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資本政策表の作り方|キャップテーブルの項目と、ラウンドごとの比率の動きを数字の例で確認

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投資家と話し始めると、「資本政策表を見せてください」と言われることがあります。けれども、はじめて出資を受ける創業者にとっては、何をどこまで書けばよいのかが分かりにくい表です。株主の名前と株数を並べただけでは足りず、まだ株になっていない権利(ストックオプションやJ-KISSなど)や、次の調達で比率がどう変わるかまで書く必要があります。この記事では、資本政策表(キャップテーブル)とは何かを確認したうえで、表に入れる項目、作る手順、架空の会社の数字を使ったラウンドごとの比率の動き、議決権の節目、よくある失敗を順に説明します。

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この記事の結論

  • 資本政策表は、誰が何株持っているかと、その比率が調達のたびにどう変わるかを、時間の順に並べた表です。
  • 発行済みの株と、ストックオプションやJ-KISSなどの潜在株を分けて書き、「発行済みベース」と「潜在株込みベース」の2つの比率を並べます。
  • 創業者の比率が3分の2・過半数・3分の1の節目を下回るラウンドに印を付け、いつ下回るかを分かったうえで調達の計画を決めます。
  • はじめての調達の前に、少なくとも次の2回分のラウンドを仮に置いて、創業者の比率がどこまで下がるかを見ておきます。
  • 「現在」の列は登記と株主名簿に合わせ、調達のたびに見直します。
目次

資本政策表とは:誰が、どれだけ株を持つかを、調達の前後で並べた表

資本政策表は、会社の株を誰がどれだけ持っているかを一覧にし、資金調達のたびにその数と比率がどう変わるかを、時間の順に並べた表です。英語では「キャップテーブル(Cap Table。Capitalization Table の略)」と呼ばれ、日本でもこの呼び方がよく使われます。この記事では2つを同じものとして扱います。

なぜこの表が大事なのかというと、株の比率は会社の決め事を左右するからです。株主総会では、原則として株1株につき1個の議決権があります[1]。株を持つ割合がそのまま、会社の大事なことを決める力の大きさになります。

もう1つの理由は、一度渡した株は簡単には戻ってこないことです。調達のたびに新しい株を発行すると、創業者の株数は変わらなくても、全体に占める割合は下がります。これを「希薄化(きはくか)」と呼びます。最初の調達で比率を出しすぎると、2回目、3回目の調達で創業者の割合が思ったより早く下がってしまいます。資本政策表は、この動きを先に数字で見ておくための道具です。

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Items

資本政策表に入れる項目

決まった書式はありませんが、投資家に見せる表には、少なくとも次の項目があると話が早く進みます。

項目書くこと注意する点
株主の名前創業者、共同創業者、役員、従業員、投資家など個人と会社(ファンド)を分けて書く
内部・外部の区分経営に関わる人(内部)か、投資家など外の人(外部)か内部の合計比率を見ると、経営陣がどれだけ決める力を持っているかが分かる
株数(発行済み)すでに発行され、持っている株の数登記や株主名簿と一致させる
潜在株ストックオプション、J-KISSなど、あとで株になる権利まだ株ではないので議決権はないが、将来の比率には効いてくる
ラウンド設立時、シード、シリーズAなど、株が増えた時点ラウンドごとに列(または表)を分ける
1株の値段そのラウンドで株を発行した値段設立時と調達時では値段が大きく違うのが普通
調達額そのラウンドで会社に入ったお金1株の値段×発行した株数と合うか確かめる
比率(発行済みベース)発行済みの株だけで計算した割合議決権の計算はこちらで行う
比率(潜在株込みベース)潜在株がすべて株になったと仮定した割合将来の持ち分を考えるときはこちらを見る。「完全希薄化後」とも呼ぶ

このうち、はじめての方がつまずきやすいのは「潜在株」です。ストックオプションは、会社法では「新株予約権」の一種で、新株予約権とは「会社に対して行使することで、その会社の株を受け取れる権利」と定められています[1]。権利を使う(行使する)までは株ではないので、議決権はありません。ただ、行使されれば株が増え、ほかの株主の比率は下がります。

J-KISSも同じように、あとで株になる権利です。J-KISSは、500 Startups Japan(現在のCoral Capital)が2016年4月に公開したシード期向けの投資契約のひな形で、形の上では新株予約権です[2]。2022年4月に公開された2.0版では、転換の上限の考え方が「ポストマネー(調達後の会社の価値)」を基準にする形に変わりました[2]。

Steps

資本政策表を作る手順5つ

表計算ソフトで作る前提で、順番に説明します。当社でも、表の形をそろえた資本政策表のテンプレート(Excel)を無料で公開しています。

手順1:いまの株主と株数を、登記と株主名簿に合わせて書く

最初の列は「現在」です。株主ごとの株数を、登記されている発行済み株式の総数と、株主名簿に合わせて書きます。株主総会の決議が要る登記を申請するときは、議決権の多い株主の名前・住所・株数・議決権数などを書いた「株主リスト」を添えることになっているため[3]、登記の手続きでも株主の構成を書き出す場面があります。共同創業者に「あとで株を渡す」と口約束している場合でも、まだ発行していなければこの列には入れません。約束は別の欄にメモしておきます。

手順2:潜在株を別の行に分けて書く

すでに発行したストックオプションや、すでに受けたJ-KISSの出資は、株主の行とは分けて「潜在株」の行に書きます。ストックオプションは、まだ配っていない枠(プール)も含めて書いておくと、次の調達で投資家と話がかみ合いやすくなります。J-KISS 2.0の契約書のひな形でも、転換の値段を計算するときの株数に、まだ付与していないストックオプションの枠を含めることになっています[4]。J-KISSは、次の調達まで株数が決まらないので、「金額」と「転換の上限(評価上限額)」を書き、株数は見込みとして別に計算します。

手順3:次のラウンドの条件を仮に置く

次に予定している調達について、調達額と、調達前の会社の価値(プレマネー)を仮に置きます。この2つが決まれば、1株の値段と新しく発行する株数が計算できます。値段は交渉で決まるものなので、ここでは幅を持たせて2〜3通り置いておくと、交渉の場で慌てずに済みます。条件を置いたら、どの投資家に話を持っていくかも考えておきます。進め方はベンチャーキャピタルの一覧から当たる先のリストを作る方法で紹介しています。

手順4:ラウンドごとに、2つの比率を並べる

各ラウンドの後について、発行済みベースと潜在株込みベースの2つの比率を並べます。片方だけだと、議決権と将来の持ち分の話が混ざります。比率は、各株主の株数をそのラウンド後の合計株数で割って出します。発行済みベースでは分母に発行済みの株だけを入れ、潜在株込みベースでは、ストックオプションの枠とJ-KISSの転換見込みの株数も分母に足します。表計算ソフトでは、合計の欄を2つ作り、それぞれを参照する式にしておくと、条件を変えたときに比率がすぐ計算し直されます。

手順5:創業者の比率が、節目を下回る時点に印を付ける

最後に、創業者(または経営陣の合計)の比率が、後で説明する議決権の節目(3分の2・過半数・3分の1)を下回るのがどのラウンドかを確認し、印を付けます。下回ること自体が悪いわけではありません。いつ下回るのかを分かったうえで調達の計画を決めることが大事です。

Example

架空の会社で見る、ラウンドごとの比率の動き

ここからは、架空の会社の数字で表を作ってみます。数字は考え方を示すために単純にしたもので、実際の条件は契約や交渉で決まります。

前提

  • 設立時:創業者Aが8,000株、共同創業者Bが2,000株。合計10,000株を1株500円で発行(合計500万円)
  • ストックオプションの枠:従業員向けに800株分を用意
  • シード:J-KISSで3,000万円を受ける。評価上限額は3億円(ポストマネー)
  • シリーズA:プレマネー9億6,000万円で、2億4,000万円を株で調達

J-KISS 2.0の契約書のひな形では、転換の値段は、評価上限額を次の調達の直前の株数(潜在株込み)で割った額と、次の調達の値段から割り引いた額のうち、低い方になります[4]。評価上限額で転換する場合、調達額を評価上限額で割った割合が、シリーズAの直前の持ち分の目安になります。たとえば3,000万円を評価上限額3億円で受けた場合は10%です[4]。この例では、シリーズA直前の株数(創業者10,000株+ストックオプションの枠800株+J-KISSの転換分)の10%がJ-KISSの転換分になるとして計算し、転換分を1,200株、合計を12,000株としています(1株あたり2万5,000円)。実際の転換株数の計算は契約書の定めによります。

シリーズAは、プレマネー9億6,000万円を12,000株で割って1株8万円です。2億4,000万円を8万円で割ると、新しく発行する株は3,000株になります。

株主区分設立時シード後(潜在株込み)シリーズA後(発行済み)シリーズA後(潜在株込み)
創業者A内部8,000株(80.0%)8,000株(66.7%)8,000株(56.3%)8,000株(53.3%)
共同創業者B内部2,000株(20.0%)2,000株(16.7%)2,000株(14.1%)2,000株(13.3%)
ストックオプション(枠)内部―800株(6.7%)―(未行使)800株(5.3%)
J-KISS投資家外部―1,200株(10.0%)※見込み1,200株(8.5%)1,200株(8.0%)
シリーズA投資家外部――3,000株(21.1%)3,000株(20.0%)
合計10,000株12,000株14,200株15,000株
1株の値段500円2万5,000円(転換時)8万円
調達額500万円3,000万円2億4,000万円

J-KISSの株数と値段は、シリーズAで転換したときの見込みです。この表から分かることは3つあります。

1つめは、シードの時点で、発行済みの株だけを見ると創業者Aは80%のままですが、潜在株込みでは66.7%になっていることです。J-KISSやストックオプションは、株になる前から将来の比率を押し下げています。

2つめは、シリーズAの後、創業者Aひとりの議決権は56.3%で、過半数は保っていますが3分の2には届かないことです。創業者AとBを合わせると70.4%で、3分の2を上回っています。

3つめは、潜在株込みで見ると、創業者AとBの合計は10,000株÷15,000株で、ちょうど3分の2(66.7%)まで下がっていることです。ストックオプションがすべて行使されると、2人を合わせても3分の2ぎりぎりになり、次のラウンドでさらに株を発行すれば3分の2を下回ります。

Voting

議決権の節目:3分の1・過半数・3分の2

比率を見るときの目安になるのが、株主総会の決議の要件です。会社法の条文で確かめると、次のようになっています。

  • 過半数(普通決議):定款に別の定めがなければ、議決権の過半数を持つ株主が出席し、出席した株主の議決権の過半数で決めます[1]。
  • 3分の2(特別決議):議決権の過半数を持つ株主が出席し、出席した株主の議決権の3分の2以上で決めます。新しく株を発行するときの条件の決定、新株予約権(ストックオプションを含む)を発行するときの条件の決定、定款の変更などがこれに当たります[1]。
  • 3分の1:特別決議は出席した議決権の3分の2以上が必要なので、出席した議決権の3分の1を超える反対があると成立しません。3分の1を超えて持つ株主は、特別決議を止められる立場にあるということです[1]。

株の譲渡に会社の承認が要る会社(非公開会社)では、新しく株を発行するときの条件は、株主総会で決めることになっています[1]。つまり、創業者が3分の2を持っていれば、次の調達やストックオプションの発行を自分たちで決めやすくなります。反対に、外部の株主が3分の1を超えて持つと、その株主の同意なしには次の調達の手続きが進まない場面が出てきます。1%・3%・10%のように、ここで挙げた節目より小さい比率で株主ができることは、持株比率ごとに株主ができることを会社法の条文つきで整理した記事で確かめられます。

なお、定款で決議の要件を変えている場合や、優先株式などの種類株式を発行している場合は、これとは違う手続きが必要になることがあります。種類株式を発行している会社では、株主総会とは別に、その種類の株主だけで開く「種類株主総会」の決議が必要になる場面もあります[1]。自社の場合にどうなるかは、定款と投資契約を見たうえで、弁護士や司法書士に確かめてください。

Pitfalls

資本政策表でよくある失敗

創業者の比率が早く下がる

最初の調達で急いで資金を集めようとして、低い値段で多くの株を出してしまうと、その後のラウンドで取り戻す方法はほとんどありません。調達する前に、少なくとも次の2回分のラウンドを仮に置いて表を伸ばし、創業者の比率がどこまで下がるかを見ておくと、1回目の条件を決めやすくなります。

潜在株を数え忘れる

発行済みの株だけで表を作り、ストックオプションの枠やJ-KISSを入れ忘れるのは、よくある失敗です。投資家と将来の持ち分を話すときは、潜在株込みの比率が基準になることがあります。創業者は「自分は80%持っている」と思っていても、投資家の計算では66.7%ということが起こり、条件の話がかみ合わなくなります。

J-KISSの転換株数を書かない

J-KISSは、受けた時点では株数が決まっていません。そのため、金額だけを書いて株数の欄を空けたままにしがちです。次のラウンドで実際に何株に転換されるかは、評価上限額などの条件と、そのときの1株の値段で決まります。表には、評価上限額で転換したと仮定した株数を見込みとして書き、条件が決まったら書き直す、という扱いにしておくと、次の調達のときに比率の見込みを外しにくくなります。

表と登記・株主名簿がずれる

表だけを更新して登記や株主名簿の手続きが遅れると、どちらが正しいのか分からなくなります。調達のたびに「現在」の列を見直しておくと安心です。

資本政策表は、ピッチ資料と一緒に投資家に見せることが多い資料です。資料の作り方は、ピッチ資料を構成から一緒に磨いた記録でも紹介しています。また、段階ごとにどんな準備をしたかはスタートアップ支援の事例にまとめています。

FAQ

資本政策表についてよくある質問

資本政策表とキャップテーブルは違うものですか?

ほぼ同じものを指すと考えて大丈夫です。キャップテーブルは英語の呼び方です。使う人によって、今の株主構成だけを指すこともあれば、今後の調達の計画まで含めた表を指すこともあります。この記事では、計画まで含めた表として説明しています。

資本政策表はいつから作ればよいですか?

はじめて出資を受ける前、できれば共同創業者と株の分け方を決める段階から作るのがおすすめです。設立時の株の分け方は、あとから変えるのが難しいからです。

ストックオプションの枠は、表に入れる必要がありますか?

入れてください。まだ配っていない枠も含めて潜在株として書いておくと、投資家の計算と自社の計算がそろいます。枠を入れないで比率を示すと、あとで条件を見直すことになりやすくなります。

資本政策表は、自分で作っても大丈夫ですか?

表そのものは表計算ソフトで作れます。ただし、株の発行や定款の変更の手続き、税金の扱いは、条件によって変わります。たとえばストックオプションは、法律の要件を満たして「ストック・オプション税制」の適用を受けると、権利を使った(行使した)時点では課税されず、株を売ったときに課税されます[5]。表で方針を固めたら、実際の手続きの前に弁護士・司法書士・税理士などの専門家に確かめてもらうと安心です。

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資本政策表は、株主ごとの株数と比率を、調達の前後で並べた表です。作るときは、発行済みの株と潜在株を分けて書き、2つの比率を並べ、創業者の比率が3分の2・過半数・3分の1の節目を下回るラウンドに印を付けておきます。はじめての調達の前にこの表を作っておくと、条件の交渉で「この値段だと、2回後に比率はどうなるか」をその場で確かめられます。当社では、ピッチ資料や事業計画の準備、当たる投資家のリスト作りなど、はじめての資金調達の準備をご相談いただけます。

監修・運営:オプティソース株式会社

経営と起業の実務家チームが、AIを使って事業づくり、集客・営業の強化、業務改善を進める会社です。自社でも製造業向けの事業とサービスを運営し、そこで試したやり方をお客様の事業に使っています。

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