決算は黒字の見込みなのに、来月末の支払いに口座のお金が足りない。売上が伸びている時期ほど、こうしたことは起きやすくなります。お金が足りなくなる状態は「資金ショート」と呼ばれ、利益が出ていても起きます。この記事では、黒字でも起きる原因を例の数字で整理し、何か月前に気づけば手が打てるかを、融資や補助金にかかる時間から考えます。そのうえで、資金繰り表での前兆の見つけ方と、起きそうなときの手を、公的な資料で確かめた範囲でまとめます。
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この記事の結論
- 資金ショートは、支払う日に払うお金が口座にない状態です。利益が出ていても、入金より先に支払いの日が来れば起きます。
- 黒字で起きる主な原因は、売掛金の回収と支払いのずれ、在庫の増加、借入の元金の返済、納税・賞与など年に数回の大きな支払いです。
- 日本政策金融公庫の融資は申込みから送金まで1か月程度かかり、補助金は後払いです。そのため、足りない月には遅くとも1か月以上前に気づく必要があり、資金繰り表で3〜6か月先まで見ておきます。
- 資金繰り表は、3か月先までを取引先ごと・日付ごとに細かく、その先は6か月先(据置期間の終わりや納税の月がその先なら、その月まで)を月ごとに入れます。
- 足りない月が見えたら、まず入金を早める手と支払いを遅らせる手から考え、返済条件の変更や融資は早めに金融機関へ相談します。
資金ショートとは:支払う日に、払うお金が口座にない状態
資金ショートとは、仕入代金や給与、家賃、借入の返済などを支払う日に、それに足りるお金が手元にない状態のことです。「資金が底をつく」「キャッシュが回らない」と言われることもあります。
大事なのは、資金ショートが利益の大小とは別に起きる点です。会計の利益は「売上が立った時点」で計算しますが、お金が口座に入るのは、請求書を出して取引先が払った時点です。この時間差のあいだに支払いの日が来れば、黒字の会社でも払えなくなります。こうして利益が出ているのに支払いができなくなり、事業が続けられなくなることを、一般に「黒字倒産」と呼びます。
倒産そのものは身近な話です。東京商工リサーチの集計では、2025年の全国の企業倒産(負債1,000万円以上)は1万300件で、2024年に続いて1万件を超えました。同じ集計で、コロナ禍の実質無利子・無担保融資(いわゆるゼロゼロ融資)を使ったあとに倒産した企業は433件とされています[1]。借りたお金の返済が始まってから資金が苦しくなる流れは、次の節で見る原因の1つです。
支払いが1回遅れただけで会社がなくなるわけではありませんが、取引先や金融機関からの信用には響きます。仕入先への支払いが遅れれば、次の取引を断られたり、前払いを求められたりすることがあります。給与や借入の返済が遅れると、従業員や金融機関との関係にも影響します。足りなくなる前に気づくことが、いちばん効く対策です。
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Causes
黒字でも資金ショートが起きる原因
原因はいくつかありますが、黒字の会社で起きるものは、ほとんどが「お金の出る日が、入る日より先に来る」という形にまとめられます。
原因1:売掛金の回収と、支払いの日がずれる
売掛金(うりかけきん)とは、商品やサービスを先に渡し、代金はあとで受け取る約束になっているお金のことです。「月末締め・翌々月末払い」のような条件だと、売上が立ってから入金まで約2か月かかります。一方で、外注先や仕入先への支払いは「翌月末払い」というように、先に来ることがあります。
この時間差は、売上が伸びている時期ほど大きくなります。仕事が増えるほど、先に払う外注費や仕入代金も増えるからです。架空の例で確かめてみます。
ある会社が、毎月の売上の60%を外注費として翌月末に支払い、売上の入金は翌々月末、固定費(人件費や家賃など)は毎月100万円かかるとします。1月の初めの口座残高は500万円です。
| 月 | その月の売上 | その月の利益 | 入金 | 外注費の支払い | 固定費 | 月末の口座残高 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1月 | 300万円 | 20万円 | 0円 | 0円 | 100万円 | 400万円 |
| 2月 | 500万円 | 100万円 | 0円 | 180万円 | 100万円 | 120万円 |
| 3月 | 800万円 | 220万円 | 300万円 | 300万円 | 100万円 | 20万円 |
| 4月 | 800万円 | 220万円 | 500万円 | 480万円 | 100万円 | マイナス60万円 |
※数字はこの記事のための架空の例です。利益は「売上-外注費(売上の60%)-固定費」で計算しています。
毎月きちんと利益が出ているのに、4月末には口座が60万円足りなくなります。売上が増えた2月と3月の外注費を、入金より先に払っているためです。売上の伸びが止まれば入金が追いついてきますが、それまで持ちこたえられるかは口座の残高しだいです。
原因2:在庫にお金が眠る
商品を仕入れて売る事業では、仕入れた時点でお金が出ていき、売れるまで戻ってきません。在庫は帳簿の上では「資産」として残るので利益は減りませんが、手元のお金は減っています。まとめ買いや売れ残り、新商品の作りすぎで在庫が膨らむと、お金が足りなくなります。
原因3:借入の元金の返済は、利益から引かれない
借入の返済のうち、利息は経費になりますが、元金の部分は経費になりません。そのため、損益計算書の利益が十分あっても、元金を返したあとの手元のお金はずっと少ないことがあります。据置期間(元金を返さなくてよい期間)が終わって元金の返済が始まった月から、急に苦しくなるのはこのためです。
原因4:年に数回だけ出ていく大きな支払い
法人税や消費税の納付、賞与、保険料の年払いなどは、毎月の感覚では見えにくい支払いです。普段の月はぎりぎり回っていても、これらが重なる月にだけ足りなくなる、ということが起きます。
このほか、取引先が倒れて売掛金が回収できなくなる、大きな注文が取り消される、といった外からの出来事もきっかけになります。原因ごとに、どこに表れるかを整理すると次のようになります。
| 原因 | お金の動きで起きていること | 先に見ておく数字 |
|---|---|---|
| 回収と支払いのずれ | 入金より先に外注費・仕入代金を払う | 入金までの日数と、支払いまでの日数の差 |
| 在庫の増加 | 仕入れたお金が商品のまま戻らない | 在庫が何か月分の売上にあたるか |
| 借入の元金の返済 | 利益から引かれないお金が毎月出ていく | 据置期間の終わる月と、毎月の元金の額 |
| 年に数回の大きな支払い | 特定の月にだけ支払いが集中する | 納税・賞与・年払いの月と金額 |
| 取引先の倒産・注文の取り消し | 予定していた入金が来ない | 1社からの入金に頼る割合 |
Early Signs
前兆の見つけ方:資金繰り表で何か月先まで見るか
資金ショートは、ある日突然起きるように見えて、実は数か月前から数字に表れています。それを見つける道具が資金繰り表です。資金繰り表とは、月ごとに「いくら入り、いくら出て、月末にいくら残るか」を並べた表で、損益計算書と違って、お金が実際に動く月で書きます。
何か月先まで見るか
見る期間は、「足りないと分かってから、手を打ってお金が届くまでの時間」より長くとる必要があります。たとえば日本政策金融公庫は、申込みから融資金の送金が終わるまでの日数を1か月程度(土日・祝日を含む)とし、条件や支店の混み具合によってはもっとかかると案内しています[2]。補助金は、あとで見るとおり使ったあとに支払われる仕組みです。
中小機構の J-Net21 は、過去の実績をもとに3〜6か月先の資金を予測するとよいとしています[3]。こうした時間を考えると、次のように分けて見ると使いやすくなります。
- 3か月先まで:入金と支払いの予定を、取引先ごと・日付ごとに細かく入れます。ここで足りない月が見えたら、すぐ動きます。
- その先(6か月先まで):売上の見込みと、納税・賞与・借入の返済のような決まった支払いを月ごとに入れます。借入の据置期間が終わる月や納税の月がその先にあるなら、その月まで延ばして入れておきます。融資の相談を始める時期を決めるために使います。
表は月に1回、実績を入れて更新し、予定とずれた所(入金の遅れか、支払いの増加か)を書き残します。当社では、月ごとの入出金と月末残高を並べられる資金繰り表のテンプレート(Excel)を無料で公開しています。前月繰越から翌月繰越までの項目の並びや、エクセルで自動計算するときの式の組み方は、資金繰り表の書き方の記事で詳しく説明しています。
表のどこを見ると前兆に気づけるか
資金繰り表を作ったら、次の3つを毎月確かめます。
- 月末残高が「最低限残しておく額」を下回る月がないか:最低限の額は、たとえば「固定費の2か月分」のように会社で先に決めておきます。マイナスになる月より前に、この線を割る月で手を打ちます。
- 入金までの日数が延びていないか:売掛金の残高を月の売上で割ると、ざっくり「何か月分の売上が未回収か」が分かります。この数字がじわじわ大きくなっていたら、支払いの遅い取引先が増えているか、回収の連絡が漏れているおそれがあります。
- 在庫と借入の返済が、売上より速く増えていないか:売上が伸びる前に在庫や返済が増えると、入金より先にお金が出ていき、口座の残高が先に減っていきます。
請求書の発行や入金の確認が手作業で遅れていると、表の数字そのものが古くなります。請求から入金の確認(消込)までを先に整えておく進め方は、経理の自動化をどこから始めるかの記事で紹介しています。
Measures
資金ショートが起きそうなときの対策
足りない月が見えたら、まず入金を早める手と、支払いを遅らせる手から考えます。どちらも審査や書類の手続きがいらず、自社と取引先のあいだで決められるので、融資などの外から資金を入れる手より早く効くことが多いからです。
入るお金を早める
まず、請求書を出すのが遅れていないかを確かめます。納品から請求まで日が空いているだけで、入金はその分あとにずれます。新しい取引や大きな案件では、着手金や前受金(作業の前にもらう一部の代金)をお願いできないかも検討します。
取引先から製造や修理、ソフトウェアやデザインの制作、サービスの提供などを請け負っていて、取引先の会社の規模が大きい場合、2026年1月1日から施行された中小受託取引適正化法(取適法)で、手形での支払いは禁止され、支払期日は品物などを受け取った日から60日以内と定められています[4][5]。対象になるかは、取引の種類と、双方の資本金または従業員数で決まるので、公正取引委員会の資料で確かめたうえで、支払い条件の見直しを相談してください[4]。
出るお金を遅らせる・減らす
仕入先や外注先に、支払いの日を一時的に延ばせないか、分けて払えないかを相談します。相手にも資金繰りがあるので、早めに、事情と返せる見込みを添えて話すのが筋です。急ぎでない設備の購入や、まとめ買いによる在庫の積み増しを見送るのも、出ていくお金を減らす手です。
借入の返済が重い場合は、取引のある金融機関に返済条件の変更(返済額を一時的に減らす、期間を延ばす)を相談します。一人で話を進めにくいときは、国が47都道府県に設けている「中小企業活性化協議会」という公的な窓口があります。収益力の改善や事業の立て直しなどの経営課題について支援を行っており、最初の段階までは無料で使えます[6]。
融資を受ける
運転資金(日々の支払いに回すお金)の融資は、取引のある金融機関や日本政策金融公庫に相談します。日本政策金融公庫(国民生活事業)の「経営環境変化対応資金(セーフティネット貸付)」は、景気や取引先の事情など外からの要因で一時的に売上が減るなどして経営が苦しくなったものの、先々は持ち直す見込みがある事業者向けの融資です。融資限度額は7,200万円、運転資金の返済期間は10年以内(うち据置期間3年以内)とされています[7]。細かい条件があるので、使えるかどうかは窓口で確かめてください。
相談は、足りない月の直前ではなく、資金繰り表で見えた時点で始めます。公庫の融資制度と審査で見られる点は、日本政策金融公庫の創業融資の記事でも整理しています。
補助金は「後払い」なので、目の前の不足には使えない
補助金は返さなくてよいお金ですが、資金ショートの対策としては間に合いません。中小企業庁の「ミラサポplus」の解説では、補助金は事業が終わったあとに支払われるため、事業の経費はいったん自分のお金で立て替える必要があるとされています。交付決定の前に発注した経費は対象外で、事業が終わったあとも実績報告、検査、金額の決定、請求という手順を踏んでから受け取ります[8]。補助金を使う予定があるなら、むしろ立て替える分を資金繰り表に入れておく必要があります。どんな補助金があるかは新規事業で使える補助金の種類の記事をご覧ください。
ファクタリングを使う前に確かめること
ファクタリングとは、売掛金を専門の会社に買い取ってもらい、入金日より前に現金を受け取る取引です。金融庁は、ファクタリングを装って貸付を行う無登録の業者がいると注意を呼びかけています。回収できなかったときに自社のお金で業者に払う義務を負う場合などは貸金業にあたるおそれがあり、高い手数料でかえって資金繰りが悪くなるおそれもあるとしています[9]。使う場合は契約の中身と手数料を確かめ、不安があれば弁護士などに相談してください。
ここまでの手を、お金が動くまでの時間とあわせて並べると次のようになります。
| 手段 | お金が動くまでの時間の目安 | 気をつけること |
|---|---|---|
| 請求を早く出す・前受金をもらう | 次の請求・次の契約から効く | 取引先との合意が必要 |
| 支払いの日を延ばす・分ける | 相談がまとまればすぐ | 相手の資金繰りにも配慮し、早めに話す |
| 借入の返済条件を変える | 金融機関との話し合いしだい | 立て直しの計画を添えて相談する |
| 融資(日本政策金融公庫) | 申込みから送金まで1か月程度[2] | 条件や混み具合でさらにかかることがある |
| 補助金 | 事業が終わり、報告と検査のあと[8] | 経費はいったん自分で立て替える |
| ファクタリング | 契約しだい | 手数料と契約の中身を確かめる[9] |
Prevention
平時にしておく備え
資金ショートを防ぐいちばんの手は、余裕のあるうちに準備を済ませておくことです。
まず、前の節で触れた「最低限残しておく額」を、実際に決めて資金繰り表に線として引いておきます。決めておくだけで、動き出す時期を迷わずに済みます。
お金に困っていない時期に借りておくのも一つの手です。余裕のある時期のほうが事業の見通しを落ち着いて説明でき、取引のある金融機関と日ごろから話しておくと、いざというときに早く動けます。
取引先の倒産への備えもあります。中小機構の「経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)」は、毎月の掛金を5,000円から20万円の間で選んで積み立て、取引先が倒産したときに、回収できなくなった売掛金などの額と、払い込んだ掛金総額の10倍(最高8,000万円)のどちらか少ない額まで、無担保・無保証人で借入れができる制度です[10]。加入の条件や借入れの条件は、制度のページで確かめてください。
FAQ
資金ショートについてよくある質問
資金ショートと黒字倒産は同じ意味ですか?
同じではありません。資金ショートは、支払う日にお金が足りない状態のことです。黒字倒産は、利益が出ているのに資金ショートが続き、事業を続けられなくなった結果を指す言葉です。資金ショートが起きても、早めに手を打てば倒産を避けられることがあります。
黒字なのに資金ショートが起きるのはなぜですか?
利益は売上が立った時点で計算しますが、お金は取引先が払った時点で入ってくるからです。売掛金の入金より先に仕入代金や外注費を払うと、その時間差のあいだお金が足りなくなります。特に売上が急に伸びた時期に起きやすくなります。
売上が伸びているときほど資金ショートに注意が必要なのはなぜですか?
仕事が増えるほど、入金より先に払う外注費や仕入代金が増えるからです。伸びが急なほど立て替える額が大きくなるので、売上の見込みが上がったときこそ資金繰り表で先の残高を確かめておきます。
来月にも資金ショートしそうなとき、最初に何をすればよいですか?
まず、いつ・いくら足りないかを日付単位で書き出します。そのうえで、未請求の売上がないか、入金を早めてもらえる取引先がないかを確かめ、支払い先と金融機関には早めに相談します。
Sources
参考にした資料
- 東京商工リサーチ「2025年(令和7年)の全国企業倒産1万300件」(2026年1月)
- 日本政策金融公庫「国民生活事業をはじめてご利用の方へ」(2026年11月1日確認)
- 中小企業基盤整備機構 J-Net21「資金繰り表を活用する」(2023年2月)
- 公正取引委員会「取適法・振興法」(2026年11月1日確認)
- 公正取引委員会「よくある質問コーナー(取適法)」(2026年11月1日確認)
- 中小企業基盤整備機構「中小企業活性化協議会による支援」(2026年11月1日確認)
- 日本政策金融公庫 国民生活事業「経営環境変化対応資金(セーフティネット貸付)」(2026年11月1日確認)
- 中小企業庁 ミラサポplus「補助金入門 STEP3:補助の審査・交付・報告」(2024年11月公開・2026年3月更新)
- 金融庁「ファクタリングの利用に関する注意喚起」(2026年11月1日確認)
- 中小企業基盤整備機構「経営セーフティ共済 制度の概要」(2026年11月1日確認)

資金ショートは、利益が出ていても、入金より先に支払いの日が来れば起きます。資金繰り表で3か月先は細かく、その先は返済や納税の月まで大まかに見ておき、残高が決めた線を割りそうな月が見えたら、その時点で取引先や金融機関に相談します。日本政策金融公庫の融資でも申込みから送金まで1か月程度かかり、補助金は後払いなので、早めに気づくことが何よりの対策になります。当社では、日本政策金融公庫の創業融資に向けて、創業計画書づくりや面談の準備をお手伝いしています。

