「IT導入補助金でAIツールを入れられるか」は、判断に迷う人が多い問いです。IT導入補助金は2026年度から「デジタル化・AI導入補助金」という名前で公募されていて、名前にAIが入りました。ただ、対象になるかどうかを分けるのは「AIかどうか」ではありません。この記事では、公式サイトと公募要領をもとに、対象になるツール・ならないツールの見分け方と、申請の前に確かめることを整理します。
この記事の結論
- 補助の対象になるのは、事前に事務局の審査を受けて登録されたITツールだけです。登録されていないツールは申請できません。AI機能があるかどうかでは決まりません。
- 文書作成・表計算・OCR・社内チャットのような「汎用」のツールは、それだけでは申請できません。顧客対応や在庫管理などの業務プロセスを持つソフトと一緒に申請します。
- 中古品、リース・レンタル、交付決定(事務局が補助金を出すと決めること)より前に買ったもの、申請時に利用金額が決まらないものは対象外です。
- 2026年度の通常枠などの交付申請の最終締切は2027年1月7日17時です(2027年1月から受付が始まるスマートレジ類型・POSレジ類型は別に案内されます)。通常枠の次の締切は2026年12月1日17時です。
IT導入補助金は2026年度「デジタル化・AI導入補助金」に
中小企業基盤整備機構(中小機構)が採択した事務局が運営する公式サイトでは、2026年度の制度を「デジタル化・AI導入補助金(旧:IT導入補助金)」と案内しています[1]。中小企業・小規模事業者の労働生産性を上げるために、業務の効率化やDXに向けたITツールの導入を支援する補助金です[2]。
この補助金の決まりで一番大事なのは、対象になるITツールは、事前に事務局の審査を受けてサイトに公開(登録)されているものに限られることです[2]。ITツールを登録するのは、ツールを提供・導入するIT導入支援事業者で、登録されていないITツールでは交付申請ができません[3]。申請する会社は、事務局に登録されたIT導入支援事業者と組んで申請します[2]。
つまり「このAIツールは対象か」という問いは、「このツールは、IT導入支援事業者によって登録されているか」と言いかえられます。登録されているかは、公式サイトのITツール検索で調べられます[4]。
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Process
AIツールが対象になるかを分ける「プロセス」の決まり
通常枠では、申請するソフトウェアが、決められた「業務プロセス」を1つ以上持っている必要があります[5][6]。業務プロセスとは、ソフトの機能を入れることで、特定の業務の生産性が上がったり効率化されたりするものを指します[6]。
| 種類 | 中身の例 | 単独で申請できるか |
|---|---|---|
| 業務プロセス(共通) | 顧客対応・販売支援/決済・債権債務・資金回収/供給・在庫・物流/会計・財務・経営/総務・人事・給与・労務・教育訓練・法務・情シス | できる |
| 業務プロセス(業種特化型) | その業種に固有のプロセス | できる |
| 汎用プロセス | 文書作成ソフト、表計算ソフト、OCR、PDF・ペーパーレス化ツール、グループウェア、社内チャットなど | できない(業務プロセスと一緒なら可) |
表の中身は公募要領(通常枠)の区分です[6]。汎用プロセスだけを持つITツールは、単独では交付申請できません[6]。文章を書いたり要約したりする汎用のAIツールを入れたい場合も、この決まりに当てはまるかを、ツールの登録内容で確かめます。逆に、在庫管理や受発注のように業務プロセスを持つソフトにAIの機能が付いている場合は、そのソフトとして申請できる可能性があります。公式サイトのITツール登録の案内にも、決められたプロセスを持つものなら「生成AI」や生成AI以外のAI技術の機能を載せたソフトウェアも登録できると書かれています[3]。ソフトがAIを載せているかどうかは、ITツール検索で確かめられます[6]。汎用プロセスの例には、RPAやチャットボット、ウェブ会議のツールも挙がっています[6]。
Not Covered
公募要領で対象外とされているもの
公募要領(通常枠)は、補助の対象外になる経費を並べています。AIツールを検討するときに関係しやすいものを抜き出しました[6]。
| 対象外とされるもの | AIツールを検討するときの注意 |
|---|---|
| 交付申請時に、ITツールの利用金額が定められないもの | 使った分だけ料金がかかるサービスは、申請時に金額を決められるかをIT導入支援事業者に確かめる |
| 対外的に無償で提供されているもの | 無料で使える範囲(無料プランなど)は対象にならない。有料プランが対象かは登録内容で確かめる |
| リース・レンタル契約のITツール | (サイバーセキュリティお助け隊サービスを除く) |
| 中古品 | — |
| 交付決定前に購入したITツール | 交付決定より前に契約・購入したツールは対象にならない |
| 補助金の申請・報告にかかる申請代行費 | 申請を手伝ってもらう費用は対象外(頼む先の選び方は「補助金申請代行は行政書士に頼むべき?」) |
パソコンやタブレットの購入費が対象になるのは、主にインボイス枠(インボイス対応類型)と、複数者連携デジタル化・AI導入枠の基盤導入経費で、会計・受発注・決済の機能を持つソフトと一緒に入れる場合です[3][7]。通常枠で補助の対象になるのはソフトウェアの購入費と導入にかかる費用なので、AIを使うためのパソコンを通常枠で買うことはできません[6]。
Covered
対象になる費用と補助率(通常枠)
通常枠で補助の対象になるのは、ソフトウェアの購入費、クラウドの利用料(最大2年分)、機能拡張・データ連携・セキュリティのオプション、導入・活用のコンサルティング、導入設定・マニュアル作成・導入研修、保守サポートです[5]。ソフトウェアは必須で、役務(コンサルティングなどの作業)は、ソフトウェアと一緒に申請します[5]。役務の補助対象経費は200万円が上限で[6]、導入・活用のコンサルティングは交付決定のあとに行うものが対象です[3]。
| 項目 | 通常枠(2026年度) |
|---|---|
| 補助率 | 1/2以内(2025年10月〜2026年9月のうち3か月以上、2026年度に改定された後の地域別最低賃金の額に届かない賃金で雇っていた従業員が全体の3割以上いることを示せば2/3以内) |
| 補助額 | 1プロセス以上(業務プロセスは必須):5万円以上150万円未満/4プロセス以上(汎用プロセスも数える):150万円以上450万円以下 |
| 申請できる回数 | 通常枠は1法人・1個人事業主あたり1回(不採択なら次の締切で出し直せる) |
補助率・補助額は公式サイトの通常枠のページ、申請回数は公募要領によります(2026年11月2日確認)[5][6]。年度や枠で変わるので、申請の前に最新の公募要領を読みます。コンサルティングなどの費用の考え方は「DX支援は補助金の対象になる?」でも整理しています。
Steps
対象かどうかを自分で見分ける4つの手順
- ITツール検索で調べる:入れたいツールが、公式サイトのITツール検索に出てくるかを見ます[4]。2026年度への移行の手続き中で、まだ表示されないツールもあると案内されています[4]。
- 業務プロセスを持つかを確かめる:汎用プロセスだけのツールなら、業務プロセスを持つソフトと組み合わせる必要があります[6]。
- まだ契約していないかを確かめる:交付決定の前に契約・発注したITツールは補助の対象になりません。契約・発注は交付決定のあとに行います[6]。
- IT導入支援事業者に聞く:検索だけで分からないときは、ツールを扱うIT導入支援事業者に、自社の使い方で申請できるかを確かめます。
Custom
自社専用のAIを開発したい場合
この補助金で申請できるのは、事前に登録されたITツールです[2]。自社のためだけに一から作るシステムは、その時点で登録されたツールになっていないので、この補助金の形には合いにくくなります。
開発を伴う取り組みでは、2026年度から公募されている「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」の名前が挙がることがあります。ただしこの補助金の革新的新製品・サービス枠は、新しい製品・サービスの開発が対象で、機械やシステムを入れるだけの取り組みは対象外とされています[8]。第1回の受付は2026年10月30日に終わっていて、次の公募の時期は公式サイトで確かめます[8]。流れと注意点は「ものづくり補助金の流れを時系列で解説」にまとめています。補助金の一覧から考えたい場合は「デジタル化・AI導入補助金2026の変更点」も参考になります。
FAQ
よくある質問
生成AIのツールは補助の対象になりますか?
AIかどうかでは決まりません。事務局に登録されたITツールで、業務プロセスを持つものなら対象になる可能性があります[2][6]。汎用のツールだけでは申請できず、無料で提供されているものや利用金額が決まらないものも対象外です[6]。
すでに契約しているツールは対象になりますか?
なりません。交付決定の前に契約・発注・納品・支払いをした場合は、補助金を受けられないと公募要領に書かれています[6]。
2026年度の申請はいつまでですか?
通常枠などの交付申請の最終締切は2027年1月7日17時と案内されています。この締切は、2027年1月から受付が始まるスマートレジ類型・POSレジ類型には当てはまらず、その2つの期限は別に案内されます[9]。通常枠の次の締切は2026年12月1日17時で、交付決定は2027年1月19日の予定です[5]。入力の途中で期限を過ぎた申請は破棄されます[9]。
AI導入のコンサルティング費用は対象になりますか?
通常枠では、導入・活用のコンサルティングは、ソフトウェアと一緒に申請する役務として対象に含まれます[5]。一方、補助金の申請や報告の代行費は対象外です[6]。
Sources
参考にした資料
- デジタル化・AI導入補助金2026 トップページ(中小企業デジタル化・AI導入支援事業事務局・2026年11月2日確認)
- デジタル化・AI導入補助金制度概要(中小企業デジタル化・AI導入支援事業事務局・2026年11月2日確認)
- ITツールの登録申請(同事務局・2026年11月2日確認)
- ITツール・IT導入支援事業者検索(同事務局・2026年11月2日確認)
- 通常枠(同事務局・2026年11月2日確認)
- デジタル化・AI導入補助金2026 公募要領(通常枠)(同事務局・2026年10月9日更新)
- 複数者連携デジタル化・AI導入枠(中小企業デジタル化・AI導入支援事業事務局・2026年11月2日確認)
- 新事業進出・ものづくり商業サービス補助金(中小企業基盤整備機構・2026年11月2日確認)
- 【デジタル化・AI導入補助金2026】交付申請の最終締め切り日について(中小企業デジタル化・AI導入支援事業事務局・2026年10月30日)
デジタル化・AI導入補助金でAIツールを検討するときは、「AIかどうか」より先に、事務局に登録されたITツールか、業務プロセスを持つかを確かめます。そのうえで、利用金額が決まっているか、まだ契約していないかを見ておくと、申請の段階で慌てずに済みます。通常枠などの締切は2027年1月7日が最後なので、早めに準備を始めると安心です。当社は、ツール選びと導入の整理をお手伝いしています。申請書類の作成や、採択の約束はしていません。どの業務からAIやITツールを入れるかの整理から相談したい場合は、お気軽にご連絡ください。

