インサイドセールス(電話やメールで見込み客と話を進め、商談につなげる営業)の代行を考えるとき、最初に迷うのが料金の比べ方です。代行会社ごとに料金の型も業務の範囲も違うので、見積の金額だけを並べても、どこが安いのかは分かりません。この記事では、料金の型ごとの向き不向き、見積で確かめること、名簿の扱いや指示の出し方で気をつける法律の決まり、そして代行に丸投げしないために自社に残しておく仕組みを整理します。
この記事の結論
- 料金は「固定」「成果報酬」「複合」の3つの型で比べます。公的な相場の統計は確認した範囲では見当たらないので、同じ業務範囲・同じ「成果」の決め方で、複数社の見積を取ります。
- 成果報酬は「成果」の決め方で中身が変わります。アポイントを取った時点か、商談が実際に行われた時点かを、契約の前に書面で決めます。
- 名簿を、利用目的の達成に必要な範囲で電話の業務を任せるために代行会社に渡す場合は、個人情報保護法の「委託」に当たり、委託した側に委託先を監督する義務があります。代行会社のスタッフに直接指示したり、責任者を通してでも作業の進め方を細かく決めて従わせたりすると、仕事を任せる契約のつもりが、人を借りる契約(派遣)とみなされるおそれがあります。
- 相手先リストの基準、話し方の型、結果の数字の3つは、委託しても自社に残します。そうしておけば、委託先を変えても積み上げたものを残しやすくなります。
料金の型は3つ:固定・成果報酬・複合
インサイドセールス代行の料金の型は、大きく次の3つに分かれます。公的な機関が公表している料金の相場の統計は、確認した範囲では見当たらず、各社の料金も業務の範囲によって大きく違います。この記事では金額の目安は書かず、型ごとの向き不向きを整理します。
| 型 | 払い方 | 向いている場面 | 気をつけること |
|---|---|---|---|
| 固定 | 月ごとに決まった額を払う | 新しい商品で商談になる割合が読めないとき、相手先が少ないとき | 成果が出なくても費用がかかる。報告の中身を先に決めておかないと、効果を確かめにくい |
| 成果報酬 | アポイントなどの成果1件ごとに払う | 商談になる割合や、1件あたりにかけてよい費用が読めるとき | 「成果」の決め方しだいで、質の低いアポイントにも費用がかかる |
| 複合 | 固定の額+成果1件ごとの額 | 最低限の稼働を確保しつつ、成果にも応じて払いたいとき | 固定部分と成果部分のそれぞれに、何が含まれるかを確かめる |
どの型が安いかは、商品の単価や、アポイントから商談・受注に進む割合で変わります。自社のこれまでの数字から、1件の商談にいくらまでかけられるかを先に出しておくと、型を選びやすくなります。
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Quote
見積で確かめる4つのこと
同じ「インサイドセールス代行」でも、どこまでを料金に含むかは会社ごとに違います。見積を並べる前に、次の4つをそろえます。
| 確かめること | 聞き方の例 |
|---|---|
| 業務の範囲 | 相手先リストの作成、話す内容(トークスクリプト)の作成と見直し、電話・メール、日程調整のうち、どこまでが料金に含まれるか |
| 「成果」の決め方 | アポイントを取った時点か、商談が実際に行われた時点か。キャンセルや、条件に合わない相手とのアポイントはどう扱うか |
| 報告の中身と頻度 | 電話をかけた数、担当者につながった数、アポイント数、商談になった数を、どの単位でいつ受け取れるか |
| 契約の期間と解約 | 最低の契約期間はあるか、途中でやめるときの条件は何か |
この4つがそろっていない見積どうしを比べると、安く見える会社が、実はリスト作成を別料金にしているだけ、ということが起きます。極端に安い見積は、業務の範囲が狭いか、「成果」の決め方がゆるい可能性があります。
Legal
名簿の扱いと指示の出し方で気をつける法律
名簿を渡すときは「委託」として監督する
自社の顧客や見込み客の名簿を代行会社に渡して電話をかけてもらう場合、個人情報保護法では、利用目的の達成に必要な範囲で個人データの取り扱いを委託することに伴う提供は、本人の同意が要る「第三者提供」には当たらないとされています(第27条第5項第1号)[1]。その代わり、委託した会社は、委託先が個人データを安全に扱うよう、必要かつ適切な監督をしなければなりません(第25条)[1]。契約書に、名簿の使い道、保管の仕方、契約が終わったときの消し方を書いておきます。そもそも個人情報は、本人の同意なしに、決めた利用目的の範囲を超えて扱えません(第18条)[1]。渡す前に、その名簿の利用目的に営業の連絡が入っているかを確かめます。
逆に、代行会社が用意する名簿を使う場合は、その名簿がどう集められたかを確かめます。本人の同意を得ずに第三者に個人データを渡す方法として「オプトアウト」の仕組みがありますが、使うには本人への通知などに加えて、個人情報保護委員会への届出が必要です[1][2]。届け出られた内容は委員会が公表しています[2]。要配慮個人情報(病歴など特に扱いに注意が要る情報)や、不正に集められた個人データ、オプトアウトで受け取った個人データは、この方法では渡せません(第27条第2項ただし書)[1]。また、第三者から個人データを受け取る会社は、相手の名前・住所と、その個人データをどう手に入れたかを確かめなければなりません(第30条)[1]。代行会社の名簿を使うときも、出どころを聞いて記録しておきます。なお、この記事の条番号は2026年11月時点で施行されている法律のものです。2026年7月17日に改正法が公布されていて、一部の規定を除き、公布から2年以内に施行されます[3]。法人リストを作るときの注意は「「法人リストはAIで作れる」は本当か?」でも整理しています。
代行会社のスタッフに直接細かく指示しない
代行を「請負」や「業務委託」の契約で頼んでいても、実態として発注した側が代行会社のスタッフに仕事のやり方を直接指示していると、労働者派遣とみなされることがあります。厚生労働省は、派遣か請負かは、契約の形ではなく、「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」(37号告示)に基づいて実態で判断されるとしています[4]。この基準では、請負と認められるには、業務の進め方の指示や、働く時間・休みの管理などを、代行会社が自ら行うことが求められています[5]。
厚生労働省の疑義応答集では、発注した側が請負の会社に対して、作業のやり方の見直しなど発注に関わる注文をすることは偽装請負に当たらない一方、請負の会社のスタッフに直接指示した場合は直接の指揮命令に当たり、偽装請負(契約の形は請負でも、中身が派遣になっている状態)と判断されるとしています[6]。同じ応答集は、発注者との注文のやり取りは請負の会社の「管理責任者」の役目だとしています。管理責任者が作業も兼ねていて、実際には管理ができていないなら、偽装請負と判断されることもあります[6]。伝えたいことは、スタッフ一人ひとりではなく、代行会社の責任者に伝えます。ただし、責任者を通していても、発注した側が作業の内容・順序・方法を文書などで細かく示し、そのとおりに作業させている場合は、発注した側が指示や管理をしていると判断され、偽装請負とされます[6]。話し方の手順を発注した側が細かく決めて従わせる形は、これに当たるおそれがあります。発注した側から伝えるのは、声をかける相手の条件や、成果とみなす基準までにとどめ、電話の進め方は代行会社に任せます。一方、依頼する業務の内容が変わったときに、その説明を代行会社(請け負った会社)に対して行うことは、特に問題はないとされています[6]。どこまでが許されるかは個別の事情で判断されるので、迷うときは契約の前に代行会社と確かめておきます。
Framework
丸投げにしないために自社に残す3つの仕組み
代行会社に業務をすべて任せると、短い期間で商談の数が増えたとしても、どんな相手が商談になりやすいのか、どんな話し方が通じたのかが社内に残りません。契約を見直す時期に、費用に見合っていたかを確かめられなくなります。最低限、次の3つは自社に残します。
- 相手先リストの基準:どの業種・規模・困りごとの会社に声をかけるかの基準を、自社で言葉にしておきます。
- 話し方の型:成果が出ている話し方を定期的に共有してもらい、自社の商談資料や営業の話し方に生かせる形で残します。
- 結果の数字:電話をかけた数・つながった数・アポイント数・商談になった数を、自社でも同じ形で見られるよう、報告の形を契約の前に決めておきます。
| 型 | 社内に残りやすいもの | 残すために決めておくこと |
|---|---|---|
| 固定 | 契約で決めた報告(決めていなければ残りにくい) | 報告の項目と頻度 |
| 成果報酬 | 費用と成果の関係は見えやすい | 「成果」の決め方と、成果にならなかった電話の記録 |
| 複合 | 固定部分に含めると決めた報告や共有 | 固定部分に報告と話し方の共有を含めること |
結果の数字を自社で見られるようにしておくと、代行に頼むか、一部を自社で行うかを、あとから比べられます。代行会社が取った商談や、届いた問い合わせのあとの対応を仕組みにする話は「問い合わせフォームの一次対応を自動化する」で紹介しています。
FAQ
よくある質問
インサイドセールス代行の相場はいくらですか?
公的な機関が公表している相場の統計は、確認した範囲では見当たりません。料金は、業務の範囲と「成果」の決め方で大きく変わります。同じ条件をそろえて、複数社の見積で比べるのが確実です。
成果報酬型と固定型はどちらがお得ですか?
商品の単価や、アポイントから商談・受注に進む割合で変わります。割合が読めない新しい商品では固定、読める商品では成果報酬が比べやすくなります。成果報酬では「成果」の決め方を先に確かめます。
自社の顧客名簿を代行会社に渡しても大丈夫ですか?
利用目的の達成に必要な範囲で業務を任せるために渡す場合は「委託」に当たり、法律上は本人の同意が要らない扱いになります。ただし名簿の利用目的に営業の連絡が入っているかを先に確かめ、委託先を監督する義務があります[1]。名簿の使い道や、契約終了後の消し方を契約書に書いておきます。
代行会社のスタッフに直接指示を出してもいいですか?
請負や業務委託の契約で、スタッフに業務の進め方を直接指示すると、労働者派遣とみなされるおそれがあります[4][5]。代行会社の責任者を通す場合でも、話し方の手順を細かく決めてそのとおりに従わせると、偽装請負と判断されるおそれがあります[6]。伝えるのは相手先の条件や成果の基準までにして、電話の進め方は代行会社に任せます。
Sources
参考にした資料
- 個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第57号)(e-Gov法令検索・2026年11月2日確認)
- オプトアウト規定による第三者提供の届出(個人情報保護委員会・2026年11月2日確認)
- 「個人情報の保護に関する法律等の一部を改正する法律」の公布について(個人情報保護委員会・2026年7月17日)
- 労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準(37号告示)関係疑義応答集(厚生労働省・2026年11月2日確認)
- 労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準(昭和61年労働省告示第37号)(厚生労働省・2026年11月2日確認)
- 「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」(37号告示)に関する疑義応答集(第1集)(厚生労働省・2026年11月2日確認)
インサイドセールス代行は、料金の型と業務の範囲、「成果」の決め方をそろえてから比べます。名簿を渡すときの監督と、指示の出し方にも気をつけます。そのうえで、相手先リストの基準・話し方の型・結果の数字を自社に残しておけば、代行を使っても営業の仕組みが社内に積み上がりやすくなります。当社は電話の代行はしていません。相手先リストの基準や数字の見方を社内に残す仕組みづくりをお手伝いしています。代行に頼む部分と自社で仕組みにする部分の分け方から相談したい場合は、お気軽にご連絡ください。

