BtoBのメルマガは、始めることより続けることのほうが難しい仕事です。毎週の原稿づくりに加えて、宛先の手入れ、届いたかどうかの確認、配信停止への対応が積み重なります。この記事は、私たちが運営に関わるBtoBメディアの読者に、週1回のメルマガを少ない人数で送り続けている記録です。宛先の作り直し方、数字の見方、つまずきとその後の見方の変え方を、Google・Yahoo・Apple・Microsoft・HubSpotの公式の説明や、法律の条文と照らし合わせながら書きます。外に任せるか自社で回すかを決める前に、何を毎週確かめる必要があるのかを知りたい方に向けた内容です。
届いた数と配信停止と迷惑メールの報告を、先に見る
メルマガの数字というと開封率やクリック率が先に思い浮かびますが、まず確かめておきたいのは、どれだけ届いたか、どれだけ配信停止があったか、迷惑メールとして報告されたかの3つです。私たちが送っているメルマガのある回の記録では、ほぼすべての宛先に届き、配信停止は0.79%、迷惑メールの報告は0件でした。
この3つを先に見るのは、メールの受け取り側の決まりが厳しくなっているためです。Googleは送信者向けのガイドラインで、2024年2月1日以降、Gmailの個人用アカウントにメールを送るすべての送信者に、Gmailの管理ツールで報告される迷惑メール率を0.3%未満に保つことなどを求めています。さらに1日あたり5,000件を超えて送る送信者には、マーケティング目的のメールはワンクリックで登録解除できるようにし、本文にも登録解除のリンクを分かりやすく表示することなどを求めています[1]。
Yahooも送信者向けの説明で、迷惑メールの報告の割合を0.3%未満に保つこと、ワンクリックの配信停止に対応すること、配信停止の申し出は2日以内に処理することを挙げています[2]。週1回・数千件の規模でも、受け取り側のこうした基準は前提として意識しておく必要があります。迷惑メールの報告が増えると、届くはずのメールが迷惑メールのフォルダに入るようになり、開封やクリックの数字以前に、読者の目に触れなくなるからです。
つまり、届いた数・配信停止・迷惑メールの報告は「メルマガが読まれる土台が崩れていないか」を見る数字です。内容の良し悪しを見る数字とは分けて扱います。
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List
宛先は毎週作り直す
私たちは、メルマガの宛先を毎週作り直しています。前の週のリストに新しい登録を足し、届かないアドレスや危ないアドレスを点検して外す、という手順です。一度作ったリストを使い回すのではなく、送る前の作業として毎週この点検を入れています。
宛先の点検を毎週行う意味は、外部の決まりからも説明できます。届かないアドレスに送り続けると、受け取り側から見て「宛先を管理していない送信者」に見えます。前の章で見たように、Googleは迷惑メール率などを送信者の評価に使っており[1]、宛先の質は届く率に直接はね返ります。
もう一つの理由は法律です。広告や宣伝を目的として送るメールは、特定電子メール法(迷惑メールを防ぐための法律)の対象になりえます。この法律では、原則として、あらかじめ受け取ることに同意した人などにしか送ってはならず、受け取りを拒む通知を受けたら、その意思に反して送ってはならないと定めています(第3条)。また、送信者の氏名または名称や、受け取りを拒む通知を受け付けるアドレスなどを、正しく表示しなければならないと定めています(第4条)[3]。毎週の作り直しの中で、配信停止を申し出た人を確実に外すことは、この決まりを守るための作業でもあります。
私たちの作り直しの手順を、順番に並べると次のとおりです。
- 前の週のリストを起点にする:前の週に送った宛先から始めます。
- 新しい登録を足す:新しく登録した読者を加えます。
- 届かない・危ないアドレスを外す:点検して、該当するアドレスを外します。
これに加えて一般的には、配信停止を申し出た人が宛先に残っていないかも、送る前に確かめておく所です。法律が受け取りを拒む人への送信を禁じている以上[3]、ここは道具の自動処理に任せきりにせず、作り直しのたびに目で見ておくと安心です。
Trouble
配信停止が急に跳ね上がった回に起きていたこと
ある回で、配信停止が急に跳ね上がりました。調べると、受け取る会社のメールの安全チェックが、メルマガの中の停止のリンクを自動で押していたことが分かりました。気づいたきっかけは、同じ会社の宛先がそろって停止になっていたことです。人が一人ずつ判断して停止したのなら、同じ会社の宛先だけがまとまって停止になることは考えにくいからです。
受け取る会社の側には、メールの中のリンクを人より先に確かめる仕組みがあります。たとえばMicrosoftの法人向けの安全機能「安全なリンク」は、届いたメールの中のURLを配信の流れの中で調べ、書き換え、クリックしたときにももう一度確かめる仕組みだと説明されています[4]。どの会社がどの仕組みを使っているかは外からは分かりませんが、会社のメールには、人が読む前に本文のリンクを確かめる仕組みが入っていることがある、と考えておく必要があります。
配信停止の仕組みを定めたインターネットの技術標準(RFC 8058)も、似た問題を書き出しで取り上げています。配信停止のためにメールのヘッダー(宛先や件名などが入る、本文の前の部分)に書かれたURLを、迷惑メール対策のソフトが利用者の操作なしに自動で開くことが多く、送信者からはそれが自動なのか人の操作なのかを機械的に見分ける方法がない、という説明です。そのため、誤って配信停止にならないよう、停止のページで確認の手順を挟む送信者が多いことにも触れています[5]。
この回から分かるのは、配信停止の数字も「全部が人の意思」とは限らないということです。私たちが気づけたのは、同じ会社の宛先がそろって停止になっていたからでした。一般的な見方として、停止が急に増えたときは、停止した宛先を会社ごとに並べて、同じ会社にかたまっていないかを見ると、内容が嫌われたのか、受け取る側の安全チェックが原因なのかを切り分ける手がかりになります。
Metrics
開封とクリックは、そのままの数字では見ない
送った直後の開封やクリックは、機械によるものが大半でした。そこで私たちは、メルマガの効果を開封やクリックではなく、申し込みや返信で数えることにしました。
開封の数字が当てにならない理由は、受け取り側の仕組みにあります。Appleは「メールプライバシー保護」の説明で、この機能をオンにしたAppleの「メール」アプリでは、利用者がメールをどう扱ったかにかかわらず、メールの中の画像などはバックグラウンドで読み込まれると説明しています[6]。開封の多くは「メールの中の画像が読み込まれたこと」で数えているため、読まれていなくても開封に数えられることがあります。
配信の道具の側もこのことを前提にしています。HubSpotは、マーケティングメールの分析で「ボットフィルタリング」をオンにすると、ボットによる可能性がある反応をパフォーマンスのデータから除外すると説明しています。ここでいうボットには、セキュリティのスキャナー、Appleの「メールプライバシー保護」のようなプライバシーのための仕組み、企業向けのメールの検査の道具などが含まれます。また、ボットを除いた数字は、ボットを含めて数える他の道具より低く出るのが普通だとも書いています[7]。
ボットを除く機能を使っても、人と機械を完全に分けられるとは限りません。私たちが効果を申し込みや返信で数えることにしたのは、送った直後の開封やクリックの大半が機械によるものだったからです。一般論としても、開封とクリックは「先週と比べて大きく動いていないか」を見る程度にとどめ、効果の判断は人にしか起こせない行動で行う、という分け方は使いやすい考え方です。
メルマガやフォローのメールを、問い合わせや商談につなげる流れとして整えたい場合は、今の流れを伺いながら、仕組みにできる範囲を一緒に整理します。
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メルマガの数字ごとの、混ざりやすいものと使い道
ここまでの話を、数字ごとに整理します。どの数字に機械の動きが混ざりやすいかを知っておくと、毎週の確認で何を見ればよいかがはっきりします。
| 数字 | 混ざりやすいもの | 使い道 |
|---|---|---|
| 届いた数 | ほぼ混ざらない | 宛先の手入れができているかを見る |
| 配信停止 | 受け取る会社の安全チェックがリンクを押した分 | 急な増加は会社ごとに並べて原因を確かめる |
| 迷惑メールの報告 | ほぼ混ざらない | 受け取り側の基準(0.3%未満など)から離れていないかを見る |
| 開封 | 画像の自動読み込み、プライバシーのための仕組み | 先週との大きな変化を見る程度にとどめる |
| クリック | 安全チェックによるリンクの確認 | 送った直後の数字は割り引いて見る |
| 申し込み・返信 | 人にしか起こせない | メルマガの効果を数える |
表の上の3つは「届く土台」、下の3つは「読まれたかどうか」を見る数字です。上の3つが崩れているときに下の3つを見ても判断を誤りやすいので、確認は上から順に行うのがおすすめです。
Content
宣伝の内容をやめて、読み物の形に切り替えた
私たちのメルマガは、最初の数回は宣伝の内容にしていましたが、反応がありませんでした。そこで、読み物の形に切り替えました。
BtoBのメルマガの読者は、仕事の合間にメールを開く人です。毎週届くメールが宣伝ばかりだと、読む理由がなくなります。読み物の形にするというのは、読者が自分の仕事に持ち帰れる話を中心にして、案内は添える程度にする、という意味です。
切り替えを考えるときに気をつけたいのは、宣伝をやめることと、問い合わせの入口を消すことは別だという点です。読み物の形にしても、申し込みや返信の入口は残しておかないと、前の章で書いた「申し込みや返信で効果を数える」ことができなくなります。
また、内容を変えても、表示の決まりは変わりません。広告や宣伝の要素を含むメールである限り、送信者の名称や配信停止の方法を正しく示す必要があります[3]。Googleも、1日5,000件を超えて送る送信者には、マーケティング目的のメールの本文に分かりやすい登録解除のリンクを置くよう求めています[1]。読み物にしたから表示を省いてよい、ということにはなりません。
Checklist
週1回のメルマガを続けるための確認表
最後に、少ない人数で週1回のメルマガを続けるときに、毎週確かめることを一般的な形でまとめます。担当者が替わっても同じ確認ができるよう、紙1枚に収まる量にしておくのがおすすめです。
- 送る前:宛先を作り直したか。届かない・危ないアドレスを外したか。配信停止の申し出を反映したか。
- 送る前:送信者の名称、配信停止の方法が本文に入っているか。ワンクリックで停止できる設定になっているか[1][2]。
- 送った直後:届いた数、配信停止、迷惑メールの報告を見る。
- 停止が急に増えたら:停止した宛先を会社ごとに並べ、同じ会社にかたまっていないかを見る[4]。
- 数日たってから:申し込みと返信を数える。開封とクリックは先週と比べる程度にする[7]。
この確認表は、配信の道具を何にするかに関係なく使えます。道具を入れれば自動で済む部分もありますが、「停止の急増が人の意思かどうか」のように、人が見て判断する所は残ります。そこをどこまで人が受け持つかを先に決めておくと、少ない人数でも続けやすくなります。
Sources
参考にした資料
- Google Workspace 管理者ヘルプ「メール送信者のガイドライン」
- Yahoo「Sender Best Practices」
- e-Gov法令検索「特定電子メールの送信の適正化等に関する法律」
- Microsoft Learn「Microsoft Defender for Office 365 の安全なリンク」
- IETF「RFC 8058 Signaling One-Click Functionality for List Email Headers」(2017年1月)
- Apple「メールプライバシー保護とプライバシー」
- HubSpotナレッジベース「マーケティングEメール分析におけるボットフィルタリングについて理解する」(2026年10月更新)
FAQ
よくある質問
BtoBのメルマガは、どれくらいの頻度で送ればよいですか?
決まった正解はありません。私たちは週1回で回していますが、大事なのは頻度そのものより、毎回の宛先の手入れと数字の確認を続けられるかどうかです。続けられない頻度を選ぶと、宛先の点検が抜けて届く率が下がりやすくなります。
開封率が急に上がったのは、良い知らせですか?
そうとは限りません。画像の自動読み込みや、会社の安全チェックによる確認も開封やクリックに数えられることがあります。効果は申し込みや返信で確かめるのが確実です。
配信停止が急に増えたら、内容を変えるべきですか?
先に、停止した宛先を会社ごとに並べてみてください。同じ会社の宛先がそろって停止になっていれば、受け取る側の安全チェックがリンクを自動で押した可能性があります。内容を変えるのは、その確認をしてからで遅くありません。
メルマガの運用を外に任せることはできますか?
配信の道具の設定、宛先の管理、問い合わせにつなげる流れの設計などは、外の手を借りやすい部分です。当社では、HubSpotを使った顧客管理やメールの流れの設計を、今の流れを伺いながら段階的にご支援しています。
BtoBのメルマガを週1回続けるには、原稿よりも先に、宛先の作り直しと数字の見方を決めておくことが助けになります。届いた数・配信停止・迷惑メールの報告で土台を確かめ、開封やクリックは割り引いて見て、効果は申し込みと返信で数える。私たちが運営に関わるBtoBメディアのメルマガでも、宛先を毎週作り直し、効果は申し込みや返信で数えることにしています。メルマガだけでなく、問い合わせのあとのフォローや商談までの流れを続けて整えたい場合は、今の流れを伺うところからご一緒します。

