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レガシーシステム、何から移すか|古いマクロ・Accessを業務を止めずに移す5つの手順

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「この集計表のマクロは、作った人が辞めてから誰も中を見ていない」「受注の管理に使っているAccessが、新しいパソコンで動くか分からない」。こうした声は、大きな会社だけでなく、社員数十人の会社でもよく聞きます。このような、古くなって直しにくくなったシステムを「レガシーシステム」と呼びます。この記事では、レガシーシステムの意味と問題点、経済産業省が示した「2025年の崖」の中身、中小企業で起きやすい例を整理します。そのうえで、何から手をつけ、業務を止めずに新しい仕組みへ少しずつ移すかを、5つの手順で紹介します。

この記事の結論

  • 問題は古さそのものではなく、中身を説明できる人がいない、直したいときに直せないことです。導入からの年数より、この2点で自社の状態を見ます。
  • 「2025年の崖」は日付が過ぎても終わっていません。2025年の総括レポートでは、回答したユーザー企業の61%がレガシーシステムを持っていると答えています。
  • 最初にやるのは、使っているエクセル・Access・パッケージを一覧にし、担当者、使う頻度、止まったときの影響を書き添えることです。
  • 使っていないものは移さずにやめ、残すものはまず市販のパッケージやクラウドサービスで足りるかを確かめます。作るのは自社の強みに関わる部分だけです。
  • 影響の小さい業務から1つずつ移し、古い仕組みと並べて数字が合うのを確かめてから止めます。移したあとも、分かる人を2人以上にしておきます。
目次

レガシーシステムとは:古いことより「直せない・変えられない」ことが問題

レガシー(legacy)は、英語で「遺産」「昔から受け継いだもの」という意味です。経済産業省が2025年5月にまとめた「レガシーシステムモダン化委員会総括レポート」では、レガシーシステムを、いくつかの要因で運用や保守、機能の改良が難しくなり、経営や事業の足かせや、高いコストの原因になっているシステム、と定めています[2]。要因として挙げられているのは次の5つです。

要因(総括レポートの分類)どういう状態か中小企業で見かける形の例
技術の老朽化古い技術や製品でできていて、扱える人が減っている。機械が壊れると代わりがない古い版のOfficeでしか動かないマクロ、専用のパソコンでしか動かないソフト
肥大化・複雑化継ぎ足しで大きく複雑になり、機能の追加や変更が難しいシートが何十枚もつながったエクセル、修正のたびに増えたAccessの画面
ブラックボックス化仕様や設計の資料がなく、中身が分かる人が限られている作った人が退職し、動いている理由を誰も説明できない
IT投資がされていないシステムをコストとだけ見て、壊れたときの応急処置で済ませている不具合が出るたびに手作業で回避し、根本の直しは後回し
古い制度としがらみ昔からの業務の進め方や、変えることへの抵抗が残っている「今の画面と同じでないと困る」という声で移行が止まる

同じレポートには、見落としやすい点も2つ書かれています[2]。一つは、古い技術で作られたシステムでも、保守の体制が整い、仕様がはっきりしていて改良を続けられるなら、レガシーシステムとは言えないということです。もう一つは、新しい仕組みに移したあとでも、保守の仕方に問題があれば再びレガシーになりうるということです。

ですから、「導入から何年たったか」だけで判断する必要はありません。「中身を説明できる人がいるか」「直したいときに直せるか」を見るほうが、自社の状態をつかみやすくなります。

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Background

「2025年の崖」で何が言われ、2025年を過ぎた今どうなっているか

レガシーシステムという言葉が広く知られるきっかけになったのは、経済産業省が2018年9月に公表した「DXレポート」です。DXは「デジタルトランスフォーメーション」の略で、デジタル技術を使って仕事の進め方や事業のかたちを変えることを指します。

このレポートは、古いシステムの問題を解決できなければ、2025年以降、最大で年12兆円の経済損失が生じる可能性があると試算しました[1]。これが「2025年の崖」と呼ばれています。あわせて、システムの維持管理費が高くなり、IT予算の9割以上を占めるようになるおそれも示されました[1]。新しいことに回すお金が残らなくなる、という指摘です。

では、2025年を迎えて問題は片づいたのでしょうか。前述の総括レポートは、2025年の崖を迎える中でも、レガシーシステムからの脱却は依然としてスピード感に欠ける、と書いています[2]。同じレポートに載っている調査では、回答したユーザー企業の61%がレガシーシステムを持っていると答えました[2]。

つまり「2025年の崖」は、日付が過ぎたら終わる話ではありません。古いシステムを抱えたままでいると、少しずつ困りごとが増えていく状態が今も続いている、と受け止めるのが実態に近いでしょう。

Problems

レガシーシステムの問題点:中小企業で表に出やすい4つ

1. 分かる人が1人しかいない

社内で作ったエクセルやAccessは、作った人の頭の中にしか仕様がないことがよくあります。その人が異動や退職をすると、不具合が出ても原因を探せません。毎月の請求や在庫の数字が、その1つのファイルに頼っている場合は特に危険です。

2. ソフトの保守期間が切れる

製品には、メーカーが修正を出してくれる期間(サポート期間)があります。マイクロソフトの公式ページによると、Office 2016とOffice 2019(AccessやExcelの2016・2019を含む)は2025年10月14日に、Office 2021とOffice LTSC 2021(Access・Excelを含む)は2026年10月13日にサポートが終わりました。Windows 10のHomeとProも2025年10月14日にサポートが終わっています[3][6]。サポートが終わった製品には、新しい安全のための修正が出ません。

3. 安全のための仕組みと合わなくなる

マクロ(VBA)は、悪意のある人がウイルスを送り込む手口としてよく使われてきました。そのため、Windows版のOfficeでは、インターネットから来たファイル(メールの添付など)に入ったマクロが、初めから止まるように変わっています。AccessとExcelもこの対象です[4]。取引先とマクロ入りのファイルをやり取りする運用は、この変更でつまずくことがあります。

4. データを外に出せず、新しい道具とつなげない

総括レポートは、古いシステムが足かせとなって、生成AIなどの新しい技術を使いたくても、つなぐ・組み込む作業がうまく進まない問題を挙げています[2]。中小企業の場合、データがファイルの中に閉じていて、ほかの仕組みに渡せない形になっていることが多く、ここが最初の壁になります。

Examples

中小企業で起きやすいレガシーシステムの例

レガシーシステムというと、大企業の大型コンピューター(メインフレーム)を思い浮かべがちです。ただ、中小企業にも同じ問題はあり、総括レポートは、中小企業では投資にあてられる体力に加えて、ITの知識や人手の不足が目立つと書いています[2]。中小企業でよく見るのは、次の3つの形です。

古いエクセルマクロ

見積書や月次の集計を、ボタン一つで作るマクロです。便利な反面、作った人しか直せない、特定の版でしか動かない、ファイルが何本も複製されてどれが正しいか分からない、という状態になりがちです。マクロを使う前の段階で、関数や集計の機能で足りるかを見直す方法はエクセル自動化を4段階で考える記事で紹介しています。

Access(アクセス)で作った台帳や受発注の管理

Accessは、マイクロソフトのデータベース(データをためて検索するための仕組み)のソフトです。顧客台帳や受発注の管理に使われていることが多く、データそのものは会社の財産です。ただ、画面や帳票を継ぎ足すうちに複雑になり、複数人で同時に使うと遅い、外から見られない、といった不満が出やすくなります。

保守の切れたパッケージ

何年も前に買った販売管理や生産管理のソフトで、メーカーの保守が終わっている、あるいは自社向けに手を加えすぎて新しい版に上げられない、という状態です。動いているうちは困らないため、パソコンの入れ替えや法律の改正で使えなくなって初めて問題になります。

例まず確かめること移し先として考えやすいもの
古いエクセルマクロ何をしているマクロか、誰が使っているか、動く版はどれか関数や集計機能への置き換え、市販のクラウドサービス、小さな業務アプリ
Accessの台帳・受発注管理テーブル(表)の数と中身、画面と帳票の数、同時に使う人数クラウドのデータベースや業務アプリ、販売管理などのパッケージ
保守の切れたパッケージ保守の期限、自社向けに手を加えた箇所、データを書き出せるか同じ業務のパッケージやクラウドサービス(手を加える範囲は小さく)

Process

刷新の進め方:一度に入れ替えず、段階的に移す

総括レポートによると、企業がシステムの刷新を決めるきっかけは、大きな障害や保守を担う人の離脱といった、追い込まれてからの理由が上位を占めています[2]。総括レポートは、こうした作り替えを「レガシーシステムのモダン化」と表現しています[2]。IPA(情報処理推進機構)の解説では、レガシーシステムになってしまう悪い特徴を取り除き、変化に合わせて手を入れ続けられる状態にすることを「モダン化」または「モダナイゼーション」と呼ぶ、と説明しています[5]。追い込まれてからだと、選べる手が少なくなります。困りごとが小さいうちに、次の順番で進めるのがおすすめです。

  1. 今あるものを書き出す:使っているエクセル、Access、パッケージを一覧にし、担当者、使う頻度、止まったときの影響を書き添えます。総括レポートや、それを解説したIPAのページでも、最初にすることとして、システムの全体像をつかむこと(可視化)が挙げられています[2][5]。
  2. やめる・置き換える・作るに分ける:もう使っていない帳票や機能は、移さずにやめます。残すものは、まず市販のパッケージやクラウドサービスで足りるかを確かめます。総括レポートは、経営資源に限りのある中堅・中小企業はオーダーメイドの開発を避け、パッケージやSaaS(インターネット経由で使うソフト)を原則とすべきだと書いています[2]。自社の強みに関わる部分だけを作る、と考えると線を引きやすくなります。
  3. データを先に整える:画面より先に、顧客や商品などのデータの項目と持ち方を決めます。古いファイルからデータを書き出し、重複や表記の揺れを直しておくと、どの移し先を選んでも作業が楽になります。
  4. 影響の小さい業務から切り替える:いきなり全部を入れ替えず、1つの業務から新しい仕組みに移します。しばらくは古い仕組みと並べて使い、数字が合うことを確かめてから古いほうを止めます。
  5. 移したあとも手入れを続ける:仕様を文書に残し、分かる人を2人以上にします。前述のとおり、移したあとでも放っておけば再びレガシーになりうるからです[2]。

大きなシステムの刷新は数年がかりの計画になりやすく、途中で見直しが入るとさらに長くなる、とも総括レポートは指摘しています[2]。だからこそ、1つ目の業務を早めに移し終え、そこで得た手順を次に生かすほうが、全体を進めやすくなります。パッケージやSaaSを使うか一から作るかの判断はスクラッチ開発とパッケージ・SaaS・ノーコードの違いの記事で詳しく扱っています。

Checklist

刷新を外に頼む前に、社内で決めておくこと

移行を開発会社に頼む場合でも、次の点は社内でしか決められません。書き出してから相談すると、見積もりの前提がそろい、話が早く進みます。

  1. 今の仕組みでやっていることの一覧:画面や帳票ごとに、誰がいつ使うかを書き出します。
  2. 移さないものの一覧:使っていない帳票や、手作業に戻してよい処理を書き出します。
  3. 止められない期間:決算や繁忙期など、切り替えを避けたい時期を決めます。
  4. データの持ち主:顧客や商品の情報を、どの部署が正しい状態に保つかを決めます。
  5. 決める人:「今の画面と同じにしたい」という要望に、その場で答えを出せる人を決めておきます。

見積もりを取る前の確かめ方はシステム開発会社への見積もり依頼前のチェックポイントの記事、契約の形の違いは受託開発と請負の違いの記事にまとめています。上の5つを書き出したら、それを開発会社に渡す依頼書の形に整えると、複数の会社の見積もりを同じ前提で比べられます。書き方は提案依頼書(RFP)の書き方の記事で紹介しています。

FAQ

レガシーシステムについてよくある質問

レガシーシステムとは、簡単に言うと何ですか?

古くなって中身が分かりにくくなり、直したり変えたりするのが難しくなったシステムのことです。経済産業省の総括レポートでは、運用や改良が難しくなり、経営の足かせや高いコストの原因になっているシステムと定めています。古い技術で作られていても、きちんと保守され改良を続けられるならレガシーではない、とされています。

2025年を過ぎたので、「2025年の崖」はもう関係ありませんか?

関係はあります。2025年5月の総括レポートも、レガシーシステムからの脱却は依然としてスピード感に欠けると書いています。2025年は警告の目安の年で、古いシステムを抱えるほど困りごとが増えるという構図は今も変わっていません。

Accessで作った仕組みは、すぐに使えなくなりますか?

すぐに止まるとは限りません。ただ、Access 2016と2019は2025年10月14日に、Access 2021(LTSC 2021を含む)は2026年10月13日にサポートが終わっています。月額で使うMicrosoft 365のアプリ(Microsoft 365 Apps)は、マイクロソフトの公式ページで「サポート内」とされていて、今回の終了の対象ではありません[7]。買い切り版を使っている場合は、まず版と動かしている環境を確かめてください。データは書き出せるうちに、整理して残しておくと安心です。

全部を新しく作り直したほうがよいですか?

多くの場合、全部を作り直す必要はありません。使っていない機能はやめ、残すものはまず市販のパッケージやクラウドサービスで足りるかを確かめます。自社ならではの部分だけを作り、1つの業務ずつ移すほうが、費用と業務が止まる危険の両方を抑えやすくなります。

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レガシーシステムは、古いことそのものより、中身が分からず直せないことが問題です。2018年のDXレポートが示した「2025年の崖」は、2025年を過ぎた今も、古い仕組みを抱えた会社の困りごととして続いています。中小企業では、古いエクセルマクロやAccess、保守の切れたパッケージがその入り口になりがちです。まずは今あるものを書き出して、やめるものと置き換えるものを分けてください。そのうえで1つの業務ずつ移していくと、業務を止めずに刷新を進めやすくなります。当社では、今の業務の流れを伺い、既製のシステムで足りるかどうかも含めて、どこを新しい仕組みにするかを一緒に決めるところからご相談いただけます。

監修・運営:オプティソース株式会社

経営と起業の実務家チームが、AIを使って事業づくり、集客・営業の強化、業務改善を進める会社です。自社でも製造業向けの事業とサービスを運営し、そこで試したやり方をお客様の事業に使っています。

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