日本政策金融公庫に創業融資を申し込むと、担当者との面談があります。何を聞かれるのか、どんな資料を持っていけばよいのか、自己資金が少ないと不利なのか。面談の前は、分からないことばかりで不安になるものです。この記事では、創業融資の面談で聞かれることと準備の進め方、自己資金の考え方を、公庫の公式の資料や調査の数字をもとに整理します。あわせて、当社がある支援先(サービス業)の創業融資で、面談の準備を支援した記録を紹介します。
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面談は、事業計画を直接説明する場
公庫の「お手続きの流れ(創業予定の方)」のページでは、面談について、資金の使い道や事業計画などについて話を聞く場であり、面談の際には事業計画に関連する資料や、資産・負債が分かる書類などを準備してもらう、と案内しています。面談はオンラインでも受け付けており、その後、店舗や事業所の予定地を訪ねたうえで、事業計画などをさまざまな角度から検討して融資を判断する、としています[1]。
面談の前に出す創業計画書の様式にも、面談との関係が書かれています。様式の冒頭には「この書類は、ご面談にかかる時間を短縮するために利用させていただきます」とあります[2]。つまり、創業計画書は面談の代わりではなく、面談で話す内容の下書きのようなものです。書類に書いたことを、面談で自分の言葉で説明し直すことになります。
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Case
ある支援先の面談で聞かれた4つのこと
ここからは当社の記録です。当社では、ある支援先(サービス業)の創業融資で、面談の準備を支援しました。
面談で聞かれたのは、次の4つでした。
- 事業の内容
- 事業計画
- 強み
- 経営者の経歴
面談に向けて、公庫の様式の創業計画書とは別に、事業説明と事業計画を用意しました。面談のあとに、公庫から確認の電話がありました。資本金約300万円の会社で、約1,000万円の融資を受けられました(資本金の約3倍)。用意した資料の中身や、支援した範囲と期間を含めたこの事例の記録は、創業融資の支援で何をどこまで手伝ったかの記事で紹介しています。
ただし、これは1つの例です。融資の判断は公庫が事業ごとに行うもので、資本金や自己資金の何倍まで借りられる、という決まった目安を示すものではありません。
Preparation
4つの質問ごとの準備
ここからは一般的な準備の進め方です。上の4つは、創業計画書の様式の項目ともつながっています。様式の欄を手がかりに、面談で話すことを準備します。
事業の内容。様式の「取扱商品・サービス」の欄には、商品やサービスの内容のほか、販売ターゲットと集客の方法、競合や市場の状況を書く枠があります[2]。面談では、誰に、何を、どうやって売るのかを、1〜2分で話せるようにしておきます。専門用語を使わず、初めて聞く人にも伝わる言い方を用意します。
事業計画。様式の「事業の見通し」では、創業当初と軌道に乗った後の売上高、原価、経費と、その根拠を書きます[2]。面談では、数字そのものより、その数字をどう出したのかが聞かれます。客単価と客数、単価と件数など、掛け算で説明できるようにしておきます。
強み。様式には「セールスポイント(自社の強み)」を書く欄があります[2]。ほかの会社やほかの選択肢と比べて、なぜお客様に選ばれるのかを、具体的な事実で説明します。「丁寧な対応」のような、どの会社でも言えることだけでは伝わりません。
経営者の経歴。様式の「経営者の略歴等」には、勤務先名だけでなく、担当業務や役職、身につけた技能などを書くよう案内があります[2]。公庫の総合研究所の「2025年度新規開業実態調査」(公庫から融資を受けた開業1年以内の企業、回答2,165社。この設問の回答は2,148社)では、開業者のうち、勤務経験がある人は97.6%、いまの事業に関連する仕事の経験(斯業経験)がある人は81.1%でした[3]。多くの開業者が、関連する経験を持って事業を始めています。面談では、その経験が今回の事業のどこに生きるのかを、つなげて話せるようにしておきます。
事業計画や説明資料をどう組み立てるかを、立ち上げの進め方とあわせて相談したい場合は、スタートアップ支援の内容をご覧ください。
スタートアップ支援の内容を見るOwn funds
自己資金はどう考えればよいか
創業融資で多くの人が気にするのが、自己資金です。公的な数字を見ておきます。
上の新規開業実態調査では、開業時の資金調達額の平均は1,219万円で、そのうち自己資金は平均279万円、割合にして22.9%でした(この図表には回答数の記載がありません)[3]。公庫の「創業の手引」もこの数字を紹介し、自己資金は着実に蓄えることが大事で、自己資金の割合が高いほど借入の割合は低くなり、余裕を持った資金繰りができる、としています[4]。
一方で、自己資金はこれから起業する人にとっての大きな壁でもあります。公庫の総合研究所が全国の18〜69歳にインターネットで聞いた「2025年度起業と起業意識に関する調査」では、起業に関心はあるがまだ起業していない人(回答523人)に理由を複数回答で聞いたところ、「自己資金が不足している」が48.4%で最も多い答えでした[5]。
では、自己資金がいくら無いと借りられないのか。公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金」の公式ページで「ご利用いただける方」を見ると、新たに事業を始める方、または事業開始後おおむね7年以内の方とされ、適正な事業計画を立てていて、その計画をやり遂げる能力が十分あると認められる方に限る、と書かれています。この欄に、自己資金の割合についての条件は書かれていません(2026年10月31日に確認)。あわせて、審査の結果、希望に沿えないことがある、とも明記されています[6]。
まとめると、自己資金は多いほど資金繰りに余裕ができますが、何倍まで借りられるという決まった線があるわけではありません。当社の記録では資本金の約3倍でしたが、これは1つの例にすぎません。資本金と自己資金は同じとは限らない点にも気をつけてください。大切なのは、自己資金をどうやって準備したのかを説明できることと、事業計画の中で自己資金と借入をどう使い分けるのかを示せることです。
Debt and equity
自己資金と、借りるお金・出資を受けるお金の違い
自己資金を考えるときに、混ざりやすいのが「借りるお金」と「出資を受けるお金」です。経済産業省の「スタートアップの成長に向けたファイナンスに関するガイダンス」は、融資(デットファイナンス)を借入などで負債として資金を集める方法で原則として返済期限があるもの、出資(エクイティファイナンス)を株式を発行して資金を集める方法で返済が無く、株主が会社の所有者となって原則として議決権を持つもの、と説明しています[7]。
創業融資は借りて返すお金なので、面談では「この計画で返していけるか」が話の中心になります。投資家から出資を受ける場合は、返済の代わりに会社の一部を持ってもらうので、相手が見るのは「どれだけ大きく成長できるか」です。同じ事業でも、どちらの相手に説明するかで、強調する所が変わります。面談の準備では、返済の見通しにつながる数字、つまり毎月の売上と費用の見込みと、その根拠を厚くしておきます。
Checklist
面談の前日までに確かめること
- 創業計画書と別に用意した資料の数字が、すべて一致しているか
- 必要な資金の合計と、自己資金と借入を足した調達の合計が一致しているか
- 設備資金に見積書がそろっているか
- 事業の内容を1〜2分で話せるか
- 売上の見込みを、掛け算で説明できるか
- 自社の強みを、具体的な事実で言えるか
- 経歴のどこが今回の事業に生きるのかを話せるか
- 提出した資料の控えが手元にあるか
このリストの答えが1つでもあいまいなら、そこが面談で聞かれやすい所です。前日までに答えを用意しておきます。
Comparison
面談に持っていく資料の整理
面談に持っていく資料は、役割で分けておくと、質問に合わせてすぐに出せます。
| 資料 | 役割 | 面談でつながる質問 |
|---|---|---|
| 創業計画書(公庫の様式) | 面談の時間を短くするための下書き[2] | 4つの質問すべての入口 |
| 事業説明(別に用意) | 事業の全体像を短く伝える | 事業の内容、強み |
| 事業計画(別に用意) | 売上と費用の根拠を細かく示す | 事業計画 |
| 資産・負債が分かる書類 | 自己資金と借入の状況を示す[1] | 自己資金、必要な資金と調達方法 |
| 職歴や資格が分かるもの | 経験と技能の裏付け | 経営者の経歴 |
| スタートアップの支援会社に相談する(当社など) | 事業の説明資料や計画の組み立てを、立ち上げの進め方とあわせて考える | 面談で答えるのは経営者自身。結果を約束するものではない |
After
面談のあとの確認に備える
当社の記録では、面談のあとに公庫から確認の電話がありました。ここからは一般的な備え方です。
- 提出した資料の控えを手元に置く:何を出したかが分からないと、聞かれたことにすぐ答えられません。提出した版の資料を、そのまま保管しておきます。
- 数字の根拠を一か所にまとめる:売上の見込み、経費、人件費の数字を、どの前提で置いたのかを書いたメモを用意しておきます。
- 面談で答えきれなかったことを書き出す:面談のあとすぐに、聞かれて答えにくかったことを書き出し、答えを準備しておきます。
- 連絡を受けられるようにしておく:申込のあとしばらくは、知らない番号からの電話にも出られるようにしておくと、確認が滞りません。
Mistakes
面談で起こりやすい行き違い
資料を読み上げてしまう。資料に書いてあることは、担当者もすでに読んでいます。面談では、資料を指しながら、なぜその数字なのか、どうやって達成するのかを自分の言葉で話します。
良いことだけを話す。計画どおりにいかなかったときにどうするのかを聞かれることがあります。売上が見込みより少なかった場合の手当てを、あらかじめ考えておきます。
自己資金の出どころを説明できない。自己資金は、どうやって準備したお金なのかを説明できることが大切です。通帳などで確かめられる形にしておきます。
Sources
参考にした資料
FAQ
創業融資の面談についてよくある質問
面談では、どんなことを聞かれますか?
公庫は、面談で資金の使い道や事業計画などについて話を聞くとしています。本文の支援先では、事業の内容、事業計画、強み、経営者の経歴を聞かれました。
自己資金がいくらあれば、融資を受けられますか?
決まった目安はありません。公庫の新規開業・スタートアップ支援資金の公式ページの「ご利用いただける方」には、自己資金の割合の条件は書かれていません。ただし、自己資金の割合が高いほど資金繰りに余裕ができると公庫の創業の手引は説明しています。本文の例では資本金の約3倍でしたが、資本金と自己資金は同じとは限らず、1つの例にすぎません。
面談はオンラインでも受けられますか?
公庫の手続きの流れのページでは、オンラインでの面談も受け付けると案内しています。資料は画面で共有できるよう、事前に整理しておくと進めやすくなります。
面談のあとに、公庫から連絡が来ることはありますか?
あります。本文の支援先でも、面談のあとに公庫から確認の電話がありました。提出した資料の控えと、数字の根拠のメモを手元に置いておくと、落ち着いて答えられます。

創業融資の面談は、創業計画書に書いたことを、自分の言葉で説明し直す場です。事業の内容、事業計画、強み、経営者の経歴について、様式の欄を手がかりに準備し、根拠となる資料を別に用意しておくと、話がかみ合いやすくなります。自己資金は多いほど資金繰りに余裕ができますが、何倍まで借りられるという決まった線はありません。事業計画や説明資料をどう組み立てるかを、立ち上げの進め方とあわせて相談したい場合は、当社のスタートアップ支援で、いまの事業の段階で足りないところから、毎月ふり返りながら続けて一緒に進められます。

