント、入れたほうがいい項目の3つを、7〜8回やりとりして磨いています。当社の代表は3社の起業と2社の売却を経験しており、資金を集める側として資料を作ってきました。詳しくはピッチ資料の作り方の記録をご覧ください。
VCのリスト:この記録では、支援先の資金調達の支援で、今の段階に合うVC(スタートアップに出資する投資会社)をAIを使って集め、当社の知見で順位を付けて、面談を申し込む順番を決めました。資金調達は進めている途中なので、記事では手順だけを紹介しています。詳しくはVCのリストの作り方の記録をご覧ください。
VCが出資する段階には偏りがあり、VECの調査で段階別の内訳に答えた110社の集計では、2026年4〜6月の国内向けの投資件数のうち「アーリー」が122件(38.7%)で最も多くなっています[6]。
Loan
融資の準備の記録
ここからは、出資ではなく、借りて返すお金の話です。創業融資の支援の記録を3本紹介します。融資の判断は公庫が行い、審査の結果、希望に沿えないことがあると公庫自身が明記しています[7]。どの記録も、同じ準備をすれば同じ結果になると約束するものではありません。
創業融資の支援の全体:この記録では、創業計画書づくり、面談の準備、日本政策金融公庫とのやりとりのすべてを支援しました。最初の面談の申し込みから約1〜2か月で進み、資本金約300万円の会社で、約1,000万円の融資を受けられました。詳しくは創業融資の支援で何をどこまで手伝ったかの記録をご覧ください。
創業計画書:この記録では、公庫が決めた様式の創業計画書だけでは足りないと考え、ピッチ資料のような事業説明(10枚ほど)と、サービスや品目ごとの売上の計画・KPI・経費・人件費を細かく書いた事業計画を別に用意しました。記事では、様式の項目ごとの書き方も整理しています。詳しくは創業計画書の書き方と記入例の記事をご覧ください。
面談と自己資金:この記録では、面談で聞かれたのは、事業の内容、事業計画、強み、経営者の経歴の4つでした。面談のあとには、公庫から確認の電話がありました。この例では、融資額は資本金の約3倍でした。記事では、自己資金の考え方も公庫の資料をもとに整理しています。詳しくは創業融資の面談の準備の記事をご覧ください。
Map
段階ごとの記録の一覧
ここまでの記録を、段階ごとに一覧にします。いまの自社の段階に近い行から読むと、次に何を決めればよいかが見えやすくなります。
| 段階 | 決めること | 記録 |
|---|---|---|
| アイデアの検証 | 誰に、何を、どのように | 新規事業の壁打ち |
| プロダクト開発 | 最初の版で何を作り、何を作らないか | MVP開発 |
| プロダクト開発 | お客様に何を見てもらい、指摘にどう答えるか | お試しの渡し方と指摘への答え方 |
| プロダクト開発(ものづくり) | どの工場に、どう頼むか。試作で仕様を決める | 工場探しと試作 |
| 集客の仕組み | 読み手、テーマ、狙う言葉、記事を作る仕組み | オウンドメディアの立ち上げ |
| 集客の仕組み | 連絡先をいただく方法と、フォームの項目 | BtoBのリード獲得 |
| 出資の準備 | 強調するポイント、投資家が見るポイント、入れる項目 | ピッチ資料 |
| 出資の準備 | 段階に合う投資家と、当たる順番 | VCのリスト |
| 融資の準備 | 支援の範囲と期間 | 創業融資の支援 |
| 融資の準備 | 様式とは別に用意する資料 | 創業計画書 |
| 融資の準備 | 面談で聞かれることと自己資金 | 創業融資の面談 |
Common
記録に共通していること
段階は違っても、記録を並べると似たことが見えてきます。
作る前に、決めることを並べる。壁打ちではターゲット・ニーズの仮説・作り方の3つを一緒に考え、MVP開発では要件定義書を、メディアの立ち上げでは設計書を、最初に作っています。一般に、決めたことを書き残しておくと、あとで見直すときの足場になります。
つまずいたら、順番か対象を見直す。MVP開発では設計の順番を変え、リード獲得では想定した相手に合わせて書式と導線を増やし、工場探しでは当たる工場を絞り直しました。つまずきは、何かを変えるきっかけとして記録に残っています。
相手が読み違えない形で伝える。お試しの指摘には言い切りの形で答え、工場への注文では数を「変更後の総数」で書くようにしました。創業融資では、公庫の様式の創業計画書だけでは足りないと考え、事業説明と事業計画を別に用意しました。
Reading
記録を読むときの注意
ここで紹介した数字は、どれもその記録の中の1つの例です。メディアのページの表示回数も、リードの件数も、融資の金額も、事業の分野や時期、準備の状況によって変わります。数字そのものより、その数字に届くまでに何を決め、どこでつまずき、どう直したのかを読んでいただくと、自社に置き換えやすくなります。
また、記録の中には、まだ進めている途中のものもあります。VCのリストの記録は、資金調達の結果ではなく、手順だけを書いています。
Sources
参考にした資料
- 日本政策金融公庫 総合研究所「2025年度新規開業実態調査」(2025年12月)
- 日本政策金融公庫 総合研究所「2025年度起業と起業意識に関する調査」(2026年2月)
- 中小企業基盤整備機構 J-Net21「第3ステップ:商品コンセプトを構築する」(2026年10月閲覧)
- ジェトロ 貿易・投資相談Q&A「OEM生産とODM生産の違い」(2026年10月閲覧)
- 経済産業省「スタートアップの成長に向けたファイナンスに関するガイダンス」(2022年4月)
- ベンチャーエンタープライズセンター「直近四半期 投資動向調査 2026年第2四半期」(2026年9月)
- 日本政策金融公庫「新規開業・スタートアップ支援資金」(2026年10月閲覧)
FAQ
支援の事例についてよくある質問
どの記録から読めばよいですか?
自社の今の段階に近い記録からがおすすめです。アイデアがまだ固まっていなければ壁打ちの記録、作るものが決まっていればMVP開発やものづくりの記録、資金の用意を考えているならピッチ資料や創業融資の記録が近いはずです。本文の一覧の表も参考にしてください。
出資を受けることと、融資を受けることは、何が違いますか?
出資は株式を発行して集めるお金で返済はありませんが、出資した人は株主として会社の一部を持ちます。融資は借りて返すお金です。準備する資料も、相手が見る所も違うので、この記事でも別の節に分けて紹介しています。
ものづくりの製品の立ち上げも、事例がありますか?
あります。工場探しと試作を支援した記録で、断られ続けた理由と、同じ仕組みの製品を本業で作っている工場に絞って組める相手を見つけたこと、試作を通して仕様が決まったことを紹介しています。
VCのリストの記録に、資金調達の結果が書かれていないのはなぜですか?
その支援先の資金調達は、いまも進めている途中だからです。記事では、段階に合うVCを集め、順位を付けて面談を申し込む順番を決めた手順だけを紹介しています。

この記事では、当社がスタートアップの立ち上げを支援した事例を、アイデアの検証から融資の準備まで、段階ごとに紹介しました。どの記録にも、何を決めたかと、どこでつまずいてどう直したかが残っています。自社の段階に近い記録があれば、そこからご相談いただけます。ご一緒する場合は、月ごとに進み具合を見ながら、次にどこまで進めるかを相談して決めていきます。

