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事業計画書の書き方|基本の構成と売上の根拠の作り方、読み手ごとの見せ方と記入例

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新しい事業を始めるとき、銀行から借りるとき、社内で予算をもらうとき、たいてい「事業計画書を出してください」と言われます。ところが、決まった書式があるわけではないので、何をどこまで書けばよいのか迷う方が多い書類です。特に手が止まりやすいのが、売上の数字をどう決めるかという所です。この記事では、事業計画書の役割と基本の構成、読み手によって重みが変わる所、売上の根拠の作り方を順に整理し、最後に架空の事業を使った記入例を載せます。

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この記事の結論

  • 事業計画書に決まった書式はありません。読み手が「お金や人を出してよいか」を決められるよう、筋道立てて答えられているかが問われます。
  • 項目は、要約・事業を行う理由・顧客と困りごと・商品・市場と競合・売り方・体制と実行計画・数値計画・リスクと対応の9つが基本です。要約は数字を作り終えてから最後に書きます。
  • 厚く書く所は読み手で変わります。銀行には返済、出資者には市場の伸びと経営チーム、社内には何を確かめるかとやめる条件です。
  • 売上は事業の形に合った掛け算の式に分け、式の中の数字ごとに、自分たちで確かめた結果や公的な統計などの出どころを書きます。
  • 弱気・ふつう・強気の3通りを並べ、弱気の場合でも資金が尽きない、または返済できることを示すと、計画全体が信頼されやすくなります。
目次

事業計画書とは:読み手が「お金や人を出すか」を決めるための書類

事業計画書は、これから行う事業の中身と、その事業でどれくらいのお金が入り、出ていくかを、ほかの人が判断できる形にまとめた書類です。読み手は、銀行などの金融機関、出資を考える投資家、社内の経営陣、補助金の審査をする人などです。立場は違っても、読み手がしたいことは「この事業にお金や人を出してよいか」を決めることで共通しています。

中小企業基盤整備機構(中小機構)が運営するJ-Net21では、ビジネスプランには決まった形式があるわけではない、と説明されています[1]。日本政策金融公庫の創業融資でも、公庫の様式である「創業計画書」の代わりに、自分で作った計画書を出してもよいと書かれています[2]。つまり、様式を埋めること自体が目的ではありません。読み手が知りたいことに、筋道立てて答えられているかが問われます。

公庫の様式に沿った書き方は創業計画書の書き方と記入例の記事で、AIを使った製品づくりのように検証しながら進める事業の計画書はAIプロダクト開発の事業計画書の記事で取り上げています。この記事では、業種や用途を問わず使える、一般的な事業計画書の全体像を扱います。

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Structure

事業計画書の基本の構成

J-Net21では、計画書には経営者の経歴、事業の目標、事業内容、実行計画など、事業の全容がわかる項目を書くとしています[3]。また、一般的な構成の例として、要約(サマリー)、事業のコンセプトと商品・サービス、事業戦略、財務計画、添付資料が挙げられています[1]。これらをもとに、実務で使いやすい形に並べ直したのが次の表です。

項目書くこと読み手が確かめたいこと
1. 要約事業の中身、必要なお金、数年後の姿を1ページで続きを読む価値があるか
2. 事業を行う理由なぜこの事業か、なぜ自分たち(自社)がやるのか思いつきではないか、経験や強みとつながっているか
3. 顧客と困りごとだれの、どんな困りごとを解決するのか本当にお金を払う相手がいるか
4. 商品・サービス中身、値段、ほかとの違い顧客がこれを選ぶ理由があるか
5. 市場と競合どれくらいの顧客がいるか、ほかに何が選ばれているか売上の上限と、取り合いの厳しさ
6. 売り方顧客をどう見つけ、どう買ってもらうか売上の数字とつながっているか
7. 体制と実行計画だれが何をいつまでにやるか人と時間が足りているか
8. 数値計画売上・費用・利益の見通し、必要な資金と集め方数字の根拠と、下振れしたときの持ちこたえ方
9. リスクと対応うまくいかない場合と、そのときの手当て都合のよい話だけを書いていないか

書く順番に決まりはなく、J-Net21では事業コンセプトや現状分析から書き始めるとよい、としています[3]。実際には、3の顧客と困りごとと4の商品から考え始めるのがおすすめです。8の数字を作り終えてから、最後に1の要約を書くと、前後がずれにくくなります。要約を先に書くと、あとで数字を作ったときに中身が合わなくなりがちだからです。

アイデアの段階で、まず1枚に収めて考えを整理したいときは、新規事業の企画書を1枚にまとめる記事が参考になります。1枚の企画書で筋が通ってから、この表の項目に広げていく順番でも構いません。

Readers

銀行・出資者・社内で、重く見られる所が変わる

同じ事業でも、だれに見せるかによって、厚く書くべき所が変わります。J-Net21では、金融機関は財務の安全性や担保などの支払い能力を重視し、ベンチャーキャピタル(新しい会社に出資する投資会社)は市場の成長性や起業家の資質、経営チームの能力など将来性を重視する、と説明されています[1]。

読み手主に知りたいこと厚く書く所
銀行などの金融機関貸したお金が予定どおり返ってくるかお金の使い道、返済の元手、売上が下振れしたときの返済
投資家(出資者)事業が大きく育つか、それを任せられる人たちか市場の大きさと伸び、経営チーム、成長の道筋
社内の経営陣本業の資源を割いてまでやる価値があるか本業とのつながり、いつまでに何を確かめるか、やめる条件

銀行に見せる場合

J-Net21では、金融機関に出す事業計画書のポイントとして、なぜお金が必要なのか、どのように返済していくのか、万が一のときはどうするのか、の3点を挙げています[4]。返済の期間についても、計画より売上や利益が多少下に振れても無理なく返せる程度に見込んでおくとよい、としています[4]。強気の売上だけで組んだ計画は、返済の面で信頼を得にくいということです。

出資者に見せる場合

出資は返済のないお金ですが、その代わりに会社の持ち分を渡します。出資者は、事業が大きくなって持ち分の価値が上がることを期待しています。そのため、市場がどこまで広がるか、だれがやるのかに多くの紙面を使います。J-Net21では、要約は投資を検討するかどうかを最初に判断される所なので、1〜2ページにまとめるとよい、とされています[1]。

社内の新規事業で使う場合

社内の計画書では、本業と同じ物差しで「何年で黒字か」だけを問われがちです。新しい事業は、始めた時点では分からないことが多いので、数字の見通しと並べて「最初の半年で何を確かめるか」「どうなったら続け、どうなったらやめるか」を書いておくと、承認する側も判断しやすくなります。

Numbers

売上の根拠の作り方

事業計画書で最も問われるのが売上の数字です。J-Net21でも、自分のイメージや根拠のない資料は評価する人の信頼を失うことになるとして、売上予測などは根拠を筋道立てて示すよう求めています[1]。根拠を示すには、売上を「掛け算の式」に分けて、それぞれの数字の出どころを書くのが基本です。

事業の形に合った式を選ぶ

日本政策金融公庫の資料では、業種の特性に合わせて、次のような売上の計算方法の例を示しています[5]。

事業の形売上の式例
設備の生産能力で売上が決まる設備の生産能力 × 設備の数部品の製造、印刷、運送など
店の広さで売上が決まる1㎡(または1坪)当たりの売上 × 売場の広さコンビニエンスストアなど
席や台の数で売上が決まる客単価 × 席数(台数) × 回転数飲食店、理容・美容など
人の数で売上が決まる1人当たりの売上 × 人数販売、清掃など人手が中心の仕事

同じ資料では、これはあくまで例であり、ほかの方法もあわせて検討し、業界の平均に地域の事情などを加えて、いくつもの角度から予測することが大切だ、とも書かれています[5]。法人向けの月額サービスのように表にない形なら、「契約している会社の数 × 月額の単価」のように、自分の事業に合わせて式を作ります。

式の中の数字に、出どころを付ける

式ができたら、中に入る数字ごとに出どころを書きます。出どころには次のようなものがあります。

  • 自分たちで確かめた数字:試しに売ってみた結果、見込み客への聞き取り、試作品を使ってもらった反応など。最も説得力があります。
  • 業界の平均や公的な統計:日本政策金融公庫総合研究所の「小企業の経営指標調査」[6]や、政府の統計の窓口であるe-Stat[7]で、自分の数字が大きく外れていないかを確かめます。

市場全体の大きさから「そのうち何%を取る」と割り出す方法(トップダウン)は、取れる割合の根拠が弱くなりがちです。顧客1件ずつの積み上げ(ボトムアップ)で作り、市場の大きさとは「上限を超えていないか」の確かめに使うほうが、読み手に伝わりやすくなります。2つの方法の計算の手順は新規事業の売上予測の計算方法の記事で詳しく説明しています。

費用は「売上に比例するもの」と「毎月かかるもの」に分ける

売上の次は費用です。仕入れや材料のように売上に合わせて増える費用は、売上に原価率(売上に占める原価の割合)を掛けて出すのが一般的です[5]。家賃や人件費のように毎月ほぼ決まって出ていく費用は、見積もりや契約の金額を積み上げます。この2つを分けておくと、売上が下がったときに利益がどれだけ減るかが計算しやすくなります。

強気・ふつう・弱気の3通りを並べる

1つの数字だけでは、読み手は「外れたらどうなるか」が分かりません。契約率や単価など、外れやすい数字を変えた3通りの計算を並べ、弱気の場合でも資金が尽きない、または返済できることを示しておくと、計画全体の信頼が上がります。

Example

事業計画書の記入例(架空の事業)

ここでは、説明のために作った架空の事業で、主な項目の書き方を示します。実在の会社や当社の支援先の数字ではありません。

事業の概要:地域の工務店向けに、現場で撮った施工写真を、工事ごと・工程ごとに整理して保管する作業を、月額で請け負うサービスです。

事業を行う理由:代表が工務店で10年間現場監督をしていて、写真整理の負担を自分で経験している、と書きます。

顧客と困りごと:従業員10人前後の工務店では、写真の整理を現場監督が夜や休日に行っていることが多く、施主への報告や、後日の問い合わせへの対応に時間がかかっています(見込み客10社への聞き取りで、8社が同じ悩みを挙げた、と書く形にします)。

商品と値段:月額3万円。1か月の写真の枚数に上限を設け、超えた分は追加料金とします。

市場と競合:営業で回れる地域にある工務店の数を公的な統計で数え、上限の目安にします。競合には、工務店向けの写真管理ソフトや、社内の事務員による整理を挙げ、ソフトを入れても整理する人手が足りない会社を狙う、と書きます。

売り方:地域の工務店の組合の会合での紹介と、既存の取引先からの紹介で、月20社と話す、と書きます。

体制と実行計画:営業は代表、写真の整理は在宅のスタッフ2人で始め、契約が20社を超えたら3人目を探す、と時期と人数を書きます。

売上の式と根拠:売上 = 契約している会社の数 × 3万円。新しい契約は、営業で月に20社と話し、そのうち15%が契約するとして月3社。15%は、試しに使ってもらった10社のうち、有料でも続けたいと答えた会社が2社(20%)だったことから、初めて話す相手では少し下がると見て置いた仮の値だと明記します。解約は毎月、契約数の2%と置きます。

1年目の見通し:この前提だと、12か月目の終わりの契約数は約32社、1年間の売上は約650万円になります。契約が積み上がる形の事業なので、1年目の前半は売上が小さく、後半に伸びる形になります。

3通りの見通し:契約率を10%(弱気)、15%(ふつう)、20%(強気)に変えて計算し、毎月かかる費用(人件費・道具の利用料・家賃など)を月60万円と置いて並べます。下の表は、この記事のために作った架空の数字です(月20社と商談、月額3万円、解約は毎月2%、契約0社から始める、代金はその月のうちに入る前提)。

項目弱気(契約率10%)ふつう(15%)強気(20%)
12か月目の契約数約21社約32社約43社
1年目の売上約435万円約650万円約870万円
1年目の費用720万円720万円720万円
手元の資金が最も少なくなる時期(それまでの赤字の合計)11か月目(約290万円)7か月目(約180万円)5か月目(約120万円)

この表から、弱気の場合でも約290万円を用意しておけば資金が尽きない、と説明できます。代金の入金が翌月になる場合は、その分だけ必要な額が増えるので、月ごとのお金の出入りで確かめ直します。

リスクと対応:契約率が想定を下回った場合は、3か月目に売り方を見直し、6か月目の時点で契約が10社に届かなければ、サービスの範囲を見直すか続けるかを決める、と書いておきます。

このように、数字のそばに「その数字をどうやって決めたか」を1行ずつ添えるのが、記入例のいちばんの要点です。数字そのものより、決め方が説明できているかが読まれます。

月ごとの売上と費用を積み上げる表を一から作るのが大変なときは、当社が無料で公開している事業計画書のテンプレート(Excel)を使うと、簡易の5年計画と、月ごとに60か月分を組み立てる詳細版から選べます。

Pitfalls

事業計画書でつまずきやすい所

項目どうしの数字が合っていない。売り方の欄では「営業は社長1人」と書いているのに、売上の欄では月に50社と商談する前提になっている、といったずれです。読み手は項目をまたいで読むので、こうしたずれは計画全体への疑いにつながります。書き終えたら、人数・時間・金額が各項目で同じになっているかを見直します。

入金と支払いの時期を考えていない。売上が立っても、代金が入るのが翌月や翌々月ということはよくあります。その間も給料や家賃は出ていきます。利益が出ている計画でも、手元のお金が途中で足りなくなることがあるため、月ごとのお金の出入りも確かめておきます。入金と出金を月ごとに並べる表の作り方は、資金繰り表の書き方の記事で項目と記入の手順を説明しています。

うまくいかない場合を書いていない。J-Net21でも、都合のよい要素だけでなく、事業のリスクや問題点を書くことが評価する人の信頼を得るうえで必要な場合がある、とされています[1]。リスクを書くときは、対応策を並べて書きます。

FAQ

事業計画書についてよくある質問

事業計画書と創業計画書は何が違いますか?

創業計画書は、日本政策金融公庫が創業融資の申し込みで使う様式の名前です。事業計画書は、決まった書式のない一般的な呼び方で、融資・出資・社内の承認・補助金など広い場面で使います。公庫では、様式の代わりに自分で作った計画書を出してもよいとされています[2]。

数値計画は何年分作ればよいですか?

用途によって違いますが、3〜5年分で作ることが多いです。たとえば、都道府県などが承認する中小企業の「経営革新計画」は、計画の期間を3〜5年とし、付加価値額(営業利益・人件費・減価償却費の合計)または1人当たりの付加価値額を年3%以上、給与支給総額を年1.5%以上伸ばすことなどを承認の基準にしています[8]。始めの1年は月ごと、2年目以降は年ごとに作ると、手間と細かさの釣り合いが取りやすくなります。

まだ売ったことがない商品の売上は、どう決めればよいですか?

見込み客への聞き取りや、試作品を少数の相手に使ってもらった結果から、契約率や単価の仮の値を決めます。確かめていない数字は「仮の値」と明記し、確かめる時期と方法を書いておくと、読み手も判断しやすくなります。

事業計画書は何ページくらいが適当ですか?

決まりはありません。読み手が最初に目を通す要約は1〜2ページに収め[1]、本文は根拠を示せる範囲で必要な分だけ書きます。細かい計算表や調査の結果は、添付資料として後ろに付けると読みやすくなります。

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事業計画書は、読み手が「お金や人を出すか」を決めるための材料です。基本の項目をそろえたうえで、銀行なら返済、出資者なら成長、社内ならやめる条件を厚く書きます。売上は、事業の形に合った掛け算の式で出し、式の中の数字ごとに出どころを書いておきます。そのうえで、弱気の見通しでも資金が尽きないことを示せれば、計画全体が信頼されやすくなります。当社では、計画書を作り込む前に、確かめたいことに絞った最初の版を作って反応を見るところから、立ち上げの実行まで、続けてご相談いただけます。

監修・運営:オプティソース株式会社

経営と起業の実務家チームが、AIを使って事業づくり、集客・営業の強化、業務改善を進める会社です。自社でも製造業向けの事業とサービスを運営し、そこで試したやり方をお客様の事業に使っています。

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